Misty / Julie London / ミスティ / ジュリー・ロンドン

Title : I get misty

 

 

Look at me ,  I’m as helpless as a kitten up a tree

and I feel like I’m hanging from a cloud

I can’t understand

I get misty , just holding your hand ,

walk my way

 

 

私を見て

樹上で孤立無援の オチビちゃん猫みたい

雲から落っこちないように

しがみついてる気分

霧に中にいるんだわ

何にも分からない

あなたと手をつないで

いつもの道を歩くとね

シアターシンドローム / おひとり様 / 先読みは身を守る

Title : 非常口

 

 

今月10月、暮らしながら

「やっと秋めいてきたね。余暇が楽しいよ。有効に使いたいね」と誰かに伝えるのと、

「さ来月はもう大晦日になっちゃうんだね」

とでは、こちら側の態勢造りが大幅に変わる。今年の残り時間は同じであるにもかかわらず、迫りくる事実に対する心構えがまるっきり違ってしまう。

社会的成功者は、大抵の場合、もう大晦日になっちゃう、の方を選択する物事の捉え方をする。

 

シアターシンドロームという言葉が在る。

日本では耳慣れない言葉である。

映画館で作品を鑑賞中、突如誰かが「火事だァッ!!」と叫ぶ。迫真に満ちた切羽詰まった声に、聴いた人々は間違いなく事実だと騒然。

出口に急ぐ人が一人ではなく二人なら、間違いなく狂気に満ちたパニックが巻き起こる。二人、とは複数だからだ。二人でも10人でも危機的状況においては全く同じ数と見なされる。

SNSによる覆面者のデマ情報配信。デマを真実にすり替えることに生きがいを見出す者達が追従する。

デマ情報を既成事実扱いし、さかんにやり取りする。これらの人々がたった2人でも、5人でも、100人でも、上記同様、周囲の者達には同じ数。

皆が噂している。皆が言っている。

同じ数、とは皆という名前の数だ。

皆という数は、世間と言う名前の数でもあり、社会的と言う名前の数でもある。

「国民的スター」という報道。しかるべき機関が、しかるべきアンケート手法で、しかるべき人数の国民にリサーチを試みたのか。?。?。?。

学級内、学校内でのイジメ。これらの仕掛け人は詐欺師の手法と何ら変わらない。わずか数人がグルになり、あたかも大多数が一つの真実を振りかざしているかのような錯覚を創り上げる。

10人の主婦を部屋に入れ、特売商品を見せる。素晴らしい商品は在庫わずか。10人の中に詐欺師が二人いる。値段を上げて買おうと大騒ぎする。二人が競い始める。値段は上がってゆくがチマチマした100~200円程度の値の上がり方。

残りの8人が次々と参戦してゆく。予想通り集団ヒステリー状態となる。

結局、落札者は大して人気のない、ありきたり商品を定価以上の額で購入してしまった。

シアターシンドローム状態での最善策

最初から非常口に最も近い座席に座る習慣をつけていることだ、と言われている。至極当然、誰もが納得。

学校でイジメの対象にされていない自分。だから何もしない。

ではなくて、

もし自分がイジメのターゲットにされたら、された時、いち早く逃げられる非常口、それは誰か、それはどこか。を、事前に考えておく必要がある。

相談できる人、即転校、受け入れてくれる学校の存在。

DVを受け始めるかもしれない、リストラされるかもしれない。もろもろ、我が身に起こるかもしれないし、起こらないかもしれない、不測の事態。予期せぬ災難。スーパーとばっちり。

自分だけには起こらない、と考える若者が急増。全ては貧しき想像力のなせるワザ。彼ら彼女らが、おひとり様、で居られるのは、シアターシンドローム時の対処法を持たずして平然としていられるからだ。

セイフティーネットは他人との申し合わせで作られるものが最強だから。

「困った時は助け合おーね」

嘘でもマジでも約束は約束。相手というものは、居る方がいいのだ。いつの場合でも。目の前にいる、肉声の聞ける、表情の変化を確認出来る相手のことである。

梅干し丼チェーン店がまさかのヒット商品!/ 喫煙者、愛煙家にイチオシ商品!

