幸福認証 /人に触れ変わる人

 

その路をどこまでも 真っすぐに歩いてゆけば 答が分かる

幸福認証にそう言われ 他に代案もなかったから 歩き始めた

誰の姿もない 行き交わないのは好都合 挨拶の緊張がない

左右に 高い高い灰色の壁 見上げれば空も曇天

壁と空の境界が 分からない でも大丈夫

空を見上げるのは 1日に 1度きりだから

 

この路は裏路地のようで 袋小路のようで 引き返したくなる

幸福認証に言われたので 引き返さないだけ

歩き始めて小一時間 自分の着衣の色柄が 薄くなって 色抜け

そんな気がしたけど 大丈夫 そんなはずは ないから

 

進む 進む 進む 歩く 歩く 歩く 音楽聴きながらが 良かった

バッグがないから 仕方ないけど

おや どうしてバッグがないのだろう いつもの肩掛けは

 

歩き疲れ始めた頃 良かった ここで行き止まり

うすうす袋小路の気がしていたよ とにかく飽きてしまった

答がないと確認出来たから 無駄とは言えず とりあえず納得

そうと分かれば 引き返そう 長居は無用 さっさとね

戻る 戻る 戻る 帰る 帰る 帰る

いくら速度を速めても ペースダウン ペースダウン 疲れてるから?

もどかしいな 思うようにならないのは いつものことだけど

 

始発点が見えてきた ああ 幸福認証が現れた 近づいて来る 来る 来る

ごくろうさま

ご苦労様 どうだった? 随分といいようだね すっきりしないでしょう?

答えようと 返事をしようと思ったけど 急にシラけて言うのをやめた

なかなか いいぞ 答えるのを踏みとどまるだなんて 確かに随分といい

 

今度はこちらの番だ 思うところへ行ける 選んで行ける

幸福認証は別れ際

認証されました と言った

何が? 何を?

まさか幸福? 行きどまっただけなのに? もしやして儀式だった?

おまじない? さっきの 進む がダウンロード? だったらいいな

 

 

夕暮れ 誰ひとり居ない 車も自転車もない おや いま気がついた

音がしないよ 音がない 色もないよ どうした?

すごくついてる 人が来た 人が来た どうしてなのか聞いてみよ

あの、

「行きどまった へ行ったでしょ」

え 行きました 今も戻ってきたばかり どうして分かりました?

「だって うつむきっぱなしで 歩いてるじゃないか アンタ」

言っちゃったよオイ 何だ失礼なやつ 話がまるで見えないよ

誰かまた来る 男か女か不思議と分からない だけど聞かなくちゃ

あのう、

「行き止まりは アナタでしょ」

あ 袋小路でした 確かに どうして分かりました?

「だって誰とも目を合わせないで 進んでるじゃないの アナタ」

 

いなくなっちゃったよエエエ? 何てやつだ おかしくないか

目を合わせないのはエチケット 暗黙の了解なんだ  知らないのか

 

向こうからまた来る 今度は顔上げて 目を見て 聞いてやる

3度目の正直だ 同じ手に乗って たまるか

 

あの、

「幸福認証されたんでしょう(笑)。ボクもこないだ、されたんですよ」

「え。どういうことですか」

「え?。…だってキミ、目を見て、顔上げて、ボクと話してるじゃないですか」

 

 

◆写真タイトル / 歌を聴いている

 

 

 

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