Title : カラッポの男
松茸のお吸い物、トマトジュース。
目覚めた瞬間、ボクはデクノ棒なのにブブカ(オリンピック棒高跳びで7回金メダル)の如く激しく跳躍、我が身のブザマな転倒もなく華麗に着地したソコは近所の食料品店。
そんなことを夢想する程にボクは衰弱している。
何とかしないとマジで命が危ないので、飲料水から栄養を摂取する大作戦を展開することに。
昔から慣れ親しんだ味と成分なら身体にも免疫(?)あるのでは?。きっと成功するだろう。
まずトマジューをラッパ飲み。ゴクリン、ゴクゴクリン。
うあーはっはっは!!、どうだ見たか!!、拒絶も出来まい?!、ガンガン入ってくぞ!!。
アッと言う間に500ミリ完飲!!。
少なくとも何がしかの栄養分は摂取されたわけだ。トマトは緑黄色野菜だからねえ~。味覚は鈍感になっている様で美味しさ等ほぼ感じない。
ウォプ!!
飲み終えて約1分、こらえ切れない吐き気!!。たッ大変だ、マッハでトイレに行か…
オエエエエエエエエエーッ!!。
全部排出。ダム排水
。怒涛の排出、吐き始めてから吐き終わるまで、その間僅か1.5秒。
その瞬間にボクは見た。
トマジュー滝に美しい虹が架かるのを。
畳に付いた両手、両膝頭のパジャマぐっしょり。ひえええええ…流動食ダメなら最早お手上げジャン!!。
お終いだあ、もう駄目だあ…。
ふらふら起き上がり台所で雑巾を調達しなきゃなら…、
ドッサン。おったまげメマイで転倒。
オオ!美しき赤きドナウ!。素浪人、吐いたトマトジュースの湖に死す。
小学校の夏休み、私鉄線の全駅巡りスタンプ・ラリーを達成して景品に茹でタマゴをもらったことがあったなああ…。
今、再び自分はトマト朱肉で自らにスタンプ…。愚か者という刻印でしょう、多分…。
真昼のシャワー。洗濯機上に置いたパジャマを見たのであろう母の叫び声、
「アンタ、血を吐いたのッ!!。大丈夫なのッ!!」
「トマトジュ…」
大きめの声を上げる体力なし。「大丈夫なのッ!!」
「だい、じょぉぶだよぉ…
バスタオル巻いた姿でキッチンチェアにへたり込む。
「温ったかい吸い物で試してみたら?。胃を温っためれば大丈夫なんじゃなあい?」
湯気立ち上るお椀を手に、再び浴室入りするボク。
全裸で風呂椅子に座り両手でお椀を後生大事に支え持つボクはネアンデルタール人。
現代人から退化する極めて稀なケース。
ラッパ飲みして胃が仰天したんだろうから、今度はチビリチビリ飲む。
初めて猫舌であることが役に立ったわけだな。
全裸なのは再び吐くことを想定しての事。5分程かけて松茸の吸い物なる点滴投与を完了。
あとは様子見。
10分くらい?。大丈夫そうなので出る。
もう一杯飲んでも大丈夫そうなので母にリクエスト。
「ええ~?。大丈夫なの?。もう絶食やめたら?」
まるで何も分かってない。まあ、ボクが隠ぺいしてるからなんだけどもネ。