美しき願い / 女性のマナー学

Title : 女性

 

 

男達がどんなにあがいても、絶対に、女性という生き物には、勝てっこない、と骨の髄まで思い知らされる光景。

男性諸君、キミも、キミも、アナタも、皆1度や2度はその崇高なる光景に立ち会った経験があるはずだ。

とあるレストランで、目鯛の香草蒸しキノコソース添え¥880(税抜き、ランチメニュー、ドリンク付き)を食べ終え、珈琲を飲みながら店内の月刊誌を適当に流し読みしているボク。

外は4月の雨。店内テーブルざっと15。席埋めるはボク、隣の席に中年の女性グループ6名、のみ。マッダーム達とボクとの距離は約1メートル。皆々様の適度に弾む声は、特に集中しなければ内容聞き取れないボリュームで問題なし。シーンとしているよりは全然快適、居心地が良い。

サワサワとしはじめる。ん?。お帰りですかな。サワザワとし始める。おお、やはりお帰りか。

イス足がズ~、ティーカップ皿のスプーンがカチャッ、次々に立ち上がりながらザワザワ。ワリカンよね?、そーそー、お勘定アッチ?。

4粒の納豆が箸にすくい上げられ、ゆっくりと糸をひきながら1粒、また1粒とゴハン上にパラシュート着地してゆく様な4人の階下移動ぶり。

サワサワとした気配が小さくなってゆく。残された2人もテーブルを離れかける。イス足がカタンッ。

 

「今日は奥さんアタシが、ホラッ。だから」

「違うッ、それ違うのよ奥さん、これ私ッ」

白服マッダームが相手の手に軽く添えられていた伝票を鮮やかな指使いでゲット。見てはいけないものを見てしまった様な罪悪感から、サッと目を紙面に慌てて落とすボク。

「チョット!いけないわそんなの、アタシ困るッ!」

とベージュ服のマッダームは、伝票を我が手にアゲイン!と手を伸ばすが、白服マッダームはすかさず伝票を背後に。

死角に消えたソレを回り込みながら取り戻そうとする彼女。その両手は、オリンピックのレスリング試合開始直後、選手ら双方のソレに酷似している。スキがない。このままでは事態が硬直、他のお仲間に遅れをとってしまうという焦りからか、ベージュ服マッダームは強硬手段に。

「もう、行かないとアレなんだし、奥さんお願いなん…」

「ダメダメ、今日はダメッ」

スキありッ!!。ベージュさんたら半ばタックル気味、伝票握る白服さんの手首を掴みかけたものの、惜しいッ、空振り!。アレ、いつの間にか実況中継しちゃってボクったら。

「お願いッ、ホントッ!ホントのお願いなんだからぁ~ん!」

2人がこちらの中立地帯に急接近!。慌てて目を紙面に落とすボク。その紙面が明るくなったり暗くなったりを繰り返す。

ん?。顔を上げるボク。2人がもつれあってテーブル上の灯スタンドにぶつかり、それがブランコの様にブーランブーラン揺れている。おや、目の前から2人の姿が消失。

「待ってよぉぉぉ~、後生だからぁぁぁ~ん!」の声が遠のいてゆく。

嘆願彼女の先を伝票シークレットサービスが小走り。

男に真似出来ますかッ?。でしょ。あんまり逆らっちゃダメなんだからぁ~ん。