最後の選択 / 行き当たりばったりの果て / 選べない人

Title : 思うツボット(操縦士はタカビットガニ)

 

 

Q坊は向かい筋の子達と同じ様に、立派な制服に帽子を被り、一番見事だと呼び声高い幼稚園に自分も行けるものだとばかり思っていたのだが、違った。Q坊は母親に泣いて抗議したが、決してそこには行かせてもらえなかった。どうしてどうして!。Q坊は父と母を恨んだ。

Q少年は中学2年時、一生に一度の恋人だと転げ回って絶叫したいほど好きになった初恋女子にフラれた。フラれたというより、気づいた時には既に彼女には恋人がいた。評判のイケメンで、先輩差し置いてサッカー部キャプテン、学業成績トップの生徒会長だった。

 

Title : 壇上で演説中の思うツボット

 

 

Q少年は自室に閉じ篭り、鏡に写る自分の顔をみて嘆く嘆く嘆く。自分がイケメンでないのは親のせいだ。並外れた運動神経を持ち合わせていないのは全部親のせいで自分の責任なんかではない。少年は親を恨んだ。

Q青年は大学4年の青田買い時期、親のコネで簡単に就職が決まってゆく知り合い達から激励の言葉を受ける。Q青年は小さな商店主の父親を恨み、社会の裏側を恨んだ。自分の責任とは預かり知らない外の世界で、何事も決まってゆくことに強い憤りを覚えた。

Q氏は、3年のうちに3人の会社同僚にプロポーズしたが、全て断られた。3高ではなかったからだ。3高連中はまるで殿様扱いだった。Q氏は恨み疲れていた。妬み疲れていた。

Qは結婚し子供も1人出来た。夫である彼は相変わらず妻を他の妻達と事あるごとに比べ続け、愚痴をいい、時には罵り、子供の学業ふがいなさには怒りのあまり何度も手を上げた。子供の不出来は妻の血筋だ、そう言ってはばからなかった。

 

Qは棺桶に入り、そして出た。一面灰色の何もない世界。振り返るといつのまにか棺桶も無くなっている。何と自分の身体が宙に浮いている。宙に立っている。ふと気づくと正面から誰かがやって来た。目の前まで来たというのに顔が見えないその男。

「真っ先に聞きたいと思っていました!。此処は地獄でしょうか、天国でしょうか!」と切羽詰まった声のQ。

「ジゴク?。テンゴク?。それは何だ。どういう意味だ」

「此処のことです、ここのこと!。此処は一体何処になるんでしょうか、教えてください、早く知りたい何処でしょう!」

「さあ…。あそこに降りる階段があるだろう。千ほどある階段で自分の好きなところへ行けるのだ。ジゴクかテンゴクかは知らないが」

「ひとつしか見えません!。他の、ええと、999の階段は何処にあるのでしょう!。私には見えません!」

「へえ?。そうかい?。今まで、来る奴、来る奴、皆に見えてるはずなんだけどなあ…」

 

 

 

 

 

男と女の溝 / 失われた意思疎通 / 絶望のチームワーク

Title : 泣きボクロのあるオッサン

 

 

「古き良き時代、昭和アゲインてダメか。

“ お茶の間 ” アゲインてダメなのか」

 

と、ゆらゆら錯覚でボールペンがフニャフニャに見える小学校時代の

慣れワザを何気に行いながら不機嫌そうに入社3年目のカトー。

 

相対するは、PC画面から目を離さないばかりか、

マウスパッドさえも瞬間接着剤で机に張り付け、

ソレを未だ上司に気づかれていない

妙に幸運な中途入社1年目のスドー。息巻いて言うのは、

 

「 “ おチャットの間 ” で何が悪いんだ。

それに昭和を古き良き時代って言うけどなー、それを言うなら、

昭和の古き良き部分だけアゲイン、て言わなきゃ片手落ちだぞ。

令和だってだなー、新しき良い部分が目いっぱい有るんだから。

昭和だけが素晴らしくて令和の方が落ちる、

なんてのは歪んだ懐古趣味なんだよ」

 

