敏感な耳 / 擬音 / 和菓子

Title : カレーを食べに日本へいらっしゃい

 

 

「雨がシトシト振るって、その感覚、日本人なら分かるジャン。ザンザ振りって言っても通じるジャン。雷がゴロゴロって分かんない人に合ったことないジャン。お前ある?」

「ない」

「日本なら犬はワンワン、アメリカならバウワウ、これって有名ジャン」

「オレもソレ知ってる。ニワトリはコッカ・ドゥードゥルドゥーだろ?」

「そうなんだよな。動物の場合は鳴き声ハッキシ分ンだよ、日本人ならずとも。なのに雨みたいな音とかは降り方を指す擬音がないんだよな外国には」

「外国ってどこ?」

「外の国だな」

日本人特有の共有感覚というものがある。そうなの?。どゆこと?。

「のれんに “  トンカツ ” と “ とんかつ ”って、それぞれあるジャン。トンカツだと隣にシャキシャキのキャベツがあって、カツのコロモもサクサクって感じするジャン」

「そなの?」

「そ。平仮名で、とんかつ、だと隣に温ったかい味噌汁の湯気出てて、和風な感じ。衣チョイしっとりしてる様な感じジャン」

「マジか」

「お前どうなの」

「オレは、ほら、豚フライって呼んでるから」

「マジか」

「じゃ聞くけど、オハギとボタモチだと、どっちが胃もたれ感ある?」

「オレ甘いの苦手だから」

「想像でいいよ。どっちが太る気がする」

「どっちも太らないんだよな実は。和菓子は美容食って聞いたぜ」

「何なんだお前って男は。え?」

「カレーって言うのと、カリーって言うのでは、どっちが辛い感じだ?」

「どっちも」

「え?」

「どっちも辛い」

「……………。じゃあさ、ピザって言うのとピッツァって言うのだと、どっちがトロけるチーズって感じ?。ピザだとチョイ固めで、ピッツァだとチーズ伸びる感じしない?」

「チーズが伸びるのか。どこのピザだよソレ」

「お前、伸びるチーズのピザ食ったことないの?。ねえ」

「ない」

「お前、メシ食いに行こうって言う?。ランチしようって言う?。どっちが旨そうな感じ?。メシっていうとガッツリ食う感じしない?。ランチだと空腹とか満腹とか関係なく、食事タイムだから摂取するってニュアンスない?」

「あーそれそれ。オレ最近すっごく忙しくてサー、1人で食べに行ってんだよー」

「風ならピューピュー、ビュービュー、ヒューヒュー。日本人は聞き分けることが出来るって話なんだよなコレが」

「口笛もヒューヒューなんだぜ」

「まあな」

「さっき言いそびれたけどなー、腹痛(はらいた)でもお腹ゴロゴロって言うんだぜ」

「そうそう、それそれ!。日本人は擬音の天才だって話なんだよコレがー」

「ホントにゴロゴロって腹鳴ってないと嘘つきって言われるぜ」

「嘘つきだと?。何だそれ。言われたことあんの?」

「先生にな」

「マジか」