ひとかけらの純情 / 南沙織 / 有馬三恵子の想い

Title : 星を見失って

 

 

 

いつも雨降りなの 二人して待ち合わす時

顔を見合わせたわ しみじみと楽しくて

あの恋の初めの日を 誰かここへ連れてきて欲しいの

あの燃える目をしていた 熱いヒトにもう一度会いたい

 

いつもレクイエムを あの部屋で聴かされたのね

ぎこちない手つきの お茶にさえ ときめいて

 

何故 思いがけない時 冷めてゆくの あんなにも愛して

まだ信じられないのよ あなたからの つらそうなサヨナラ

 

何も実らずに いつも終わるのね 若い涙ひとつふたつ

今はいいけど

あの恋の初めの日を だれかここへ連れてきてほしいの

あの胸のうずくような恋をしてるひとになら 分かるわ

 

 

“ ひとかけらの純情 ” (作詞 / 有馬三恵子、作曲 / 筒美京平)。

 

衝撃のデビューを飾った南沙織。

日の出の勢いだった時期に彼女が歌い、素晴らしい楽曲であった割には、

ボクが思うよりも評価が低かった。

それは歌詞に託されたメッセージを

ティーンエイジャー達が読み解けなかったからではないか

とボクは疑っている。

意味が良く分からない。大したことは歌われていない。

そう判断されてしまったのだとしたら、全く残念でならない。

ボクの詞解釈は以下の通り。

 

 

その一生を神に捧げ仕える神父を志していた彼。

彼女に魅せられた彼は、やがて燃えるような恋情に抗い切れず

彼女と交際を始める。

一方で、神と歩む道を捨てきれない彼の葛藤は

中途半端な形となって現れる。

傘で顔を隠し、関係者にデートを目撃されることを避ける。

純粋無垢な彼女が決して気づくことのない彼の心の秘密。

 

彼は自身の気持ちを確かめたくて、あるいは

自分が信じる世界を彼女に伝えたくて、

自室でレクイエムをかけた。

彼女には、心安らぐ音楽をかけた、とだけ単純に解釈されたのかもしれない。

これ以上彼女と付き合いを続ければ

自分は聖職者への道を断念しなければならない。

 

彼は決断した。

 

突然彼女の前から姿を消したのだ。無責任な行動かもしれない。

彼女は傷つくが、今ならまだ、きっと彼女は大丈夫。

彼女の若さが、涙が、それを癒して立ち直らせてくれるだろう。

 

彼女が見た燃える目。それは、

神と共に歩もうとする彼が、

一瞬見せた清廉な志の輝きだったのかもしれない。

 

ひとかけら、それは彼のものだったのか、彼女のものだったのか…。

 

世界は複雑。人それぞれで

世界という事実は、いかようにも変わるから。

 

 

 

◆ ひとかけらの純情、アルフィーの演奏と歌もなかなかですヨ。さすが。彼らは絶対いい曲は見逃しませんネ。