「またヤッテるわ、あの2人。くッだらないことで熱くなんのよね。

こないだ横通る時に聞こえたんだけど、カツ丼が縁起担ぎなら

負けた時に食べるマケ丼は何なのかって、

凄いリベートだったんだからー」

 

と、机に立てかけた鏡に写るサイドヘアの枝毛を

ミニ携帯バサミでカットしている入社3年目のイトー。

 

「ホント、生産性ない事この上無しよね。アタシ達みたいに

暮らしの実用性向上に向けて日々家庭の利便性図る

なんてこと考えられないのか」

 

とキーボードの溝に転がり落ちた

昼食のパンに散りばめられていたナッツのかけらを

綿棒ですくい上げ

何とか食べられないかと試みている

入社3年で寿退社後、離婚して出戻ったばかりのサトー。

ヘラヘラしながら言うには、

 

「利便性っていえばサー、昨日会社帰りに

シンパシーのお店で遂に見つけちゃったァー、二重タオルで透けないのに

通気性バツグンのバスタオル~!」

 

そこへ、嫌われるのも承知でザルソバ出前のウツワを足元に下ろしながら

拍子に落ちたツマヨウジを片足で机奥へ蹴り隠し

女子会話に割って入る

勤続何年目か未だ不明の課長ムトー。重厚な口調で、

 

「通気性バツグンってTバックのことか。

フンドシだってTバックなんだって、オレ言わなかったか?。ハン?。

通気性で言えば木綿のフン…。

 

OL2人は侮蔑退席。

 

入れ替わる様にムトーの前、音によるパニック障害に悩まされ続け

僅かな打開策として片耳だけにイヤーウイスパー ( 耳栓メーカー名 ) を

ネジ込んで危機に備えている入社4年目のクドー。ぶっきらぼうに、

 

「課長。こないだ連れていって頂いた店、引き分け丼ていうのが

メニューにあるって本当ですかね」

 

「引き分け丼?。誰が言った」

 

「スドーが聞いてみてくれと」

 

「引いて分けてあるということならウ丼だろう」

 

「ウドン?。…それは、あの麺類のウドンですか」

 

「違うのか。他に代案あるのか。え?」

 

「いえ。了解です」

 

ワーワーやっているカトーとスドーの席に課長の見解を伝えにゆくクドー。

途端にもの静かになる社内。

タイミングよく就業開始ベルが鳴った。

各々が着席。

 

 

 

 

 

言葉 / 私を飾る月桂樹

 

 

言葉を大切に。

あらゆる場で耳にする言葉です。簡単に分かるようでいて、実はむずかしい意味合いだと思います。言葉遣いを指す。敬語の正しい使い方を指す。自分の言葉で表現し他人の表現を真似ない。言葉を侮辱するような言い回しに置き換えない。様々な意味合いが込められているのかなと感じます。

 

言葉。言う葉っぱ。

コミュニケーションのために人が発する音を葉に例えたのでしょう。見事な感性だと思います。

話や手紙はイコール言葉。言葉の集合体。

言葉を話す人が樹木。その樹木に生い茂るのが “ 葉の集合体 ”。

葉に注ぐ陽光が世相。時代のプリズム。木漏れ日に人は癒され、鳥たちは憩う。癒される言葉。憩う言葉。癒される対話。憩うお喋り。

葉を濡らす霧。葉を叩く雨。葉を凍らせる雪。それが世相。それが世論。時代の風と呼ばれ、人は敏感に反応する。対処する。対処しようとする言葉。善処しようとする言葉。備えるための議論。 “言葉 / 私を飾る月桂樹” の続きを読む

エンピツが一本 / 坂本九 / 新聞配達少年の頃

Title : 中学生はみんなドラネコ

 

 

ボクの机の横の彼は、いつも鉛筆が1本だけだった。筆箱もなく、授業が始まると、芯先が折れないようにハンカチでくるみ輪ゴムで留めたそれを、ボロボロな手提げ紙袋から大切そうに取り出し使っていた。

