物語

Title : 「出かけない?」「ええッ!」

 

 

その女の子は15才で郷里を捨て、実家から逃げて

大都会に来たんだって。

誰に誘われてもねー、緑豊かな公園には

絶対近づかなかったそだよ。

緑は田舎を思い出すからキライ。

大嫌い。

 

70年たった。

 

女の子は病院のベッドから、

一人でも、人の手を借りても

もう出られなくなったんだって。

窓際から中庭の大きな樹が見える。

女の子は毎日、それを見おろしてるって、

看護婦さんが言ってた。

 

あそこへいきたいの

木の根元で木漏れ日を見あげていたい

 

なにか、想いだせそうで、って。