第一印象〈1〉/ 気配を感じる/ 本質を見抜く

Title : トラちゃんの発してるもの、分かんないデショ

 

 

 

「ほら、シャツのボタン!、ちゃんと上まで留めなさいッ。

第一印象が肝心て言うでしょッ、ほら、背筋ちゃんと伸ばしなさいよッ」

 

という具合に “ 第一印象が大切 ” であることは誰もが知っている。

だが、ソレの何を知っているだろう。ただ単に言葉だけを知っている。

意味を知っているだけ。それとも、身にしみて実感していたりするのか。

 

初対面の人の第一印象。

大抵の人がほぼ数10秒で決める、という報告がある。

その人の外見をパーツごとにサッと見て観察して、

直ちに固定イメージ作っちゃうことが第一印象なのか。

第一印象は早合点と同義語ではない。

ここでは、我が身に備え付けるべき

切り札としての “ 第一印象 ” を記してみたい。

読んでどう解釈するかは個人次第。

単なる私見と読み流して頂いて問題もなし。

 

始めて見る場所や景色、サッと見て印をつけるんだよね?、

印の象、と書いて印象だから。

パッと見勝負?。それじゃ事実誤認の危険性が大では?。

 

印象派の画家はどう?、モネやルノワール、ゴッホ。

個々の画家達が、個々の印象に触発されて

個々の絵画法を編み出していった?。

違う違う、それは全然違ってる。

それが本当なら他の派の画家、例えば象徴主義派、野獣派、

その画家達は、対象物を印象なんかでは捉えなかったことになる。

まさか。

服装、髪型、物腰、話し方一切などなど。

それが第一印象を決定づける主たる個人データなのだろうか。

しかも数10秒でスキャンしてしまうんだったら

ロボットなみの力量発揮だ。

皆、そんなに洞察力の達人?。それとも偏見と誤解の人?。

外見チェックを即判断、て知人や仲良しの人にも

会う度、フツーしてるんじゃないの?。女性同士なんて

完膚なきまでに研ぎ澄まされてるから

男共の比じゃないよね。一目瞭然、総チェック!。

 

“ アラッ!。今日は普段着でって言っておきながら、このヒトッたら、

さりげなく香水はいつものデューンより格上を使ってるじゃないの!。

それで香水染みを恐れて黒い服にしたのね、いつもは白なのに!。

やられたわ…真に受けた自分の純情が憎いッ ” と心の中で舌打ち。

 

初対面は、第一回目の印象だから

第一印象?。

そのあと、度々繰り返される印象チェックは数えきれないから、

ただの印象?。

そうではない。実は第一印象、そのあとに

第二、第三があるものだ。

 

初対面で、最初に素早く

イメージ構築。それは単なる視覚反射。

背後で突然正体不明の音がしたら、

大抵は反射的に振り返る。それと同じ。

正体が分かってると振り返らなかったりする。

人は見たら、聞いたら、何でもかんでも

反射的に判断しているものだ。

何気なく横を見たら

ショーケースに見たこともないタイプのケーキ。瞬時に、

「ワオ!、旨そう!」

これはケーキに対しての第一印象じゃない。

単なる視覚反射。

うつらうつらしていて急に目覚め、バスの外の景色を

寝ぼけマナコで何気に観る。

「ハオ!、すっごい綺麗な紅葉ッ!」

第一印象じゃない。視覚反射。ただちに脳が反応しただけ。

脳にはこれまでに認識したケーキの一覧、紅葉景色の一覧が

ストックされているから。

たちまちのうち、美味しいジャンル、綺麗なジャンルに回線が繋がれる。

 

“ 第一印象 ” の正体は

視覚反射ではなくて、むしろその逆。

“ 気 ”

目には見えない気。気配。

初めて出会う人や景色、物が有している

気。気配。

電車でうつむき座っている時、

ふと前に立った見知らぬ他人から殺気を感じる。

恐くて顔を上げられないどころか、態勢も起こせない程。

見ていない。相手の顔を。表情を。

つまり視覚反射ではない。

ズボン周辺は見えるが、それに特段変わった要素はない。

にもかかわらず、気のせいではなく、明らかに

言いようのない威圧感を感じる。

これが本物の第一印象だ。

つまり、第一印象とは安直な外見チェックなどという子供騙しではなく、

視覚反射でもなく、むしろ、第六感や虫の知らせに近い。

空港のゲートチェック係の人は、持ち物検査だけではなく

ザッと控えめに乗客の容姿も見ている。

眼で、即座に対象物の正体を把握する。

把握は第六感、経験、気、であって科学的な根拠はない。

視覚によるあいまいな情報の入手。

眼は脳の一部だから

自分の脳内に蓄積された第六感、インスピレーション・データと

瞬時に比較照合する。つまり、

眼に視えないが、多くの人がありありと実感する何か、

についての実体験情報と照らし合わせる。

 

“ 年の割には若く見えるな。オレと何処が違うんだろ ”

 

という具合。過去に自分が実体験した

目に見えない何か、についてのデータと照らし合わせている。

答えが分からず、適当にうわべだけの事実にすがり付き、

 

“ ああ、そうか。日焼けしててシワが見えにくいんだ! ”

 

と納得する。常識と照らし合わせて結論を下す。

 

ところが、第一印象というものは、ツジツマ合わせとは異なるものだ。

人間だから、対象物を見れば、即座にそれが何かを判断しようとする。

何者か、安全か危険か、に始まり

小奇麗か不潔か、上等な人間か、下卑ているか。

これらは、全て脳内データと即時に照合されるもの。

常識の範囲で、外見的要素でツジツマ合わせをする。

それを、イチイチ “ 第一印象 ” などと

小難しい単語で言いなぞらえたりはしない。

第一印象の正体は

“ 気 ”