その鉛筆はいつも、常に見事な出来栄えで削り上げられていて、鋭い芯先で刺されたら間違いなく出血するであろうと思われた。

「すごいね。カッターで削ったの?」

「お母ちゃんが削ってくれる」

彼はとても無口だった。幸いボクの教室には弱い者イジメをする者などいなかったので、友達のいない彼が標的にされることもなかった。

彼は昼食時になると決まって姿を消した。体育館裏の工具室の裏で弁当をかきこんでいる姿を1度見たことがあった。尾行して知ったのだ。

彼とボクは友達になってはいけなかった。

そんなはずもないのだろう。だが、授業中常にボクの右横にある彼の左肩は、ボクにそう切々と訴えている気がしてならなかった。思い込みだろうと思う。しかし翌朝目覚めた瞬間、不思議なことにそれは思い込みではないと確信するのである。

彼は午後の授業になると度々激しく体調を崩した。吐き気を必死でこらえ、我慢出来なければトイレから持ってきたトイレットペーパーを丸めたクシャクシャ玉に吐いた。先生に言って保健室に行こうよ、とボクは何度も彼のこめかみにささやくが、そのつど彼は必至で首を横に振った。

ボクはいつもおろおろする。

彼にとってボクは裏切らないクラスメイトだった。先生は彼の額の脂汗を知ることなく彼は卒業出来たからだ。

小学校を卒業しもう彼と会うことはなかった。彼と机を並べた1年をボクは忘れた。ボクは剣道部に入部し日々頭に竹刀を食らった。

 

中学3年の夏休み、ボクは早朝マラソンを始めるようになった。何日か経ったある朝、ボクは新聞配達をする彼と曲り角で出くわす。

彼の顔から嬉しさがこみ上げ、満面の笑顔と共に彼はボクを牛乳屋に誘った。それは言ったこともない近所の入り組んだ路地裏にあって、牛乳瓶を店先で飲ませるという。

「いくら?」「いいいい、ボクが誘ったからボクが出す」

冷たい牛乳を彼は美味しそうに一口飲み、

「いつも配達のあとに1本飲むんだ」

「新聞配達なんて偉いね。中学3年で雇ってもらえるんだ」

「うん…。知り合いのおじさんだから…」

彼は一瞬ためらう素振りを見せ、唐突に言う。

母と二人きりの生活、彼の母親は腐りかけた食物を何処かの店で貰い、それを煮てひとり息子の弁当箱に詰めていた。だから彼はしょっちゅう具合が悪くなったのだ。今は自分が働いてるからもう大丈夫、と彼は遠い目をする。

ショックで何も答えられないでいるボクに、彼は続けた。

「あの鉛筆が折れた時、くれたよね?、覚えてる?」

「え。……ああ……」

「あれ、使わないでしまってあるよ。机の中に」

ボクは彼と別れた。二度と出会うことはなかった。あまりの気恥ずかしさに偶然会うことすら怖れたのかもしれない。子供には、そんな訳の分からぬところがある。

そんな思い出があるせいか、この聴いたことのない楽曲がTVから流れてきた時、夕食を頬ばっていたボクは口にゴハンを満杯に詰め込んだまま、不覚にも突っ伏して号泣した。その姿を家族が驚愕の眼差しと笑い声で絶賛したことを今でも覚えている。

 

 

♪  鉛筆が1本〈浜口庫之助作詞作曲 / 坂本九 歌〉

 

鉛筆が1本 鉛筆が1本 ボクのポケットに

鉛筆が1本 鉛筆が1本 僕の心に

青い空を書くときも まっかな夕焼け 書くときも

黒い頭の とんがった鉛筆が 1本だけ

 

話しが違う / 似て非なるもの/ モテる人とモテ遊ばれる人

Title : 実態解明ならスキャンしてみなはれ

 

 

