氷の世界

Title : さぁ、感動です。お取りなさい

 

 

冷めている…。非常に冷めている…。これがオリンピック会場かと思える程に、観客席に座す韓国の人々が冷めている…。会場の利便性が悪い、というよりタイミングが悪かったのかもしれない。複雑な国際情勢のただ中にあるわけなのだから、至極当然だと納得する。

冷えている…。あからさまに、冷えている…。世界のジャーナリスト達が選手に対する日本人の在り方、その情けなさを見るにつけ、冷えている。ドンビキ冷え…。日本の選手が金か銀か銅か。あるのはそれだけ。他国のメダリストの名前さえ関心なく、あるのは不可解な感動病。首をかしげる海外ジャーナリスト達に説明してあげたい気もしたりする…。寒い…。同胞でも寒いと感じたりする…。

冷静に警戒しながらも、冷めている…。冷め果てている…。日本人選手達が…。何を書くか得体の知れない自国メディアと国民に対して、明らかにクールミントである。インタビュー時、眼に輝きがない。明らかに口が重く、その表情の片隅には虚しさもにじむ。良い結果を出した選手達もそれは変わらない。他国の選手達と明らかに対照的だ。本当の素顔は身内だけになった時に花開くのでしょう。

 

「もう一度、メダルの感触、聞かせて下さい。どんなですか !!」

 

こんなものはインタビューではない。大人の視聴者なら、そんなことが聞きたいのではない。

 

ボクも寒い。寒いよォーッ!!。

毎日 吹雪、吹雪、 氷の世界ーッ!! 〈井上陽水 / 氷の世界より抜粋〉

参加だけでは無意味? / 感動の仕方にも流行りがある

Title : 立ち尽くす人

 

 

日本で初めて開催された東京オリンピック。以降、“ オリンピックは参加することに意義がある ” というキャッチフレーズが日本社会に多大な説得力を持ち浸透した時期があった。

今は死語だ。口にするのもタブー感あり。誰も賛同しない。共感しない。成績が悪ければ無意味。期待を裏切る選手は残念な人。

再び日本でオリンピックが開催される。前回開催時より僅かな歳月しか流れていないはず…なのだが…。

人の価値観は容易く変わる。僅か1世代をまたぐこともなく。良い方に変わるべきものであって欲しいと願うは共通。しかしながら、残念ながら、悪くなっていると感じる人の方が断然多い。それを許すのは脆弱な社会機構。

まず最初にいい加減な社会機構が人を疲弊させ気力を奪う。人はいい加減な社会機構に容易く慣れ、やがて道を失い享楽的な、刹那的な快楽に身を委ね眠りにつく。

何も考えないように心がけながら。

それもやがて慣れる。やり過ごす時間を、やり過ごせるようになる。どうしても出来ない人は壊れかけ、或いは壊れる。

手負いのケモノが一番恐ろしい。そんなことにさえ関心を持たず無防備な日常が続く。

 

そしてある日突然、何かが唐突に起きる。

 

故永六輔氏に捧ぐ

Title : 像さん象さん、どうしたの?

 

 

TV局関係者で、近頃は本当の意味での社会ご意見番たる重鎮が居なくなった、人材不足は否めない、と嘆く方々がいる。まさしくその通り。

TV創世期からその存在に心血を注いだ一人、故永六輔氏。彼こそミスターTVであり、昭和TV史そのものであった。彼こそが、本当の意味での社会ご意見番だったと思うし、重鎮を絵に描いたような人だった。

彼は視聴者に決して迎合せず、代わりに、たとえ嫌われようとも人々を正しい世界へ導こうと必死だった。

晩年、彼はTV業界に失望しその世界を去った。

重鎮が居なくなったのではない気がする。社会ご意見番たる重鎮が居なくなったのではない気がする。

TVがシャットアウトしたのではないか。

音楽と力

Title : スズメバチ

 

 

最強の黒人グループを次々に輩出したモータウン・サウンド。甘くロマンティックな旋律ゆえ、かろうじて社会的存続を許された。ただの恋愛ソングだから。

我が身我が世の存続を賭けスパークする強烈な自己主張、ラップに辿り着くまで、彼らは長き道のりを耐えた。

ヒットするか否か、儲かるか否か。それはいついかなる時代もレコード会社の仕事。アーティストやミュージシャンは事あるごとにそれとぶつかるだけ。最初から迎合など有り得ない。音楽は我が身の化身、ツアーを営業などとは絶対に呼ばないし、ましてやコンサートを商売などと言ったりはしない。

不思議でならないのは、冗談交じりに何故自身の存在を愚弄するのだろうか。攻撃への保身なのだろうか。

歌手が売れることしか考えていない。そんなことは有り得ない。有り得るはずがない。自分が紡いだ言葉の主張が皆の物なら、浸透するだろうと確信するだけだ。一見前者と後者は似ている。そこがゴマカシの腕の振るいどころだろう。

Lose youeself EMINEM

Title : オレをエビフライにしてくれぇ!!

