Title : 非常口
今月10月、暮らしながら
「やっと秋めいてきたね。余暇が楽しいよ。有効に使いたいね」と誰かに伝えるのと、
「さ来月はもう大晦日になっちゃうんだね」
とでは、こちら側の態勢造りが大幅に変わる。今年の残り時間は同じであるにもかかわらず、迫りくる事実に対する心構えがまるっきり違ってしまう。
社会的成功者は、大抵の場合、もう大晦日になっちゃう、の方を選択する物事の捉え方をする。
シアターシンドロームという言葉が在る。
日本では耳慣れない言葉である。
映画館で作品を鑑賞中、突如誰かが「火事だァッ!!」と叫ぶ。迫真に満ちた切羽詰まった声に、聴いた人々は間違いなく事実だと騒然。
出口に急ぐ人が一人ではなく二人なら、間違いなく狂気に満ちたパニックが巻き起こる。二人、とは複数だからだ。二人でも10人でも危機的状況においては全く同じ数と見なされる。
SNSによる覆面者のデマ情報配信。デマを真実にすり替えることに生きがいを見出す者達が追従する。
デマ情報を既成事実扱いし、さかんにやり取りする。これらの人々がたった2人でも、5人でも、100人でも、上記同様、周囲の者達には同じ数。
皆が噂している。皆が言っている。
同じ数、とは皆という名前の数だ。
皆という数は、世間と言う名前の数でもあり、社会的と言う名前の数でもある。
「国民的スター」という報道。しかるべき機関が、しかるべきアンケート手法で、しかるべき人数の国民にリサーチを試みたのか。?。?。?。
学級内、学校内でのイジメ。これらの仕掛け人は詐欺師の手法と何ら変わらない。わずか数人がグルになり、あたかも大多数が一つの真実を振りかざしているかのような錯覚を創り上げる。
10人の主婦を部屋に入れ、特売商品を見せる。素晴らしい商品は在庫わずか。10人の中に詐欺師が二人いる。値段を上げて買おうと大騒ぎする。二人が競い始める。値段は上がってゆくがチマチマした100~200円程度の値の上がり方。
残りの8人が次々と参戦してゆく。予想通り集団ヒステリー状態となる。
結局、落札者は大して人気のない、ありきたり商品を定価以上の額で購入してしまった。
シアターシンドローム状態での最善策は
最初から非常口に最も近い座席に座る習慣をつけていることだ、と言われている。至極当然、誰もが納得。
学校でイジメの対象にされていない自分。だから何もしない。
ではなくて、
もし自分がイジメのターゲットにされたら、された時、いち早く逃げられる非常口、それは誰か、それはどこか。を、事前に考えておく必要がある。
相談できる人、即転校、受け入れてくれる学校の存在。
DVを受け始めるかもしれない、リストラされるかもしれない。もろもろ、我が身に起こるかもしれないし、起こらないかもしれない、不測の事態。予期せぬ災難。スーパーとばっちり。
自分だけには起こらない、と考える若者が急増。全ては貧しき想像力のなせるワザ。彼ら彼女らが、おひとり様、で居られるのは、シアターシンドローム時の対処法を持たずして平然としていられるからだ。
セイフティーネットは他人との申し合わせで作られるものが最強だから。
「困った時は助け合おーね」
嘘でもマジでも約束は約束。相手というものは、居る方がいいのだ。いつの場合でも。目の前にいる、肉声の聞ける、表情の変化を確認出来る相手のことである。