「おねーちゃん、明日行くんだから20000円貸してって~、足りないって言ってんでしょうがぁぁぁ~」

「だから美容整形なんて意味ないって。ヤメなヤメな。第一だよ、一体何のメリットがあるって?。ハ?。言ってみ」

「モテるじゃん。言うまでもなくモテんだよ。したらばアタシの青春はキラメクんだ。昨日までの、恋愛どこまでも遠浅の海って男女関係に終止符打つんだよ」

「パカパカ。アンタ個人が持ってる女性的魅力でモテるのと、ミーハー的モテ遊ばれとは全然違うんだって、分かんないかなコノヒト」

「そんな違い、考え過ぎだね。おねーちゃんだって人気者になりたいでしょうがね」

「あのねぇぇぇ…。いいねボタンたくさん押されて自分は人気者だって喜ぶのはイーけどもサー、上から目線で呆れられアザ笑われつつバカっぽい内容でボタン押されるのと、感心されたり共感されたりしてボタン押されるのとは違うんだって。ゴッチャ感覚するコンニチの傾向やめてくんないかな。まずオマエだよオマエ」

「細かいんだよおねえちゃんは。痩せない反動で細かくなるのは分からなくもないが」

「酸性雨のニュースやんないからって酸性雨じゃなくなったわけじゃないし、東京オリンピックで都民が自宅に閉じ篭って選手応援したからってメダルに手が届くわけでもないしねー」

「グダグダ言っても20000円貸さないわけでもないしねー。おねえちゃんが心ひかれてるアンミツ屋の中西ハルキはアタシのクラスの子の兄だってよ」

「え?。あの人、中西ハルキって名前なのッ」

「話が違うんだよって言うかね。え?。どうなんだよ」

2019 / ふれ~ゆ裏 / タコ爆釣

Title : 10月は英語でオクトーパー?

 

 

どんなに正当な価格で販売しようともタタキ売りになってしまうカツオ。ナマカツオは違うんじゃないかって、下らないことに真顔で反応なんかするから熱湯オナベに人差し指付けちゃって第1度のヤケド負っちゃったじゃないの。

やあね。

鶴見のフレーユ裏でタコが爆釣ですってね。

東京の河口域、生活排水の垂れ流しと酷暑で大腸菌の猛威。回遊してくる魚以外、居ついていた魚はみんな逃げ出しちゃったのね。

釣人達がアジ狙いでコマセまき散らすから小ガニ異常繁殖、それをエサにするタコ異常繁殖。ライバルのカニ喰い黒鯛なんてゼロ。

ヨーロッパでタコが悪魔と呼ばれたのは、溺死体の中からタコが一杯出てくるからっしょ。溺死体の中って有毒ガス満杯だけどタコは気にせずモグモグモグ。

釣り座で急にタコが釣れる様になったら、それって警告点灯なのよ。釣り人なんて、釣れてりゃいいの結果オーライ。

やあね。

異常気温で海水浴客らに異変 / セミクジラの目撃

title : 海水面を浮遊中の揚げ玉

 

 

昨日の原因不明干潮現象の要因が判明したとして本日午前11時、気性庁が緊急会見を開いた。

昨日午後1時は大潮、満潮時瀬戸内海の海面は通常2m上昇するはずが、実際には干潮時海面を4mも下回る異常現象が起き、海水浴客の間で騒ぎとなっていた。海面の異常に最初気づき気性庁に連絡した富岡真澄さん(漁師)は次の様に語る。

「人間ドッグから戻り自分が犬人間ではない診察結果に安心していたところ、自宅二階から見える浜の水面が完全に干上がっていることに気づきました。普段は白浪が浜に打ち寄せ美しいのですが、その時は小型のセミクジラがアグラ座りしている後ろ姿がハッキリ見えたんです。まるで砂漠の黒いラクダがアグラをかいている様に見えて、心底恐ろしかったです」

この特異現象の原因だが、気性庁の説明によると今夏の異常気温により全国で熱中症患者が続出、報道などで熱中症予防には水分摂取だけでなく塩分を摂取するよう呼びかけが周知徹底したことにより、海水浴観光客らが泳ぎながら海水を頻繁に摂取、その結果海面が異常低下するほどの海水が飲み干されたのではないかとのこと。

