上司と部下の会話 / ランチ・ミーティング / 模範例

Title : マイルドダンデイな会話でいこうゼ

 

 

 

「コロンブスの卵だな、卵が先かニワトリが先か。そういうことだ」

 

黒縁ロイド眼鏡の左レンズに

クッキリと親指であろう指紋を付けたまま、

早番納(さばんな)は、歯で割り箸をパチッと割り、

親子丼の鶏肉から先に食べ始めた。

それを横目で見やりながら部下の佐井(さい)、

 

「いくら重要な案件交渉でも、ヤッパ食事が先で正解でしたね部長。

今、食べとかないと食事すんの深夜になっちゃいますもんねえ」

 

「優先順位こそが効率的目標達成の要だからな。

それを見事なまでに実証して見せたのがキミだ。

もぐもぐもぐもぐもごもぐ、結婚より出産が先。

もぐもぐもぐもぐもぐ、ウムッ。

相手方の親御さんも孫の顔見た途端、

エビス顔で結婚許してくれたんだからなあ」

 

そこへ佐井のエビ天丼。「お待ちッ」

 

「部長、コレなんですけどね。

海に老いると書いて海老(エビ)なわけですよ。

背中が曲がってるから老い、

は分かるんですけど、

何でビなんですかね老いが。

老人をビジンなんて読ませないじゃないですか。

マ、オバアチャンなんか喜びそうですけど」

 

「そうか?。それよりオレが気になるのは

海老天のポーズの方だな。

腰が曲がっていてこそ、海に老いるだ。

なのに海老天のは、直立不動姿で並んでるじゃないか。

海の青年だぞ、それじゃ」

 

「海の青年、それサーファーですよ。

エビじゃないですよ。直立不動なのは簡単な話ですよ。

曲がらないで真っすぐに出来るくらい、

このエビは大きいんだぞと、店側がアピールかけてるんですよ」

 

「そうだったのか。じゃあ、

カニシャブのズワイはどうしてだ。

脚を曲げて運んで来るぞ。

ああそうか、真っすぐに伸ばして運ぶと危ないな、

爪先でケガするな。

大きく見せても怪我人が出たらシャレにならんか」

 

「毛ガニが何処から出るんですか」

 

「ウァーハッハハアーッ!!」

「あっはっはっは?。え?」

 

「それはいいとしてだ。キュウリは真っすぐでないと売れないらしいな。

曲がってるのは出ても二束三文の叩き売りだ。

ただ切りにくいというだけでだ。

バナナはいいのか曲がってても。いいんだろうな」

 

「バナナは千切りにしませんから、そのまま食べますから問題なし」

 

「カボチャは南に瓜と書くだろ。

スイカは西に瓜だ。

この南と西は何だ。どこを指している。

カボチャとスイカは、道路標識に成り得るということなのか」

 

「確かに!。ボク、地方にレンタカー出張してる時に、

時々道路脇で、南瓜だの西瓜だの売ってるの見た事ありますよ、

アレ、標識だったのかもしれませんね」

 

「だとしたら見えにくい標識だな」

「両方とも暗い色ですからね」

「ウァーハッハッハーッ!!」