Title : 私は刺さない、花ケムシ
★ 蝶子。ちょこ。このエピソードの主人公。
チョコの自慢は、きめこまやかな肌。
夏場ともなれば、自身のナマアシにナルシーせずにはいられない。
その夏場が目の前。
休日午後。ソファーでスマホをいじっていたチョコは、
自分が無意識に左ふくらはぎを掻いて ( かいて ) いることに気付き、
慌てて跳ね起きた。
ヤダ何?覗き込めば針先ほどの赤い刺し傷。
ソッと触れると、かなり痒い。
虫ッ?!
チョコの全身に戦慄が走る!。動転しつつ、即ググる!。
虫刺され、で検索かける!。見たこともないソノ写真!。
ちょっとちょっと何何何よコレ、ウワッ、やだやだ、
まさかこれじゃないよね、オェッ、
ちょっとちょっとちょっとヤメてよぉー!。
虫刺され写真と解説を、執拗かつ丹念に検証した結果、
この刺し傷はノミではないかと…。
友達の茶子(ちゃこ)んチに、こないだ初めて遊びに行った。
ネコが2匹ミャミャーハお出迎え。ゾンビーノとバンビーノ。
可愛かったナ、毛先の長いヒマラヤン。
あの時お持ち帰りしちゃったに違いない。
今すぐ薬局!。速攻駆除!。
さてと何を買えばいいのかな、ヒャーまさかのスマホがバッテリー切れ!。
仕方ない、待ってらんない、そんな心の余裕ない。今すぐ外出!。
煙炊くやつは使えない。水槽にクラゲ飼ってるから。
水槽の水だけで20キロあるから。店員さんに相談したら
ノミとりホイホイを勧められた。ウァーハッハ!(爆)、
そんなのあるの!いくら?、ハ?、2000円て言った?今。
ノミのサーカスにだって入場券2000円なんて
バカバカしくて絶対に払わないワタシ、
ノミ退治にそんなの出すと思う訳?。
結局、日焼け止めとオロナイン買って帰宅。
ソファーに転がる。
また噛みにくるかな。どうかな。
恐いけど人体実験することにした。
雑誌を読みながらチラチラ脚を見張る。
正体確認を確認することが、効果的な殺虫剤投与につながる。
そうこうしているうち、未確認移動物体発見!!
ソファー真横棚に何か居る!。
そっと顔を近づけて凝視。
クモ?。
体長5ミリにも満たないこげ茶色のクモの赤ちゃん。
待てよ。
この子がノミを食べてくれんじゃない?、ア~ン?。
ノミでなかったとしても、とにかく
この子が始末してくれるような気がする。
そーだそーだ、そうに違いない!。
「お願いね。育ち盛りなんでしょ?、何だか知らない奴なんだけど
爆食いヨロシク。今からキミをモックと名付けよう!」
それから3日が経った。
その間、チョコはモックが
ピョンピョン跳躍移動している姿を4度目撃した。
あれ以来ノミには一度も噛まれてはいない。
やっぱりモックが始末してんのかな。いいぞモック。
休みの朝、ハタと気づく。アラま、やだどうしよ。
モックが居るから掃除機かけられないよ。
どこにいるのか分からないし。ううん困ったな、仕方ないや、
今日はテーブルと棚の水拭きだけにしとこう。
棚を拭いているとモックを発見!。とっさにグラスを手に
取り被せようとした途端、
まるで曲芸師の様な大跳躍見せてのモック消失!。
「なるほどね。小さなクモなんかはサ、うまく季節風に乗ると
日本からハワイくらいまで行っちゃうらしいよ。
何かで読んだなあ」と職場の先輩。
うわあ、やっぱり物知りだ球人(しゅうと)サン、
結婚したいなあ~。
ふくらはぎにポッチリ、おぞましき惨劇、あれから5日。
もう大丈夫、推定モックがスナイパーってるから、へへへ。
クモとクラゲと私、か。
そんなタイトルの歌あったような…。
帰宅するとビックリ!。
「アレッ!お母さんいつ来たのッ、何で!」
「ちょっと用事あってね、それより何あに~、汚い部屋ねえ。
だらしないッ、こないだ来た時は…
「お母さん、まさか掃除機かけたッ?」
「かけたわよ。…何よその顔、感謝くらいしなさいよ」
ノミはいなくなったのやら、モックはいなくなったのやら。
どちらの気配もサッパリ。
それから3日後、
再び反対のふくらはぎに、
ポチッ。