昨日は瀬戸内海全域に海水浴客が約2000万人ほど出ており、海の家のかき氷イチゴ味なども開店から僅か7時間で全て売り切れるほどだったと言う。

気性庁はこの異常気温が今後も続くとして全国の海水浴客が出入りする繁華街を中心に海水飲料摂取を控えるようチラシを配り呼びかけている。

 

朝陽新聞先天性人語日曜版より抜粋

大型台風上陸 / 阻止した気象台秘話

 

 

 

「昨夜未明、甘味大島海底付近で発生した台風1374号は、その後、安泰低気圧を巻き込みながら東へ北上を続け、今日未明には鹿乃子島最南端を通過して四国より本州に上陸する構えをみせています。

今後の台風進路について鹿乃子島放臨羅部気象台より旋毛本(つむじもと)さんと電話がつながっておりますので今後の状況についてお話を伺ってみたいと思います。

…旋毛本さん。………旋毛本さん……………。電話が…つながっていないようで…すね…。

ここで一旦音楽を入れ、38秒後に再び放臨羅部気象台と電話を結びたいと思います。時間は2時30分を回ったところです」

 

♪~ ♪~  ♬ ♪ ♫ ♪ ~ ♬  (゜゜)~ ♬~ ♪~ (゜゜)~ ♪~

 

「はい、それでは再びスタジオから台風情報をお知らせします。

…昨夜未明、甘味処で発生した台風1373号は、その後、安泰低気圧を巻き込みながら東へ北上を続け、今日未明には鹿乃子島最南端を通過し、四国より本州に上陸する構えをみせています。

今後の台風進路について、鹿乃子島放臨羅部気象台から金剛岩さんと電話がつながっておりますので伺ってみたいと思います。…金剛岩さん」

 

「はい、金剛石です」

「早速ですが、台風1372号は今後どのような進路をとって日本列島に上陸しそうですか?」

「そうですねぇ、一応こちらでは昨夜、台風緊急進路変更会議を招集致しましてですね、適宜必要な措置を幾つか実行に移したところです」

「台風緊急進路変更会議…。とおっしゃいますと。それはどういう…」

 

(゜゜)~ (゜゜)~ (゜゜)~ (゜゜)~

 

「今、画面が台風の影響で乱れてしまいまして大変失礼を致しました。金剛石さん、たいふ…」

「金剛岩です。あの、私、金剛岩ですね。石ではなくて、岩ですね、岩」

「大変失礼致しました。話を戻しますが、進路を変更するといいますのは?」

「ええ。今回初の試みなんですがァ。…台風進路に先回りしまして、列島上陸の入口となる可能性の高い高知の足摺岬最先端に雨男さん雨女さん57名に、この方達は鹿乃子島市内在住のボランティアの方々なんですがァ、急きょ集まってもらいましてね、現在、足摺岬の先端部に集合してもらってます。ええ」

雨男雨女さん…。と申しますとォ~ッ?」

「ええ。雨男雨女さん達はご存知の様に雨を呼んでしまいますからですね、今回の様な大型台風の場合は特に降雨量が多いですからァ、雨男さん達が足摺の最先端に陣取ることによって台風が嫌うと思うんですよゥ、台風にしてみればよそ者に見えるわけですからァ。それで何とか進路を変えて列島上陸を未然に防げないかと皆さん頑張っておるところでございます」

「はあああああああああああ~ッ!。私、初めて伺いましたが、過去にそのような進路変更を実施されたことがあったんでしょうか、鹿乃子島放臨羅部気象台では」

「いえ基本的にはありません。平成2年8月、台風549882号接近時に一度だけ、鹿乃子島指宿沿岸に水先案内人ボランティア、学生さんですね皆、この方々を集めたことはあったんですよ。非公式で実験的要素が強かったので公表はしませんでしたが」

水先案内人…。それはどのような方々なん…」

水先案内ですから台風を誘導する形になります。その方々に台風を太平洋へ誘導してもらおうとしたわけですね。ところが会場自衛隊とうまく連絡が取れませんで、結局実現はしなかったんですよ」