Title : 人工知能内蔵灰皿シド・スエール2019

 

 

梅干し丼チェーン最大手の『シワシワに歪む屋』が今月発売したオリジナル商品がネットで大変な反響を呼んでいる。既に各大手新聞などでも大きく取り上げらているのでご存知の方も多いはず。

その大人気オリジナル商品とは、何とタバコの煙を吸い込んでしまう灰皿。

実はこの灰皿、灰皿中央寄りにゴムタイヤ製で出来たシドという中年男性の顔が配されており、このシドが喫煙者に向かってきさくに話しかけるという。

「シドは人工知能を内蔵していて喫煙者と自由自在な会話が出来るんですよ。話が弾むうち、やおら喫煙者がタバコを吸い始めるわけです。

そうして、喫煙者がタバコを吸いながら途中で灰皿にタバコを乗せたりするじゃないですか。そこをすかさずシドが吸引してタバコを自分の口元にまで引き寄せ吸い始めてしまうんですよ。一瞬たりとも吸うのを止めません。吐いた煙は灰皿の中に自動的に吸収されてしまいます。

当然、喫煙者はタバコをシドの口から引き抜こうとしますよね。しかしシドはスッポンでもあるわけで、絶対に口からタバコを引き抜くのは無理なんですよ。シドも休むことなく吸い続けるのでかなり苦しいのです。涙目になったりもしますから、それを観ていた喫煙者も流石に蒼ざめてしまいますよね?。

先に会話が弾んで心が通じ合ってます。その相手が苦しんでいる様子を見ていたたまれなくなり、場を離れて屋外に移動しタバコを吸います。これで室内に喫煙者の姿はなくなるという寸法です」

開発から販売にこぎつけるまで42年を要したと梅原社長。シドを養子縁組で向かい入れ4歳から男手一つで育て上げたと言う。

「我が子ですからね。息子を大量生産ラインに乗せるのはためらいがありました。皆さんに喜んで購入して頂き積年の想いが晴れた気がします」と涙ぐむ。

喫煙防止灰皿SIDOは重さ3キロのカルシウム製、夏場冬場には伸縮し昼夜を問わず大きな叫び声を上げるというのも人気の秘密だという。

価格は4500円(脱税有)、全国の店内レジにて購入出来るが、この商品の問い合わせはモールス信号のみ。電話の応対はお断りしているという。

 

 

雑断力 / スムーズな会話力

Title : 身の丈、背丈

 

 

油 (アブラー)「私の身の上話、聞いてくれるかなー」

亜油 (アユ)身の上だよねー。ちゅうことはお肌の話?。英語でゆーとスキンケア・ト。いいよ、お薦めのローションとかアンでしょ?」

「してもいいんだけど、アそれもう古ッ、とか言われると傷ついて立ち直れなくなるからヘタに人とは話したくないよ、そんなお肌の話なんて思いッきり情報関係の話じゃないですかぁ」

亜油「ア、そーそー。どんだけ新しくすりゃ気が済むんだよって話。一新腐乱だよね。一つ新しくなったと思ったら既に腐乱」

「だよね、ダヨネー。今年はその傾向もっと強くなんだってよ。いぬどしだけに腐乱ダンスの戌っちゅー話なんだってサ。今年も茶番な一年になりそうだよ」

亜油「それが分かっててどーゆー心掛けしよーかなって考えたら何も浮かばん。ひざ掛けなら掛けるモン分かるけど、心に何掛けろって話だよ」

「シールドじゃない?。二重パスワード掛けんだよ」

亜油「煮汁パスワード?。良く分かんないけど、絶対本心悟られたらアウトだよね、それだけは言えてる。無理心中に務めてるね日々。アタシの心を覗くのは誰でも無理。自信あんね」

