花見、花見ず、鼻水

Title : 満開大回転

 

 

「暖冬のせいで桜が開花しているとTVで言ってたぜ。チャリで流して花見しようじゃないの」と友人。

「んなわけないだろう。今日、近所で梅が満開花盛りなのを見た。この地区はまだまだだ」とボク。

聞き分けの無い友人と毎年桜を鑑賞するポイントに自転車で向かう。途中、コンビニで彼は焼き芋を1本購入。桜を愛でながら食べる計画だと言う。ボクは様々な事態に対応可能なみたらし団子、しかも1本増量で4本となったものを購入。飲み物はポイント傍の自販機で。

湾岸部にある公園。行く途中、花見目当てであろうと思われる人々、自転車、マイカー族を一切見かけることもなくポイント到着。

沿岸部、海まで約5㎞、背丈の高い建物もなく、冷たさ身に染みる海風がダイレクトなポイントベンチに腰掛け眼前の桜集団に目を凝らす。

つぼみにやっとなっているものを寡黙に探す作業が静寂の公園一角で辛抱強く続く。

「あった!。つぼみがあった!あそこだ見ろ、ここの正面の木から左3本目の足元から2メートール上の…」

やはりな…。これは花見ではなくバードウォッチングならぬツボミウォッチングに他ならない。報道を何としてでも真実へと転化させたい彼の涙ぐましい努力には脱帽だ。

「そうだ…。芋を…」

焼き芋もみたらしも唇に触れると冷たい。周囲には誰もおらず、犬猫の姿もなし。こんな肌寒さ、犬なら何で此処へ連れて来たのだと飼い主に牙も剥けようが、ボクは人間。それもままならず。

「鼻水が垂れてるぞ」「そう?」拭きもしない彼の悲哀に満ちた横顔が哀れみを誘う。

 

日本は情報化社会ではない。少なくとも詳細情報ではなく誤解を生みやすい見出し情報が幅を利かせる。

どこかで桜が咲けば、あたかもそこここで咲いている印象を与える報道。口数少なく、本人が足を運んでのリポートでもない。他人の指示で言うだけなので情報内容に理解も興味もなし。

同じ東京でも地区によって桜の開花はバラバラ。そんなの関係ない。何故か全体が皆そうだ的な報道がスタイル。特徴。TV報道を真に受けて花見に出かけた人も結構いたと後日聞く。流石に沿岸部、湾岸部には居ないが。

嘘だと断言出来ない範囲であれば、誤解を招く見出し報道もアリ。それで少しでも人が動き需要へとたどり着く可能性があるならソッチの手法が良い良いというわけか。まあね。そうかもね。花見待ちわびウズウズしている視聴者多数。アオレ、アオレで盛り上げましょう。