「会場自衛隊?。……………もう少し詳しくお話いただけますかァ~ッ!! 」

「ええ。会場自衛隊の用意したヘリに水先案内人の学生さん達98名に乗り込んでもらいましてね、太平洋へ台風を誘導する計画だったんですよ当初。誘導の天気図まで用意してたんですが、強風の影響でヘリが離陸出来なかったんですね」

「しかし…万が一事故が起きた場合、それは…」

「……。これは何の電話なんですかね。私は今回の台風情報についての…」

「失礼いたしました。今回の台風1370号の情報についてお話下さい」

「ええ。…雨男雨女さんを足摺に配してですね、正面にあたる桂浜沿岸部、1キロ置きに晴れ男晴れ女さんを男女交互に49名。現在この時間、立っていただいております。これで進路変更は万全であると考えております」

「それは…。今現在晴れ男晴れ女さん達が桂浜沿岸部に既に立っておられるということなんでしょうか」

「えッ。ええ、そうですそうです。皆さんボラですね、これも」

「さきほどの桂浜沿岸の映像を見ますとね金剛岩さん、あ、今画面に映っておりますが…。お分かり…、になるでしょうか。激しい高波で道路は全く見えない状況です…ここにボランティアの方々が本当に現在立っておられるんでしょうか」

「えッ、立っておりますよ。先ほどもトランシーバーで安否確認を行いました」

「トランシーバーで…。大丈夫なんでしょうか、もの凄い高波が道路にまで…」

「アッ、それは全く問題ありませんッ。トランシーバーは2台を除いて全て防水ですから壊れることはまず考えられません」

「………。これまでのお話をまとめますと…。足摺岬最先端に雨男雨女さんが53名、高知県桂浜沿岸部に晴れ男晴れ女さん49名、併せて102名の方が現在深夜2時57分、立っておられるということですね?」

「はいそうです」

「…………。お話、お続け下さい」

「ええと。補佐する形で足摺岬周辺海域にですね、現在3隻の会場自衛隊燃料補給船が巡回中です。各々、親子水入らずのご家族23組に乗り込んで頂きまして万全の体制を敷いているところです」

親子水入らず…の、ご家族の方々。…と申しますと他人などは含まれていないご家族だけの方々が降雨量を下げる目的で乗船なさっているんですね?」

「そういうことになります」

「しかし…もし不測の事態が発生した場合、金剛岩さん達に責任が及ぶということにはなりませんでしょうか」

「ア、それは心配には及びません。実は私事で恐縮ですが、私のカラオケ18番は教会ゴスペルの ♪ ハレルヤ ♪ なんですよ。というわけで本来ならこの時間に、私も足摺先端でマイク片手にハレルヤを歌っていたところなんですが、生憎許可がおりませんで諦めざるを得なかったわけです。

一応、参加の意志は気象庁に書類という形で記録されていますから責任云々は全く大丈夫だと思いますよ」

 

台風1369号は鹿乃子気象台の万全策により日本列島上陸を断念、未明に温帯低血圧へ変わった。

 

 

◆写真タイトル / 花台風

 

 

 

 

ダイエット知らず / 輝く女性とは

Title : 女性にオススメ! セクハラ取り締まりポリス・ボット

 

 

 

「梅雨時ともなりますと、ワタクシ共は、エビや貝類を極力売り場(スーパー生鮮コーナー)にはお出ししないようにしておりますので…はい、申し訳ございません。

お客様に、もしものことがあっても何ですので…はい……ご理解ありがとうございます。……失礼致します」

 

事務所の電話を切り溜息つく店長モネに控えめ口調で衛生士のネモ、

「商品出さないのかって言われましたぁ?」

「転ばぬ先の杖だから仕方ないんだよねぇ~。君子危うきに近寄らずだよ~。キミは女性だから分かるだろ、この究極の選択。

前、ウチで働いてた事務の子、ええと、なんてったっけなぁー。ああ、そうだそうだ、ナモさんだ。あのヒト美人でスタイル良くってねー、そのせいで通勤電車。毎朝痴漢。

見ていて同情しちゃったよー、やつれちゃってさ~、どんどん痩せてくしさ~。路線変えても同じこと、それで結局さー、長い髪の毛バッサリでショート。ドカ食いしまくり、半年で体重25キロ増えちゃって、というか本人がそれを目指したんだなー。

