プロテインの時代 / すべすべ / きめ細やかな肌とは

Title : プロテイン狙われるから自分がヌルヌルだとは絶対に言わないカッパの竜ちゃん

 

 

「オレは悩んでんだよ。もう何年位なるだろうかー、やだやだ」

虎抜(とらぬき。去年定年退職後、郷里の判子村に戻る)は庭の紫陽花眺めながら、角刈りごま塩頭をさわさわ撫でて独りごと。

「あら、そんなに長い事。水の臭いがするわねえ。何?。何よ」

「いやな…どうして魚の身体の表面は、ああもヌルヌルなのかと思ってサ。ウナギは特にヌルヌルしてるだろ」

「ドジョウもアナゴもですわねえ。潜ったり、隙間に無理矢理入り込むからでしょ~、傷つきやすいことしてるからぁ~」

「うん、オレもそう思ってんだ。だけどミミズはあんましヌルヌルしてねぇんだよなぁ。オレ、昨日そこんとこ掘っ繰り返してミミズ触ったから分かんだけどね。な?、そこんとこ掘っ繰り返した跡、分かんだろ。な?。その、落ち葉の、黄色みがかってるやつの右隣の」

「黄色みがかってるの3~4枚あるじゃないのぉ~。どれかしら」

「もういいよ。淡水でも海水でも蟹とか海老はヌルヌルいらねぇんだろ?、硬いカラに入ってっから。貝だとかサ」

「ヤドカリもそうよアナタ」思いつき笑いに顔が輝く求美(もとみ)。

「あれは貝じゃねぇだろ。貝には入ってるが。あれ?。ヤドカリはカニなのかエビなのか」

「やあねぇ(笑)。ヤドカニってちゃんと名前がついてるじゃないの」

「イルカもクジラもサメも、亀も魚じゃねぇ。カニもエビも魚じゃねぇ。だけど水ん中に住んでる…。てことは必ずしもヌルヌルでなくても水の中では暮らせる…」

「魚だけが何でぬるぬるじゃなきゃなら「イカもタコもヌルヌルよ」

 

 

Title : ぬるぬるイカ、ライジング・サン

 

 

「あ、そうそう。おッかしいなぁぁ…。メダカは魚なのにぬるぬるじゃねぇ。金魚も…。そりゃ、ちったあヌルだが、言う程のことはねぇ。言いがかりは可哀そうってもんだ。…おッかしいなぁぁ…」

「カエルなんかもヌルヌルよ。やっぱりミズの中に居るから必要なんでしょッ」

「て思うだろ?。トンボのヤゴはヌルヌルじゃないんだよな。オタマジャクシはヌルヌルなのになぁ…」

「じゃあカエルだけヌルヌルじゃないのかしらねぇ」

「て思うよな?。ハッキリ今そう思ったんだろ?お前。ところがヒキガエルはヌルヌルどころかカサカサなんだ。あんまし水ん中にいねぇからなアイツラ。だけども、水ン中にいるヒキガエルのオタマジャクシはヌルヌルなんだよな。何なんだアイツラ…。訳が分からねぇ…」

「どうしてそんなに魚のヌルヌルが気になるのかしらねぇ。必要だからそうなのよ。別に構いやしないわよ、私なんて。気にしないわよ」

「そうか?。あのバッグ、本革じゃなかったんだろ?。何であんなに騒いでたんだ?」

「バカねッ。高いお金出したからに決まってるじゃないのッ。サギに合ったからなのよッ」

「だってお前、合成バッグと同じ値段で買えたって喜んでたじゃないか~。今でも丈夫で長持ちしてんのに、何で未だにこだわってんだ」

「ステイタス(ステータス)の問題よ。魚のヌルヌルは魚にとってステイタスでも何でもありゃしないのよ。全然違う話じゃないのぉ~!」

「お前の怒りは浜井の奥さんとバッグで張り合ってるからだけなんだろ?。あそこは金持ち、ウチとは違う。何もかも違うんだから張り合う方が間違ってんだよ、ハナッからな」

「何もかも?。どこがどう何もかも違うのよッ!」

「だから今それをお前とディスカッションしてたんじゃないか~!」

 

 

◇ステータス → 地位や身分の他に、立場、状況の意味もある。