Title : 遊びに来てくんなまし
御存じの通り、日本人は端っこが好き。電車シートもお店のシートも端っこの角から埋まってく。ボクは釣りをするけど、釣り座もやっぱり端っこ角が大人気。そこが良く釣れるってわけでもないのに…。賃貸住宅だって角部屋に限る!。これってヤッパリ日本人のDNA、遺伝子に組み込まれてるに違いない。
海外ドラマや映画の中、カフェだとかバーで主人公が誰かと話してるシーン、結構真ん中辺りの席に座ってたりすることが少なくない。お客も居なくて閑古鳥だったりしてるからガーラガラ、端っこだって空いてるのにねえ。
しかも人に聞かれちゃマズイ話の内容だったりしてるのに、真ん中陣取ってヒソヒソ。そんな話、日本人なら絶対端っこでしちゃうんだけどねえ…。
ボクは生涯、自分の家は持てないと思うけど、夢想してみる持ち家の部屋、その全貌はハッキリ頭に描けているんだねえ、これが!。
14畳くらいの部屋が在るとする。20畳くらいあると最高だけど、余りにスケール大き過ぎるとついてけなくなっちゃうんで、とりあえず、これくらいで。床はフローリング、幅150センチの回廊にする。つまりは部屋をグルリと回れちゃうわけだ。
え?、じゃあ真ん中は?。真ん中には何が在る?。その空間は床から天井までがガラス窓。四方グルリとガラス窓。勿論ドア有り。極めて目立たないデザインの鍵無しがいい。
で、この四角いガラスケースの中には何が在る?。それは、夢視る時々で中身が変わる。週ごとに変えてもいいし、気分に合わせて、その都度ディスプレイし直してもいい。例えば、色とりどりのイルミネーション絡ませた、手頃な大きさのクリスマスツリーを置く。周囲には居心地のいいソファや椅子を配置してもいいし、入れたままのベッドが有るなら、そのままでも構わない。
ガラスの部屋の間接灯消して回廊のソレを灯してもいい。光量を調節して微妙な影を壁に這わせるのも面白い。ケースの中で過ごしてもいいし、薄暗い回廊の何処に寝そべっても構わない。
ガラスケースの中を、そっくりそのまま書斎にしたり勉強部屋にしたって構わない。要するにこのプロジェクトのキモは2つ。① 部屋の中に歴然と部屋があるということ。
インスタントラーメンの袋を開けるとスープの袋が出てくるが、それを驚く人はいない。何故って、それはそういうものだと知っているから。皆が知ればソレは既に世間の常識。そんなに驚く程の部屋でもない。だから、最低6畳の広ささえあれば真ん中のガラスの部屋は、それなりの大きさに収まるはず。②ガラスケースの周りは必ず回廊通路。ケースを360度見回せること。
ガラス(アクリル可)の部屋が核シェルター、避難部屋、子宮。或いはガラス部屋が心臓でグルリ回廊が動脈、静脈。
自身の心を守るための一時避難所。或いは癒しの場。気持ちをリフレッシュさせたり、意志を立て直したりする作業場と見なしてもいい。
そしてガラスケースを客観視出来る回廊。ケースを、自分自身がディスプレイされているショーウィンドーと見なしてもいいし、部屋を単なる光源と見なし、廊下に転がって単に明り取りだけの目的にしてもいい。
とにかくキモは、ガラスケース部屋のアルジである自分を、冷静かつ客観的に観察出来るスペースが必要であるという事。だからイージーリスニングはその時々でオンかオフ。
回廊は狭いし角も四隅ある。日常生活の便宜性だけが部屋、という箱の目的ではない。どんなにゴージャスな部屋に住んでいても、どんなにソコが機能的でも、それらはこの部屋には決してかなわない。
何故って、高級家具も装飾品も、自慢のコレクションや家電セットも、主人の心が途方に暮れ絶望しているのであれば、効果的なエモーショナル・レスキュー(情緒レスキュー、魂の救済)を発揮できないからだ。多少慰めることは出来るだろう。でもそれは気休め程度の表面磨き。心身共に曇りなき主人であってこその彼らである。
部屋のアルジが自身の抱える深刻な問題に対処するためには、それ専用のマイ・エモーショナル・レスキュー・ルームが是非とも必要だ。問題に顔をそむけ、無視して逃げ出せば、心はもっと重くなる。苦しくなる。耐えられなくなる。その状態が慢性化、日常化すれば、誰の心も必ず折れる。
こころは繊細極まりなくて、兆という規模の心管(血管)がはりめぐらされている。だからどんな名医もひとたび折れてしまった心を完全修復することなど出来はしない。
もし修復可能な医者が世界に存在するとすれば、それは自分自身。過去に、愛する誰かが修復してくれた、という経験を持っているのなら、そのヒトはもはや別人ではなく、もう1人のアナタだといっていい。
そんな二重部屋なんて持つ余裕ないよー、ワンルーム暮らしだよー、という人は、部屋にカヤを吊るといい。毎日部屋の中でキャンプをすれば、それはそれで即席のMERR(マイ・エモーショナル・レスキュー・ルーム)になるであろう。
日常生活の営みの為だけに絞ってお金をつぎ込むのではなく、部屋の中に自分の心を作ってみてはどうだろう。暗い回廊から間接照明で浮かび上がる、心という名のケースを眺めていれば、いつしかコレは自分との対話なのだと気づく事だろう。
観葉植物を入れて雨を降らせるシステムにしてもいい。いつでも雨の滴を眺めながら思いを練り上げることだって出来る。
MERRは引きこもり部屋ではない。引き出す部屋だ。