「いよいよ幼少期から英語授業。グローバル化時代を実感するわよね」
「何をバカな。言葉のグローバル化なら日本はとっくに取り入れてるぞ」
「え。とっくに?。ア、分かった。いわゆる日本語英語ってやつでしょ」
「英語だけじゃないぞ。有名なとこではアンニュイにアバンチュールにアバンギャルド、フィアンセ、どれもフランス語だしイデオロギーはドイツ語。エスプリだのノスタルジーだのもフランス語だっけか」
「意識したことないけど色んな国の言葉カジッてんのねえ」
「もとより日本は、言葉なんて種々雑多デタラメにグローバル化してるんだゾ。例えば、ピンからキリまでのピンとキリはポルトガル語だし、雑誌をマガジンていうだろ。だけどこれ英語じゃないんだぞ。アラビア語のマクゼンてのが語源なんだ。一体どっから引っ張ってきたんだって話だぞ」
「英語じゃないの?。マクゼンがアラビアの本だなんてねえ」
「マクゼンはアラビア語で貯蔵所って意味だ。それを書庫になぞらえて無理矢理マガジンて言葉にしちゃったんだよ日本人がさ。力技一本なんだぞ」
「そういや有名な中心街とかをメッカって言ったりするもんね。これもアラビア語なの?」
「そういうこと。ニュースでデマを流す、のデマはドイツ語のデマゴギの頭を取っただけだしな。チンプンカンプンは中国語、ていうか、中国人の名前だな。オテンバ娘のオテンバはオランダ語、じゃじや馬ってのと同じ意味だぞ」
「へえ、さすが豆知識オタク。アタシなんかそんなの何語でもどうでもいいわ。皆が使ってるんなら、もう日本語よ。そーでしょ」
「まあな。お前はこないだ官民能力差の調べ物で官能小説を買おうとしただろ。アレは全然違う小説なんだぞ。官民のことなんて書いてないんだからな、買って読んでたら大変なことになってたと思うぞ」
「またその話かァ!。どうだっていいのよそんなこと!。言葉なんて適当なとこがあるってアンタいつも言ってるでしょーが」
「アア、それそれ。話ついでに言うとだな、田舎って漢字、田が入るだろ。田舎には田んぼがあるから当然なんだけどな、町にも田を入れてるんだぞ。街には土を重ねて盛ってるぞ。コンクリートだらけなのにハテ如何にだ。どーなってる」
「アラほんとね。何か裏に深い意味でも隠されてるのかしらねえ。こないだアンタ言ってたでしょ。パステルカラーの淡い色って。
淡という字には似つかわしくない炎と言う字が入ってるって。女が淡い服を着ているのは、外見を装っているだけで、内心恋心は炎のように煮えたぎってるって。アタシ、妙に頭に残っちゃったわ。アラ、この人もそうなのかしらって、道行く人をいちいち色眼鏡で見る様になっちゃったんだから」
「ははは、そうか。でも漢字の裏の意味は大事なんだぞ、忍者には」
「忍者にはね」
「変な口調はよせ。…いいか、手で押すというのも変なんだ。手に甲と書く。普通、手の甲で物を押すか?。普通は手の平で押すと思うがどうでしょう」
「ウラメシヤ~の幽霊の手つきなら、手の甲で無理なく押すんじゃない?」
「オマエは漢字が幽霊のことを考慮して作られていると言うのか」
「何でもあり得るんじゃない?、こうなったら」
「あっそう。最後にオマエ向きの漢字の裏を教えてやろう。秘密という漢字をよく見ろ。秘という字には必ずというのが入ってるだろう。密という字にも必ずという字が入ってるだろう。ここまで執拗に念押しをしてるんだ、必ず必ず秘密だと」
「そして、念押ししてるのは幽霊ね。手の甲で押してるんだから…。ねえねえ、幽霊の秘密って意味深よね!。一体どんな秘密なのかしら」
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