邪気。殺気。病気。狂気。絶気。滅気。恐気。

悪気。色気。陰気。陽気。短気。呑気。元気。

志気。覇気。勇気。勝気。強気。本気。

根気。景気。無数に在る。

 

我が子を幼稚園入口まで送り、もと来た道へ引き返す母親。

行き交う人の顔など見ないで歩いている。

誰かとすれ違ったその瞬間、

突如、湧き上がる言い様のない胸騒ぎ。

立ち止まり振り返る。

目の前を行くその男の後ろ姿。

別段おかしなところなど見当たらないその男。

恐怖の戦慄で立ち尽くす母親。胸騒ぎが湧きおこる。

我が子に、もしも何かあったら!。

後を尾け幼稚園へと向かう。

 

ア!。目の前で、男が通行する女性を刺した!。

 

こんな実話はいくらでもある。

視覚反射ではない。

“ 気 ” だ。

常識では説明が出来ない何か。

その正体とは一体何だろう。

 

気は人間の全身から発せられる。

本人がどんなに隠そうとあがいても

絶対に隠し切れないもの、それが気。

気は人間の全毛穴から立ち上り

外界に放出される。

石鹸の匂いが付いてなくても

赤ちゃんの素肌は甘くて良い匂いがする。

愛を求める人の匂いだ。

もっと厳密に言えば人気〈ひとけ〉。

人の気。

人気歌手は、浅い支持だとしても愛されている。

人気とは本来、その人そのものが発している気。

ファンが発し、歌手が取り込んで

発し返したりもする。

 

面接官は受験者を真っ向から見て、まず第一印象を判断するのでは?。

イエス。

 

「彼の第一印象は、硬いって感じだったね。いかにも真面目で実直って感じ。

それが第一印象かな、ははは」

 

当たっていて同時に外れ。

それは脳が脳内常識データに照らし合わせて

即座に通例チェックしただけの、視覚反射による仮の結論。

これが、面接事実の当り半分。

理路整然とオーダーメイドの仮縫い、仮契約。それが当り半分の根拠。

大抵の人が同意する視覚的事実。

 

では、時間を戻してこの面接官、

受験者の第一印象、一体どこを見れば良かったのか。

前述からすると、 “ 気 ” ということになる。

 

そんなの判らなかった。特に変な “ 気 ” なんて感じなかった。

邪気、殺気、陰気も元気もね。普通だった。

じゃ、第一印象ない人ってこと?。

 

イエス。第一印象は皆無。

 

全身から立ち上る気を、本人は自分の意志でコントロールなど出来はしない。

つまり、必ず表に出てしまう。

なのに、何にも感じ取れなかった?、第一印象を?。

 

つまり、その受験生には特別な “ 気 ” がなかった。あるいは

気を感じる能力がこちらになかった。

これが正解。

 

彼には第一印象は存在せず、確認出来たのは、視覚的なチェックのみ。

小奇麗で前の人より好印象だった、とか。

好印象、と言う言葉にも

印象

という字が入るけど?。そう、好ましいイメージという意味で。

だが、この視覚的イメージは

服装だとか髪型だとか、喋り方。

つまり、本人の本質が垣間見えたわけじゃない。

包装紙をもって中身の印象を語っても仕方がない。

 

前述の場合、何故、受験生から “ 気 ” が感じ取れなかったのか。

 

無かったから。

 

その通り。何故、無かったのか。

考えも無しに面接に臨んだから。面接HOW TOを丸暗記し、

この会社に入社出来れば初任給がいくらで、

福利厚生がああでこうで。

これは、考えたとはいえない。皮算用をしただけ。

気概、心意気、覇気、勇気、やる気、強気、勝気、まるで無し。

つまりは気迫が希薄。気力なし。

さりとて緊張感は、他のライバル同様に持続しているから、

皆と一緒、結局のところ印象なし。

 

「第一印象で、清楚で無垢な女性だと思ったのに、

付き合ってみたら全然違っていた!。

本性見たり!。騙されたッ!」

 

それは、アナタの脳のデータ不足による誤認。視覚的な誤認。

第一印象なんかではなくって、それはただの視覚誤認。

こうあって欲しい、の願望がそう見せてしまう、というやつ。

これをアバタもエクボという。

つまり、アナタは自分で自分を暗示に掛けやすい人。

これを、バラ色のメガネをかけて社会を見る人、と言う。

 

本物の易者は、目の前をごく普通に横切って行く人の中に

死の気配を感じ取ることが出来る。

驚き立ち上がり、その人を呼び止め手招きする。

「何ですか?」

彼の眼を見る易者。最初に目に飛び込んで来た

“ 気 ” 、滅気、死気

は明らかに的中していた、と確認する。

通行人の目は、明白な下三白眼を示していた。

つまり、死相だ。

易者の第一印象は正しかった。

彼の体調が悪そうに見えたわけでもない。

むしろ、健康そのものに見えたのに。

易者は

“ 印 ”

を彼の目に確認した。

森羅万象の “ 象 ” を確認した。

これを総じて

“ 印象 ”

という。

 

印象の意味を具体的に説明することは容易ではない。

抽象的な世界に属する事柄ゆえに。しかし、

どんなに抽象的であっても、それらの正体を、あらゆる

“ 気 ”

が教えてくれる。

第一印象に始まり、それは続いて

第二印象、第三印象へと続き、遂に

その印象は、

推定真実

と認証されるようになる。

自身が発する気の放出を食い止めることは困難だが、

気をコントロールすることは可能だ。