「心よりやっぱルックスで勝負。こないだセクシーな服着てカレシに会ったら思いっきし感服したって言われた。露出度高い服だけで男はマッハ感服、感全服従」

亜油「ソレやりすぎるとヤバイよ。欲情が先か情欲が先に来るかケースバイケースだけど、その気にさせたくない奴には絶対見せんなって話でしょ」

「こないだカレシんちで初めて夜明けのコーヒー飲んだけど、それってさわやかなはずジャン。外がシラジラしてきた頃ジャン。なんでシラジラシイなんて言う権利あんのよって話。バカにしてんの?。だよねー。思いっきし、だよねー」

亜油「人のこと攻撃し過ぎなんだよー。アタシなんか、こないだ友達に寝癖ついてるよって会ったらすぐ言われた。寝る癖がついたらサ、いけないわけ?。夜通し遊んでんのが若いと思ってんだ、タク…」

「そんなヤツまともに相手しなきゃいいんだって。ムキになって相手してる子もいるけど、何?、あくなき戦い?。嘘つけ、料理もしないヤツが何でゴボウのアク抜き出来んだよ。あれ大変なんだよ主婦的にはー」

亜油「うちは料理しない。ゴハンにフリカケが多い」

「うちと逆かー。うちは絶対毎日まかない料理。ゴハンには何も振りかけないし、まかない」

亜油「人それぞれでいいジャン。自分の身の丈にあった生活してりゃいいんだよ。他人とか関係ない」

背丈にあった生活?。天井低いの?」

亜油「あははは笑えるー。身の丈って身長って意味だよ。背丈は背中の長さ」

「アそっか。体重が先か重体が先か、いわゆるコロンブスの卵?。何だろ」

 

自分探しをやめたカモ

Title : 車を運転するカモ

 

 

カモは家路に向かう車を運転しながら物思いにふけっている。先ほどまで彼は渡り鳥達に大人気の湖畔スポットに居た。

アシの繁みには白鳥が8羽ほど、他種はマガモである自分だけだった。

彼は茶褐色の羽毛をやたらと白鳥達に褒め上げられ、最初はからかわれているのではないかといぶかしんだが、どうやら本当のようだと確信すると妙に落ち着かない心持ちになってしまったのだった。

「妙に暗い顔だね、自分が褒められたのに。もっと愉快そうな顔をしなよ」とカモに比較的年齢の近い白鳥が声をかけた。

「いやなに、醜いアヒルの子の話を思い出しちゃってさ。白鳥の子がアヒルの群れに紛れ込んで、お前は自分達とは違うって上から目線されちゃう話をさ」

「ああ、そういう話は世界中どこにだってあるね。勘違いからくる仲間外れ。でも今は勘違いされてなくても仲間外れされるよね」

「そうそう。だから初対面の君達に誉められるとついつい疑っちゃうんだよね。からかわれてるんじゃないかってさ」

「う~ん、そうね。分かる。ボクらがどうして君を手放しで誉めたか分かる?」

「分かんない。どうして?」

「褒められると警戒するでしょ?。現にキミはそうなった。素直に喜べない。そんなキミのリアクションからキミは次のような事柄を考えずにはおれなくなると思われるんだよね。

1⃣ 何か裏があるのではないかと警戒するため神経が研ぎ澄まされる。

2⃣ 自宅の居間で昨日より鏡を見る回数が増える。知り合いにさりげなく自分の容姿について質問する回数も増える。

3⃣ ボク達白鳥のこと、今日のこのひとときを印象深く思い出す。

というわけで、馬鹿にされるより随分と自分探しの手助けになるってわけだよ」

「ほう?。つまり世間で自分探しを続ける人々は褒められたことが少ないって、キミはそう言いたいわけ?」

「そういうこと」

「じゃ、褒められることが多い人ほど自分の事を分かっている人だということ?」

「そうそう、そういうこと。自分探しの真意はね、褒められる要素を自分の中に探す行為なんだ。

探すんじゃなくて、それは自分で作るんだよ。

その方がずっとずっと簡単な行為なんだ」

 

謹慎処分は妥当か / すたれるコトワザ

Title : どうして地の球が地球なの?。惑星が球なら、どうして星は円形絵文字じゃないの?。

 

 

ニッケル良く読む誌は本日3日、生徒への不適切発言により謹慎処分6か月を受けていた相模原熱紙(さがみはらあつし、34才、丸干第二高等学校国語教諭)が教壇に復帰したと報じた。