おかげで痴漢ゼロ (注:このエピソードは実話です) 。彼女、見違えるように顔なんかイキイキしちゃってねー、光り輝いて美しいんだよ。すごかったなー、まるでディーバ。彼女に聞いたら、案外そういう女性、居るんだってねー。これはこれで転ばぬ先の杖でしょーねー!」

「……。顔とかお相撲さんみたいになりませんでした?」

「んッ?!。なってたよ。当然でしょ。そうなるまで彼女ガンバッたんだからねー。凄いヒトだったなー。感激した職場の、ホラ、なんだ配送部のイケメンの、ナイキの靴しか履かない…」

「マモさんですか」

「あーそうそう!。彼なんか痩せてるからナモさんの輝く存在感にマイッちゃったんだろうなー。電撃結婚!。羨ましいよホントー」

「それ本心で言ってますか?。男のヒト、スタイルいい女のヒト好きでしょうに。だから痴漢に狙われたんじゃないんですか?」

「ラッシュの電車に、スタイルいい女性が好みの痴漢が集まって来てるだけでしょーねー。それを男はみんなスタイルいい女性が好きなんてコジツケってもんだよー。だけど女のヒトは好きな服が着たいとかでダイエットするんでしょー?。気に入った服が着られれば満足なんだよね~?。自己満足の世界でしょー?」

「好きな男のヒトに見せたいっていうのも勿論ありますよ、何言ってんですか」

「だけどさー、その服、男の好みと違ったら全ては水泡に帰すねー。美しく飾ったネイルアートとかいうの?、アレ。何だか訳分かんないしねー。女性の自己満足だよー。男には何ら関係ないねー」

「店長ッ!。そんなこと他の女性の前で言ったら大変なことになりますよ。まさかメノさんとかマネに言ってないでしょうね!」

「あ。言ったかも」

「冷たくされてませんかッ」

「ああ…。気のせいじゃなかったのか…」

 

 

◆写真タイトル / 輝く明日のために食べなはれ (アップルパイ)

 

 

 

 

オトク情報 / 本人特定 / 便利と不便

Title : ひょうい・いったい何だこりゃ

 

 

「ラジオで聴いた話だけど、鳴き鳴きしてるセミの寿命って1週間じゃないんだってネ」

「え。マジ。じゃ、どんだけ?」

「セミの成虫寿命1週間、に疑問を持った高校生が、セミ捕まえて羽にマジックで番号書いて解放、を繰り返して実験続けてたら、一か月前に番号書いたセミを再び採集したって」

「へぇ。それってMAXなのかな」

「そんなニュアンスだったけど、ハッキリしたことまでは分かんない感じだった」

「でも、そのエピソホドが本当かどうかは、オレラが自分で試すしかないってことだよネ」

「そだねー。結局はお気楽にゲッツ出来るオトク情報も、オトクしたか損したかは、結果見ない迄は分かんないもんなんじゃない?。タダより怖い物はないってネ。楽勝も落笑、語るに落ちた、はヤだな」

「マ、電子世界のアレコレ、こんなに進歩したって喜んでるけどサー、ハッキング技術だって格段に進歩してんだもんネー。コッチのパスワードの進歩なんて、アリャリャだし。鍵いくつも付けたってドアがチャチけりゃハイそれまでよ」

「言えてる。進歩イコール恐怖って時代の話だよネ。サイトでサー、色んなところで公開した自分のプライバシー情報も、15集めると本人特定出来ちゃうんだってネ。昨日(2019.8.12)、専門家がTVで言ってた」

「誰が15集めるの?。悪い人?」

「そーそー、ようするに、こんなに便利になりました、も結局は不便になっちゃう危険性と表裏一体(ひょうりいったい)ってこと」

「え…。憑依一体(ひょういいったい)?。憑依って…あの…霊がとりつくってやつでしょう?。サイトにも居るの?。時々、これは危険なサイトですってウィルスバスターが警告してるけど…ウィルスって憑依霊だったの?」