Title : 囚われの王族後つぎ
人生を快適なものとし、
出来うる限り、自身の心を台無しにしないよう、
愛する我が子に帝王学を強いる親が居る。
王家の子供達が継承する学問である帝王学とは
似ても似つかない、
もうひとつの帝王学。
それは、いわゆる勝ち組、
つまりは、人生に於ける絶対勝者のための必勝法
とは真逆の、対極に存在する。
勝ち組とは、ここ日本では短絡的に受験勉強の勝者であるとか、
一流会社へ就職出来た人であるとか、
エリートコースに乗っているだとか、
玉の輿に乗っただとか、
そういったことを達成した人、
を指している場合がほとんどではないだろうか。
そういった認識、目標は、全く悪い事ではない。悪いはずがない。
人生に起こる輝く喜びごと、それこそ生きている実感、自身の実存感そのものだ。生きている証 ( あかし ) だ。
非常にマズい認識は、それを
幸福実現70~100%のチケットを手に入れた、
幸福な人生を確定した、
と錯覚してしまうことだ。
勝ち組とは何か。
金銭的勝者。
愛する人と幸福に暮らす勝者。
千差万別、人の数だけ定義が違う。
決して到達しえないエスパーへの道。
不可能に屈服するためのイバラ道。
心の王国で学ぶ事柄は、それに挑戦する我が子へ送る愛の水晶。
帝王には誇りがあり慈愛がある。
ただ1度きりの人生を、その枝になるたわわな果実を、
誰よりも多く、確実に手に入れる事の出来る脅威の教え。
帝王学を学んだ彼、彼女は、
決して到達しえない目標を見上げ
唇を噛みしめる。
何度も何度も諦めるものの、その半面、決して諦めてはいない。
到達しえない目標はあまりに高い。
夜空の星明かりのもと、
下界を見下ろせば
無数の人々が蠢いて ( うごめいて ) いるのが見える。
そこは、つい先ほどまで自分が身を置いていた場所。
そしてこのあと、自分が再び戻る場所。
かつて、パンドラの箱が開き
純粋無垢なこの世に、
ありとあらゆる罪が翼を拡げ拡散していった。
全ての者達が飛び去ったと思われた時、
箱の底から叫び声が聞こえる。
「わたしを出して!早く!」
蓋を開けると、箱の中から最後の何かが飛び出した。
希望と言う名前だった。
その者は飛び去る翼の息遣いで
はるか遠くの空に消えた。
何を追ったのか。誰を追ったのか。
今、その者は一体どこに居るのか。
我が子の中に居る。
我が子の脳の中にいる。
眠っている。
それは誰だ。
パンドラの箱の最後の住人、
希望。
その中に潜在意識も居る。
さあ、これを我が子のためにどう扱おう。
そうだ、こうしようと、パパ。
そうね、私はこうするから、とママ。
2人が話し合ったことを書き留めたもの、
それが、このような意味合いの教育として
完成したようだ。