相模原は授業中、「雨降って地固まる」とコトワザを引用したところ、生徒の中島広大君が「先生、いまは雨降って土砂災害の時代です」と発言。

「さすがは中島、頭がキレるな」

この相模原の言葉が問題となった。中島君の毛髪は硬く、それを担任教師がペーパーナイフ代わりにも出来る、といった意味合いで頭が切れると発言したのは明らかだと、事情を聴いた両親が教育委員会に抗議を申し入れた、というのがコトのいきさつ。

 

「今日、こうして再び皆と勉学に励むことが出来て先生は嬉しい。そこで今日は正しいコトワザについて皆と勉強してみたいと思う。中島、お手柔らかにな(笑)」

「先生、ボクの手を柔らかくしろと言うんですか。髪が硬いと失言したので、今度は柔らかく、ですか」

「違う違う(笑)。……では誰か、チョット変だなと思うコトワザがあったら教えてくれ。…オッ、早いな上島」

「ミイラとりがミイラになる。これ絶対おかしい」

「どうしてだ」

「日本から遠く離れたエジプトですよ。ミイラといえば。ミイラが略奪されている事実を、ほとんどの日本人が知ってることが前提のコトワザですよね、これって。日本人なんだから、ミイラより、干物とりが干物になる、のほうが絶対分かり易いと思う」

「ああそうかぁ~。そうだなぁ~。…確かに。アブ、ハチ取らず、なんていうのもあるが、これだって、アブはハチを食べる、という知識がないと意味合いが通じないコトワザだしな。…特殊な知識を皆が知っている前提でコトワザを作っているのはおかしいと先生も思う。…オ!下島も何かあるのか」

「磯カバ回れって、何でカバが回るんですかね。意味不明なんですけど」

「磯カバじゃなくて、急がば、だ下島。急がば、だ。磯にカバなんていやしないんだ。カバは淡水にいるんだ」

「へぇ。…だとしても、何で回んですかね。猿、回れ、なら分かるけど。猿回しなら日本人は皆知ってますからねー」

「遠回り、の回るだ。回転のことを言ってるんじゃないんだ」

「回り道のことですか。これもおかしい。わざわざ距離伸ばしたルートだとしても、カーブとは限らないじゃないですかー。直線道路は選べないってこと?」

「違うんだそれも。その考え方も根本的に違うんだよ。塗れ手に泡は石鹸のことじゃないし、泣きベソは泣きボクロのあるデベソのことでもないんだ。どうして分かってくれない?。えッ?。」

「だって、英国ってイングランドのことじゃないですか。UKって英国のことですよねー。何ですかイギリスって。どっから出てきたんですかイギリスって言葉。TVのスポ番観てたってイングランドって表記出てるじゃないですかー」と島中敦子。

「ガイコツの頭が何でドクロなのか分かりません。シャレコウベはガイコツの頭?。何?、ドクロとシャレコウベの違いって?。シャレコウベ……神戸がオシャレだってこと?」

「島上、島上ッ!もういい、やめろ。お前達が言ってるのはコトワザじゃない。全く違う話だ」

 

確かに違う話。しかしこのように教育現場から日々上がる悲鳴は、今後も不適切発言のオンパレードを示唆していると言わざるをえない。

 

岩猿を得ない ⇒ 岩猿狙いの猟師が、仕留められず手ぶらで帰ること。猿は岩山に居るものだ、という例え。

セロトニン不足とストレス / 睡眠と日光浴を

 

 

 

「ひとつ聞いてもいいかな」

アンニュイな雰囲気漂わせ、右目にしなだれかかる前髪を掻き上げながらソファから立ち上がる蚊納(かな)。薄暗いリヴィングの窓際まで流れるように進み、ソッとカーテン越し、ビル群に目を落とす彼女。その蒼白い横顔に街の灯が反射して、その頬は深海の人魚さながら。