 

 

He opens his mouth,    but the words won’t come out

he’s choking how,   everybody’s joking now

The clock’s run out,   time’s up over, bloah!

Snap back to rearity,   Oh there goes gravity

 

You only get one shot,   do not miss your chance to blow

 

◆ Lose yourself     EMINEM

 

奴ァー口開けたが 言葉が出たくないってよ

何で自業自得やってんだ ? アイツ

何今の、これってジョークかよ

時計の二つの針が回ってんぜ

ハイお時間、バッカじゃねぇの!

 

ピシャッと我に返りゃ 流れるこの重てぇ空気

 

一撃でキメろよ オマエ

ガツンとキメる1度っきりのチャンスを 逃すんじゃねぇぞ

 

 

貧困から這い出そうとラップに全てをかける男。白人の自分以外は全て黒人の溜まり場でラップ勝負に出るがさんざん。言いたいことも何一つ言えず嘲笑の的。

チャンスなんてそう何度も貰えるわけではない。夢破れても何度でも立て直せる、そんな境遇なら御の字。立て直すチャンスさえ絶望的だという崖っぷちの人々がいる。膨大な数。そんな人々を激烈に突き動かし力を与えるエミネム。空恐ろしい才能の持ち主だ。

崖っぷちの黒人達が白人に絶大な支持を与え認める。そんな凄まじい奇跡が稀に起こる。エミネムの前、それはプレスリーだった。

美顔クリニック顧客に朗報!新方式導入

Title : ビギン、美顔、ビガン

 

 

2018年2月に念願の東京掌権取引所に上場を果たしたカリスマ・クリニック『栗肉』坂下社長が7日、日比谷公園入口脇で気温マイナス1度の中、報道陣300名を集め会見を行った。

上場挨拶の他、新しい美顔方式を公開。新方式は従来の人工知能搭載ハンズの使用を全面撤廃し、全て天然知能搭載ハンズに順次切り替えてゆくと発表、報道陣を驚かせた。

天然知能とは周知の通り人間。人工知能搭載ハンズは鉄製だが、今後は人肌となるわけで、「お客様が違和感を感じるのではないかという懸念が課題ですね。これまでのヒンヤリ感に慣れた方々が温もりのあるマッサージを受け入れて下さるかどうか、社運を賭けた挑戦と言えます」

『ニッケルよく噛む12月8日経済コラム』より抜粋

アルマーニに負け犬の遠吠え

Title : チャンプ

 

 

勝ち組のドヤ顔、情け容赦ないブルジョワ勝利宣言、なのに大げさな制服アルマーニ物議。そんなもの資本主義国家では負け犬の遠吠え。勝てば官軍。それが現実。揺るぎなき事実。道徳や常識、こんな時にだけ都合よく振りかざすなど卑怯もいいところだ。

例えばオレオレ詐欺、振り込め詐欺。毎年の被害総額ハンパなし。それは世間に出ることのない虎の子。つまりは消費社会のソト。卑劣な悪人にはアブク銭。つまりは消費しまくり資本主義社会に大貢献。どちらが国家のためになる。

という過酷で非情な資本主義。民主主義より資本主義の方が順列は先。そう在るべきではないが事実は事実。現状は現況。

だからこそ人としての品格が重大で重要。資本主義社会の中に在って道義が道理が道徳がどれほど強靭に維持出来るか。

無責任に言葉を破壊し、金儲けの話に目の色変え、人を誹謗中傷し、さげずみをお笑いと呼び、強きを助け弱きをくじく。

そんな社会が勝ち組の高笑いをたしなめたところで空しい半ベソ。天にツバ吐き自分に返る。至極当然でアクビもののアルマーニ騒動。

ぼんやりと思うアレコレ

Title : 怪気炎比べ

 

 

ビートルズ解散後、呆然とした日々を過ごしていたリンゴ・スターの胸は再び突然の熱き炎に包まれることになる。グラムロックなるニューウェイブ引っ下げてTレックスが4人のカブトムシを失った失意のミュージックー・シーンに鳴り物入りで登場したからだ。

