新入社員の早期退職を考える / 消えた帰属意識 / 各部店の事情

Title : レンガのように頑丈なヤツ

 

 

 

蜜菱銀行本店第3会議室、部長会議。

 

「今日お集まり頂いたのは、御存じの通り、

ここ5年、我が社の新入社員が

入社後3年以内に退職する割合が4割

にまで達したことを受け、人事部からの要請で緊急会議の招集となった。

各部店、多忙であることは重々承知してはいるが、

皆さんのお知恵を拝借したい。…加川クン」

 

「ええと。…人事部長の加川です。

無駄な時間を省くため、単刀直入に申し上げたいと思います。

新入社員早期退職の最たる原因は、

当行の肩書至上主義にあるのではないかと…。

とかく絶対視されがちな肩書に代わりうる採用基準、

これに関し、今日は皆さんのお力添えを頂きたいと

マア、こう考えたわけです」

 

「はい…。よろしい…でしょうか。ア、恐れ入ります。

ええ、ワタクシ営業3部田川です。

肩書に代わり得る採用基準、これはワタクシ、

走り書きに尽きるのではないかと。

営業部店は足で稼ぐのが基本中のキ。

悠長に座って描いている様な奴は出世しないぞと、

いつも新人にハッパかけとるんですがどうも…」

 

「総務の滝川です。

常日頃、各部店の方々から

種々雑多な要望を多数受け、対処しています。

窓口でも断るのに一苦労でして。

是非、能書きタレるのが上手い人の採用をお願いしたい。切実です。

能書きが天才的であれば、ほとんどの依頼を

ナンタラカンタラで却下出来るのではないかと」

 

「貸出融資等関係調整部の北川、…であ、り、ま、す、が…。

どうなんでしょうな、こういうのは…。

というのはつまり、こういうことではないの、か、な?。

つまりは覚書なんですな、これが!。

どうも、相対的に、貸し借りの管理があいまいというか。

何なんでしょうかね、エ?。

覚書事務の完璧な人、これっちゅうことなんでしょうかね結局のところが、

ですよ。実際」

 

「金沢支店から研修に来ている融資部の及川です。お世話になっております。

こちらに来て1か月、どうも案件が繋がらずに

デッドになるケースが多いと感じています。

拡大発展があまり見込めないケースが多い。

私の立場から申し上げますと、

一筆書きに長けている人材の育成が

急務ではないかなと危機感さえ感じています。

案件がブツリブツリと単発的に切れてしまわず、

こう、ササササーッと、繋がるような、

そういう人材を求めたいですね」

 

「システムエンジニア部のシャリマハ・ガンジーです。

皆さんの考えはどうでもいいのかもしれませんけども、ですね、

アアハ、ごめんなさい、

ワタシ日本語があまり得意ではないでしょうけれどもがですね。

上書き

これが欲しいよこちら側はですよ。

何度も何度も上書き。

どんなに疲れてヘトヘトになっても、

次の日には健康ピンピンしてやって来る。

そうゆう人

 

部長たちから歓声が上がり、

スタンディング・オベーションが巻き起こった。