Title : 拒食症への招待
ボクからの唐突な電話に少々面食らった親友ではあったが、
今日久々にお茶することに同意、高校時代によく通ったジャズ喫茶サテンドールにて待ち合わせの運びとなった。
相変わらず薄暗い店内。♪ テイク5 が素晴らしい音源で流れている。
ジャズを聴く場所であるはずだが誰も聴いてないので、ボクも5小節目あたりから聴くのを止め、友(以下、トモと記す)との会話に本腰入れることにした。…のではあるが、
店内は大学生達のワワワワー!、ウワッ、オワワワワワーッ?
の熱気帯びたドンチャン・シンバル会話で激しくカシマしいーこと甚だし!。確かに、その方が静寂よりは遥かにマシではあるのだが…。
絶食による体調異変に戦慄したボクは眠れぬ一夜を過ごし、ただでさえ頼りにならないヘナチョコ身体にムチ打って、市外から市内へのバスに乗り込んだという切羽詰まった小旅行な次第。
今日から栄養摂取を始める!。もう絶食は終わり!。金輪際しない!。
とにかく直ちに何が何でも健康な美しくキラめくティーンエイジャーの本来在るべき姿に復帰するのだ!。
トモに会ってノリノリ話せば気分も昂揚、食もすすむに違いない!との考えから1時間半、トモをダシにバスに揺られてコンニチタダイマ、此処まで何とか到達した訳なのである。
懸念されたメマイでブッ倒れーッ!!、を最も恐れていたボクではあるが、それは気力でどうにか回避出来たようだ。
目の前にあるアイスコーヒーのグラスも時折かすむが、それは暗い店内、席立ち座る慌ただしい大学生らの、漆黒で長い影が幾度も壁の間接灯を遮る(さえぎる)からだと自分にムリムリ言い聞かせている愚か者。
「トーストでも頼もうかな。お前は?」とボク。
「オレはいい」。
何度も手を挙げるがウェイターがこちらを見ない。わざわざソッチへ行くのもガヤガヤ大学生溜まりに阻まれ億劫デス。
イライラ、プンプン、そんなこんなしているうち哀れなボクに気づいた大学生のオニーチャン、
「こっち、呼んでるよーッ!」と頼もしきかな大きな声。
「ありがとうございます」と礼を述べるはボクの笑顔。
「別にいいって(笑)」
さりげなく注文終えてひと安心。よしよし、これで遂に栄養分補給の幕は切って落とされましたよと!。