「何?」

そう呟いて、やっぱりオレはこの女が好きなんだなあと、自身の本音を感じ、少し戸惑った自分を愛おしく感じながら囁く金鳥(かなと)。

「ワタシの親友ね…ストレスで今かなり参ってて…。最近ドカ食いが止まらないんだって…。心配だわ…。最後に太るのが顔だって言うじゃない?。彼女、それが始まっちゃって……」

「ストレスの代償行為だね……。丈夫な胃をしてるんだろうけど、長引くと良くないね。生活習慣病になっちゃってるのかな。外あんまり出ないんじゃない?」

「うん。デスクワークでしょ。残業多いから帰りは深夜だし…」

「休みは寝てるのかな」

「そうみたい…。寝貯めしてるって…」

「うん。寝だめってね、ホントに有効なんだよ。一日徹夜したとするでしょ?。一週間は7だからね、一日6時間の睡眠を取ったことにしたければ、休みの日1日だけ12時間睡眠を取ればそうなるじゃない。睡眠は帳尻合わせが出来るんだよ。1週間おきに計算して分配すれば過労にならなくてすむんだ。つまり、精神的に追い込まれる可能性が低くなるってこと。だから彼女、正しいんじゃない?」

「ふ。流石はお医者様。…の卵…。でもね、私だってストレス溜まってるけどドカ食いしなくても大丈夫。どうしてかしら?」

「セロトニンが失われてないんじゃないかな」

「セロリとニンニクが失われてない?、何言ってるの金鳥(かねと)。私どっちも得意じゃないって知ってるはずよ。食べてなんかいない」

ふッ。聞き間違えてムキになって怒る顔も可愛い…。やっぱりオレはこの女に惚れてるんだな…、と自分の気持ちを改めて噛みしめる。

「セロトニンだ。脳内にあるセ・ロ・ト・ニ・ン。それが不足するとね、健康面に問題が出…

「私が聞き間違えたことがそんなに面白いッ?!。ニヤニヤしちゃって何様なのよッ!、不愉快だわ私帰るッ」

たった30分前まで彼女は隣に居た…。彼女は人間に追われて薄暗がりを横切る蚊のようにプゥ~ンと飛んでいってしまった。つまりオレの腕をすり抜けて行ってしまったんだ……。

 

アレ?、………オレ、大して彼女のこと好きじゃないかも

 

 

◆写真タイトル / 彼女の分まで食べてしまえ!

 

 

 

指紋認証/ 誰でもCSI/ 指紋の種類とは

 

 

 

「仮名子(かなこ)、成人式どうだった。皆と楽しんでこれたのか。お酒飲んできたんだって?。晴れて飲めると気分も楽だろ、はっはっは」

「まあ通過点のひとつにすぎないけど、ケジメっていうか、まあまあだね」

「お前の指紋は何型だっけ?」

「え?。指紋?。何それ。意味分かんない」

「分からない?。じゃ成人式出席は一体何だったのかな?。お土産目当て?」

「お父さん、気は確か?。シラフでそれだと娘やってられないから私」

「お前が気は確かかだ。自分の血液型知らない大人が居るか?。いざ献血って一刻を争う時に大変なことになっちゃうんだぞ。指紋だってソレと同じだろう。何故オレの娘がそんなこと分からないんだ。あ?」

「お父さんの娘だから分からないでしょッ!」と背後から妻(青菜)の罵声。

「オレ1人で作ったわけじゃないぞククク…。そんなことより仮名子、マジメな話、指紋は大きく分けて弓状紋と蹄状紋、渦状…

「だから何?。指紋で献血しないでしょ?。何?、スマホの指紋認証とかのこと言ってる?。指紋盗まれるから管理しろって言いたいの?。管理出来ないけど…、ああ、指紋認証の後、すぐに指紋拭き取れって言いたいのかな?。指紋知ってなきゃいけない意味って何?」と息巻く仮名子。

「指って大事だろ?。なのに指紋は関係なしか。自分の指紋と他人の指紋の区別がつきませんけど何か?、ってか。無責任な奴だなあ、ッたく」

「お父さんのDNAって何型だっけ。ちょっと教えてよ」

「DNA?」

「だってお父さん、人間としての自分て大事でしょ?。血液型よりよっぽど大事かもしんないよDNA。なのに自分のDNAと他人のDNAの区別がつきませんけど何か?、ってか?」

