言葉 / 私を飾る月桂樹

 

 

言葉を大切に。

あらゆる場で耳にする言葉です。簡単に分かるようでいて、実はむずかしい意味合いだと思います。言葉遣いを指す。敬語の正しい使い方を指す。自分の言葉で表現し他人の表現を真似ない。言葉を侮辱するような言い回しに置き換えない。様々な意味合いが込められているのかなと感じます。

 

言葉。言う葉っぱ。

コミュニケーションのために人が発する音を葉に例えたのでしょう。見事な感性だと思います。

話や手紙はイコール言葉。言葉の集合体。

言葉を話す人が樹木。その樹木に生い茂るのが “ 葉の集合体 ”。

葉に注ぐ陽光が世相。時代のプリズム。木漏れ日に人は癒され、鳥たちは憩う。癒される言葉。憩う言葉。癒される対話。憩うお喋り。

葉を濡らす霧。葉を叩く雨。葉を凍らせる雪。それが世相。それが世論。時代の風と呼ばれ、人は敏感に反応する。対処する。対処しようとする言葉。善処しようとする言葉。備えるための議論。

葉を襲う病気。葉を枯らす病気。晴れていても曇っていても続く。進行する。適切な処置を施さなければ葉はことごとく全滅してしまう。病気という名の異常事態。それが戦争。それが紛争。それがテロ。それが天変地異。それが災害。それが差別、イジメ。切迫し緊迫し予断を許さない言葉。深刻な議論。声明。発令。

春、ひこばえが始まる。夏、生い茂る。秋、紅葉し続けるものと、緑を保ち続けるもの。冬、すべからく散りゆくものと、そのまま留まるもの。季節は時間。過ぎゆき再び巡りくる時間。時期。循環。リフレイン。ローテーション。輪廻転生。流行り、すたれ、やがて復活する言葉。蒸し返される会話。再検討される案件、その書簡、書類、意見交換、その議論。

私を分かって欲しい。私の主張を聞き届けて欲しい。私の人権を、要望を尊重して欲しい。あなたは正しいと言い、私は間違っていると思う。

話さなければならない。話し合わなければならない。一生懸命考えながら、寸分たがわぬ私とあなたの権利、その生きる意味を気遣い、尊重し、存在を気遣いながら、それでも引かない。譲らない。その主張。その言い分。その要望、希望、感情のうねり。

言葉と戯れ、言葉を弄ぶ。言葉を茶化し、言葉と遊ぶ。言葉を責め、言葉をなじる。言葉に敬意を払い、言葉にかしづく。言葉を恐れ、忌み嫌う。

禁止される言葉、抹消される言葉。猛威を振るう言葉。どんな言葉を配列するか、どんな会話をするか、どんな見解を導き出すか。何を呟くか、何を喋るか、何を語るのか。

 

言葉を大切に。

 

自分を大切に、他人を大切に、家族を大切に、社会を、国を、世界を、宇宙を、前世を、来世を大切に。

難しい。出来ない。話から逃げれば楽になる。話から逃げれば私は失せる。私にとってのあなたも失せる。無くなれ、消えてなくなれ。全部。全て。

この世からなくなる権利。居なくなる権利。選択肢。

 

あの世は権利を許さない。選択肢を許さない。言葉を許さない。話を許さない。来世で取り戻すから別に構わない?。来世に行くには条件がつく。

権利を最後まで放棄しなかった。言葉を最後まで放棄しなかった。

 

話を、続けた。

 

 

◆写真タイトル / 美しき装いの収獲