Title : 大爪大王
ダメな奴に言われるコトワザ、「お前にアイツの爪の垢(アカ)でも煎じて飲ませたいもんだよ」
全く意味不明のコトワザ。何故、ツメの垢なのか。何故、煎じなければならないのか。
だが、問題はコトワザの意味以前。そもそも、このコトワザ自体が使われなくなっている。
それが今の世の中、世相。
かつて、手相を見る人は路傍でよく見かけられた。千円ほどで気軽な人生相談、よく当たると評判にでもなれば長蛇の列。お客さんの大半は女性、自分の恋愛成就を見てもらう。今ではほとんど見かけない。
手相も個人情報開示で危険。または、自分の将来、怖いこと告げられたら立ち直れない、といった理由。
能ある鷹は爪を隠す
というコトワザもある。能力の高い人は、それをたやすく人に見破られないようガードしている。警戒されては動きにくい。
爪を研いで待つ
というコトワザもある。準備万端整えて。
つまりは、戦闘態勢に入っている鷹が隠し持つ爪の垢を煎じて飲ませてもらえると非常に有難い、と誰しも思う。
だが、残念ながら鷹には断られてしまう。爪の垢は個人情報そのものだからだ。
故に、誰もそんなもの煎じて飲んだりしなくなった。コトワザも不要。手相などの易者も消えた。
後に残るは、爪切りのみ。それはあたかも、情報満載の書類をシュレッダーするに似ている…。
美容院で自分の切られた髪を持ち帰りたいと言う人はあまりいない。髪のDNAには無頓着…。