TItle : ティー・ブレイク
★ 沙矢。さや。このエピソードの主人公。
うららかな春の日差しが半開きの窓から。
淡いターコイズ・ブルーのカーデイガンに袖を通す沙矢は、
両耳からイヤホンを外しサラ・ブライトマンの歌声を消した。それから
コンパクトを開いて自身の顔を覗き込み、アヒルグチを作って見せた後、
呼吸を整えて風花が湖面に舞い降りるように独り言。
「いいじゃないですか、ネエ……。今日こそ
開けるにふさわしいと思いますよオ~。
そうしましょうネ、そうしましょ~」
ベッドから起き上がり、デスク上で居眠りこく電気ポットのスイッチを入れる。
それからやおら、パソコン裏に隠しておいた
オリーヴグリーンの高級包装紙に包まれる箱を両手でソッと引き出す。
「こんな高級お紅茶、卒業祝いでもなければ頂けないんですよ、
分かってますか?…ええ、ええ、よおく分かっておりますのよホホホ」
独り芝居でオチャラケながらミニ食器ケースのガラスを引き、
ウエッジウッドのティーカップとポットを取り出すと、
パソコン手前のスペースにもったいつけて並べる。
引出しを引いてキーボードとマウスを収納しながら、
「ああ!。大学院でどうか、どーか、里中様の目に
ワタクシめが止まりますように!。な~んチッて、マジ?」
マウスパッドと入れ替える様に紙製ミニアルバムを大事そうに取り出し、
シリアスな表情でドアを振り返り、次にアルバムを開いて鼻の下を伸ばす。
卒業式スナップの中の1枚…。 “沙矢のお茶会 / 紅茶とタコ焼き / 空耳のウェディングベル” の続きを読む