君を乗せて / 沢田研二 / 揺れながら

Title : 夜を行く鳥

 

 

◇ 君を乗せて(作詞 / 岩谷時子 、作曲 / 宮川泰 、歌 / 沢田研二)

 

 

 風に向かいながら 革の靴をはいて

 肩と肩をぶつけながら 遠い道を歩く

 ボクの地図は破れ くれる人もいない

 だからボクら 肩を抱いて ふたりだけで歩く

〈一部略〉

 人の言葉 夢の虚しさ どうせどうせ知った時には

 君を乗せて夜の海を 渡る舟になろう

 

A 2人の主人公は若すぎるカップルである。

未成年者かハタチになりたてといったところ。そのキーワードが

革(皮)の靴

これまでスニーカーだった2人が初めて革の靴をはいたのだろう。

大人にならなければ、しっかりしなければと

自分達への想いを込めて履いたのではないか。

 

B あどけなさの残る2人はまだ子供に近い。

肩と肩をぶつけながらで表現されている。心細く不安な世間への船出。

片時も離れず、互いの身体に触れていたい思いが伝わってくる。

恋愛慣れした2人なら、肩を抱き寄せられているか

互いの腰に手を回しているかだが、未熟な関係だと推察出来る。

 

C 地図は破れて目的地へたどり着けそうにない。

実際の場所ではなく、

進むべき予定だった人生進路を指しているのだろう。

くれる人という甘えが残っている。

 

D だからボクら。ボクの地図が破れたのだ。相手の地図は?。

ボクの地図だけが相手の頼りだったことが解る。

彼女は彼の夢についていこうとしている。

彼の地図が彼女の地図、彼の夢が彼女の夢なのだから。

 

E どうせ知った時には。どうせまたそうに違いない。

人の地図が口車に乗ってたてた将来への地図。

騙されたのかもしれない。

破れた経験から学習したのだろう。

少しずつ大人になりかけているのだ。

ただ聞き流せばロマンチックな歌詞。その裏に

具体的な事件を忍ばせる作詞者の力量が光る。

 

F 夜の海。地図もない夜の海。

全てが手探り状態の2人。

どうせそうなんだろう。そうなることは分かっている。

彼女を守れるのは自分しかいない。彼女のために

彼は急速に大人になろうとしている。

 

(注) あくまで個人的な解釈です。作詞家に聞いたわけではありません。

今の時代は、革の靴をはくのに年齢の概念など論外。

はきたければ、はかせたければ誰にだってそうする。つまり、

品物からイメージ・ステイタスが消えたのだ。

今や、物品が何かを象徴する、ということがないのだ。

オット、たったひとつあった。

金額で金持ちかどうかを推測する。

アレが買えるってことは相当金持ちだ、みたいな。

 

傷つくのが怖い若者達は

君を乗せる舟に成り得ない。

なりたくもない。そんなお荷物マッピラ。

勿論、舟になる人もしっかり居るのだが。

 

舟に例えたのは

揺れながら歩いているからだ。

石田あゆみの

♪ ブルーライト横浜 ♪

その歌詞中にも

“ わたしは揺れて 揺れてあなたの腕の中 ”

とある。三橋美智也の

♪ 星屑の街 ♪ にも

“ 両手を回して帰ろ 揺れながら ”

とある。双方、舟を象徴しているわけではないが、

どちらも夜のシチュエーション。

闇を大きな海原に感じている様に思えてしまう。

話を “ 君を乗せて ” に戻そう。

要するにこの楽曲は時代遅れ。え?、大好き?。

 

それならアナタは硬派試験に合格です。池メンなどというスケールではなく

立派な海メンだと保証します。