Title : オファー、用がございますの防止嫌〈ぼうしや〉さん
かつて谷山浩子は ♪ お早うございますの帽子屋さん ♪ という本人作詞作曲の歌の中でこう告げた。
誰だってみんな やさしい人ばかり
だから お早うございますの 帽子屋さん
誰だって微笑む時はやさしい人ばかり、とも歌われる。何十年も前の歌だ。
その当時は、まだまだ素直にこんな歌詞が世に出せる時代だったのだろう。
今、果たしてどれほどの人の共感を呼べるか、正直言って大いに怪しい。
この楽曲の中で、今でも多くの人々が共有感を持つことが可能な歌詞があるとすれば、
疲れるだけですよ 憎んでみたところで
だからお早うございますの 帽子屋さん
だろう。色とりどりの帽子を、皆に
ひとつずつくれるという帽子屋さん。
その帽子が象徴するものは一体何なのだろうか。
今は男女共々みんな髪型が崩れるのを怖れ、
厳寒期以外はほとんど帽子を被らない。
マスクで顔を覆うが頭は丸出し。
つまり、ヘアスタイルど~よ、顔は見ないでね。
他人への警戒感、不安感、
♪ そして手をつないで ♪
の歌詞はありえない。
とにかく時代は変わった。
日本島国安全神話は、世界レベルでは今なお生きてはいるものの、
ふた昔前より、日本は確実に安全ではなくなったと
いうのが世間の実感だろう。
お早うございますの帽子屋さんは
確実に絵空事になってしまった。しかしながら、皆誰だって
この歌の歌詞に描かれている世間の有り方
の方が好きに決まっている。だからなのか、
ボクは時々、この歌を口ずさんでいる自分に気が付くことがある。
この絵空事は、忘れたくはない。