肩書社会の崩壊序曲が聞こえる!

 

 

 

「日本人は自らのアイデンティティーを失いつつあり、今や成すすべなく立ち尽くしている状況下にあるな」とマナモード研究所所長の猫春。昼飯時についたのだろう、口ひげにデンブのピンクが異彩を放つ。

しかし、30分が経過した今なお、それが落下しないことに首をかしげるマネーモード発案所次長の眼鏡冬、目を細め猫春を見やりながら、薄ら笑いでニヤリながら、

「ああ。やはり気づきましたか。先週その話が出るんじゃないかと思ってましたが今週ですか。思った程のウツワじゃないんだなアンタ」

「かつて新宿はピンキリ文化人が集まる街って共通認識があった、我々には。マスコミが作り上げたイメージだったとしても、あながち嘘ではなかったのだが」

「そうだ。原宿はオシャレな若者が集まるファッション文化のアンテナ・タウンという位置づけ、渋谷は女子高生のニュージャパ文化拠点、銀座はオハイソ族の気高き尾根。そうだよな?。今は全然違う。資本力ある店だけが主役だ」

「イエス。“ すべからくに平等を族 ” の陰謀により全ての街は画一化され、個性をことごとくに捨て去った。今ではどこもかしこも平等。素晴らしい世界じゃないか」

「学生もツメエリ、セーラー服をかなぐり捨て、大人の中に埋没した。ソナーにも発見されにくい潜水艦てことだ。つまりは大人と学生の境界線が見た目で一目瞭然に認識出来なくなった期を逃すことなく、日本社会は各世代の個性イメージまでも取っ払う事に成功した。キミが言いたいことはコレだろ?」

「マリア。アラサーだのアラフォーだの今頃取って付けて世代間個性作ろうとしたって最早手遅れ。そんな明確な線引きなどは、とっくに日本人は捨て去っているというのにな。日本人のアイデンティティーは視覚的に突出した肩書なんだ。それを失ったら道しるべを失ってしまうも同然なのだ。一体どうする」

「名刺交換、学歴掲載、制服。視覚的肩書、残ったものは一体いつまで持ち堪えていられるかが目下の焦点と言ってよい、そう言いたかったんだろうな?」

「イヤ。アンタの口のデンブ、それがアンタの肩書にお似合いだとワタシは言いたかっただけだ。昼飯、鳥そぼろ弁当だっただろう」

「そうだ。個性的な弁当だ」

 

◆写真タイトル / 違い探しの空