Title : バンザイ化かし合い
Title : シブい兄弟
「兄貴、オレ聞きたいことがあんだよな。いいか」
「いいぜ」
「コトワザで “ 飛ぶ鳥落とす勢い ” ってあるよな」
「あるぜ」
「オレ、今さ大学の文化祭でやる『ガンダムってチョ』の脚本
書いてんだけど、何かこのコトワザ、迫力ないんジャネ?。
今、迫力ある表現探しまくってんだけどさー。
鳥を落とすくらいじゃ勢いって感じナクネ?」
「そうだぜ。木から猿も落とす勢い、がいいぜ」
「マジか。メモっとこう」
「他にもいろいろあるぜ」
「教えてくれよ。オレ、ボキャ( ブラリー ) ないんだよな」
「いいぜ。“ ひょうたんから駒 ” って聞いたことあんだろ。
駒って実は馬のことで、
ひょうたんからでっかい馬が出てくるわけ有り得ねーだろ。
そういう例えなんだぜ。でも考えても見ろよ。
有り得ねーって例えなら、何でわざわざ馬を駒って言うんだよ。
難解なのがコトワザじゃないんだぜ。
言いやすいリズムを重視したってんなら、
ひょうたんから熊、でいいはずだぜ」
「ひょうたんからモナでもな」
「モナ?。それって何だ」
「オレの今カノの名前だよ」
「何人 ( なにじん ) なんだよ。ってか、
なんにん ( 何人 ) 、となにじん ( 何人 ) 、
何でおんなじ漢字なんだよ。こっちの方がコトワザより有り得ねー。
てか、猿も木から落ちるっていうのも無理があるんだぜ。
そりゃ確かに “ 弘法も筆の誤り ” と同じ使いまわし
なのかもしれないぜ。でもな、コアラは木から落ちないぜ。
爪が木に食い込んでるからな。
ワザと落ちやすい動物をコトワザに持ってくるのは卑怯だぜ。
“ コアラが木から落ちたとしたら ” の方が戦慄走るぜ。
爪が木に食い込んでいるのに落ちてしまうんだからな」
「凄いな、兄貴はヤッパ」
「だぜ。“ 虎穴に入らずんば虎児を得ず ” もおかしいぜ。
虎が穴に入るってアニマル・ドキュ(メント番組)で
一度も見たことないぜ。仮に虎が穴に住んでたとしても、
あんまり穴には馴染んでないってことだぜ。
TVでそういうシーン見ないんだから。
絶対いつも穴にいるのは兎だぜ。兎なら穴に入る価値あるぜ。
食用になるんだからな。虎の子を
危険を冒して入る奴は滅多いねーぜ。中国でもな。
コトワザってマジョリティーとか無視でいいのか」
「兎の子だと小さいから、捕まえても
チョットしか食うとこないから意味がないぜ」
「それにわざわざ穴に入らなくても
待ってりゃ向こうから出てくるぜ」
「そうそう、“ 立つ鳥跡を濁さず ” もおかシクネ?。
白鳥が水田から飛び立つなら、絶対に水は濁るはずだぜ。
無茶言うなって意味のコトワザなのか」
「違うぜ。このコトワザの鳥はカモだぜ。
足が短いから水田の底についてねーぜ。
難なく泥を濁らせずに飛び立てるぜ」
「じゃあ、足が短いと行儀いい
って意味のコトワザだったのか」
「そうだぜ」