マーベル社に捧げる声高の絶賛力

Title : New age boy

 

 

時代は変わる、と人は言う。以前にも増してそれは加速化していると、人は言う。地球規模で疑いようのない事実。口にしようが無頓着でいようが、それは誰にも止められない。

大抵の日本人も口にする。だがそれは、もっぱら生活様式を変える制度やアイテムと称する物の変化に関するものであったりすることが多い。

つまりは、内面的な概念や指向性、存在論、人生観、などはほとんどスルーされる。というよりは、そんなことには気づきもしないか、あるいは完全に関心がない。

スーパーヒーローが活躍するマーベル映画でも2016年に発表されたR指定作品『デッド・プール』は、上記の点でも実に興味深い。

例えば、現在全米で大ヒットしているTVドラマ『グッド・ドクター』の主人公は自閉症。美形や愛らしい顔の主人公であるなら、その本人が双極性障害であろうとアスペルガーであろうと視聴率に影響は与えない事だろう。

デッド・プールの主人公は顔が焼けただれており、それを画面で全面的に映し出す。つまりは人が顔をそむけたくなる要素を主役に背負わせ興行成績に挑戦したのである。勇気ある実験だとも言えるし、移り行く時代の中に在って、ヒーロー観の変化や新しき定義づけを先導しようと試みたのかもしれない。

いずれにせよ、徹底的な興行収益見込みを企画会議で検証し、もうけが見込めなければ製作費を出さないショービジネスのアメリカにおいて、このヒーローが世に送り出された事実には驚愕せざるを得ない。

収益を越えたチャレンジ。ゾンビ映画に慣れた観客の存在の後押しなくして制作は有り得なかっただろうが、このような時代のオピニオン・リーダーといった気概は日本では見当たらず、古き時代の常識と感覚をあたかも新しき物であるかのように銘打って繰り返しているだけに過ぎない現状は失望感を濃くせざるを得ない。

クリエイターが観客に迎合するだけの存在になってしまうなら、それはもはや総合芸術ではないだろう。

心的外傷、肉体的欠陥、それら致命的敗北要素を乗り越え、人々に勇気を与え、視覚的な慣れによって日常現実の悲劇を抑え込もうと言う取り組み。

それこそが真の社会的貢献であり、まさしくクリーン企業イメージの理想だ。

当社はオリンピックを応援しています、などといったユルユルで安直な物ではなく、資本金の数字の桁数ではない大企業たるにふさわしいスピリッツを求めているのだ。

新しき時代の、新しき人々は。