「それは調べたくても調べられないんだよ普通は。薬局にDNAの検査キットが売ってればオレだってすぐに調べるよ、そんなの常識だ。それと指紋は全然話が違うだろう。見えてんだからな指紋は。見りゃ形だって分かるだろ?。そしたら調べれば分かるじゃないか、自分の指紋が何型かって。おおまかだけどな」

「だから調べて何か意味があるのって話なんだってば。やアだア、このヒト!」

「アメリカのハリウッド通りにスターの手形が押してあるだろ。あれには指紋がないんだ。あったら指紋認証で悪用されてしまうからな。そのくらい重大なことなんだ指紋の話は」

「家じゅう皆の指紋だらけだよ。悪用し放題なんじゃない?」

「ちょっと、この粘土にお前の指、押し付けてみてくれ。オレは父親として娘の指紋の型を知っておきたいんだ。成人した記念にな」

「そうなの?」

「ああ。人差し指のだけでいいから」

 

黄色平(いえろへい)は自室に鍵をかけると、自分のゴルフクラブにクッキリ付着した正体不明の指紋と、粘土についた娘の指紋をあらゆる角度から検証し始めた。

「オレのゴルフクラブをこっそり使ってるのは娘じゃない。ニョ-ボの方か!」

 

◆写真タイトル / 疑心暗鬼

 

 

 

カカア天下 / 夫婦の絆 / 漢字が教えるものとは

Title : 記号

 

 

「あの言い方ないでしょー?。あの子泣いてたわよー?。知らないわよー?、アタシ。アナタって情がないのよー。いつもー!」

「情けという字は小さく青いと書くんだね。つまり情が深い男はウツワが小さく青臭いということになる。キミは夫がそんなんでいいんですか」

「アナタ国語の先生じゃないんだからデタラメ言ってばかりいるのは良くないと思うわー!。あの子の口の利き方が悪いっていうんだったらアナタがちゃんと教えてあげればいいじゃないのー。」

「小僧という字は小さな僧侶と書くんだね。つまり自分で悩み、苦しみ、考え、やがて自分なりの真理に行き着くということなんだ。父とはいえ、それを阻害してはならないんだよ」

「アナタ学生の時の国語の成績、さぞかし凄かったんでしょーねー。ご立派だわよー」

「お前は過保護過ぎやしないかね。親という字は立つ木を見ると書くんだよ。分かるかい?。突き放してるように見せかけて、実は見守っているという姿勢が望まれるんじゃないかな?」

「へえー。ホントに望まれるのかしらー?。望という字は月が亡い王様って書くのよねー。つまり闇夜の王様よー。お先真っ暗ねー。だから逆に希望持つのよー。違うー?。違わないわねー?。こーゆーデタラメは言ったモン勝ちなんだからー!」

「お前も私の物言いをするまでになったのかね。いやあ、感慨深いものがあるね。これは1本取られましたね(笑)」

「アタシだってアナタに対抗するために毎日お昼1時間、漢字眺めて知恵しぼってんだからー!。負けてたまるもんですかよー!」

「初耳だね、それは……」

「アナタ、さっき見守る姿勢って言ったわねー。姿勢という字は、次は女が勢いづくって書くんだからー!。つまりカカ天下よ!。早くあの子に謝ってきなさいよー!、早くぅー!」。

 

Now I’m a soldier / Mr. lonely / The letter men

 

 

now I’m soldier,  a lonely soldier

Away from home through no wish of my own

That’s why I’m lonely,  I’m Mr.lonely

I wish that I could go back home

 

Mr.Lonely〈song by , The Letter Men〉

 

 

今のボクは兵士 孤独な兵士

自分自身で望んだわけでもないのに

我が家から遠く離れて

一体何故なんだろう

ボクが孤独な訳は

孤独そのものになってしまっただなんて

どんなに望んでも

家には帰れはしないんだ

 

◆ ミスター・ロンリー〈レターメン、歌〉