ビートルズ旋風が巻き起こり始めた当初のあの熱狂と興奮。あの時との違い、それはリンゴのいる場所。彼はステージでドラミングする代わりに、ヒステリックに絶叫する女性観客に揉まれながら最前列でステージを見上げ記録映画用カメラを回していたのだった。

名曲『テレグラム・サム』『ゲット・イット・オン』『メタル・グルー』。まるで疾風の如く駆け抜けていったTレックスのダミ声ボーカル、マーク・ボラン。

本物は本物を即座に見抜き即座に反応した。新しき幕開けに熱狂した。

 

マーク・ボラン、そしてジョン・レノンのあまりに早過ぎた死。

ジョン・レノン射殺の速報をブルースプリング・スティーンは自身のコンサート真っ最中、ステージ上で聴く。聴衆達にもすさまじい衝撃が走つた。

彼は「こんな夜に眠れるか !!」と絶叫し夜明けまでコンサートを続けた。

ジョンとジョージを失ったポールはグラミー賞のステージで『ヘイ・ジュード』を熱唱した。この楽曲の正確な作詞者と作曲者は未だにハッキリしない。

ジョンもポールも自分が作ったと譲らなかった。どちらが作詞しどちらが作曲したのか本人達さえ記憶が定かでないビートルズ・ナンバーは多い。

ジャムセッションしながら自然に曲が完成してゆくスタイルが多かった彼らには著作権や所有権のことなど微塵も頭になかったからだ。

有名になりたいから、と言ってクリエイターを目指し一流になった人を知らない。大多数を愚弄する人に才能などありはしない。

 

今年も例年通りにパブロフの戌

Title : 何見て跳ねる

 

 

パブロフの犬言葉が社会に定着して久しい。知人他人と話している時、相手の発言に対して、

「本当ですか」「マジ?」「ホントに?」

と、別段相手の言葉を疑っているわけでもないのに、ただ条件反射でそう返す。本来なら疑われた相手は怒るわけだが、この「マジで?」は条件反射の無意味な発言であると広く社会に知れ渡っているので、別段誰ァれも怒ったりはしない。

このような無意味反射言葉は1つ2つなら問題ないかもしれないが、デタラメ発言が頻発して口から発せられるようになると、それはひとつの深刻なヤマイかもしれない。

例えば、マジ?を連発、更にマジ+ウザいで、マジウゼぇ~。そんなラインナップがゴロゴロ、マジヤベぇー、だの、マジッすか、ホントすか、ダメッすか、イイッすか、ドウッすか。それはアリなんで。アリナシッすか。

数え上げれば限(きり)がないが、それがどーした、ハヤリ言葉なだけでしょーが、と言われるかもしれない。しかし、ちょっとしたハヤリのお遊びですよ、と軽く考えているかもしれないが事態は異様に深刻。

何故なら、通常相手と会話している時、大人は相手の発言を聞きながら、同時にこちらが返すべき返答内容を組み立てている。間に合わない場合は相手に質問をして時間稼ぎをし、その間に自分の言うべき内容を組み立てる。使うべき言葉も。

ところが意味なしパブロフ言葉がいったん我が身に定着し習慣化されてしまうと、既に物を考えない脳が出来上がってしまう。

物を考えずにオウム返しする。

と脳が思い込んでしまっているので、もはや本当に考えなければならない局面に遭遇しても、既に使い物にならない脳があるばかりなので、てんで、全く、サッパリお手上げになってしまうというわけだ。

最近、ハヤリだというそれだけで「〇〇〇とは思いますけど」という物言いをする人が多い。「〇〇〇だと思います」ではなく、とは。「〇〇〇だとは思いますが、▽▽▽という思いもあります」という時に使うのがだとはだから、言われたこっちは、

それじゃ何?。他にホントは言いたい意見があるわけね、と思うわけで、相手に「でも何?。もう一つの方を聞かせてよ」と尋ねると、

は? 意味不明~。

とキョトン顔されてしまう。つまりは意味も分からないままに使っているのだった。

パブロフ言葉は言いやすい。ゴロがいい。総じて癖になりやすい。疲れないらしい。

そんなことと引き換えに自分の脳を休眠させ再起不能へと導いていることにさえ気が付かないとは…。泣ける。

長い期間寝たきりの人は医者が一目見ればすぐに分かるそうだ。年齢に関係なく筋肉がすっかり退化してしまっているからだとか。

運動大嫌いで筋肉なし、という普通の人々とは全く違う肉の形状らしい。脳にも同じことが言える。言えてしまうので戦慄が走る。見えないから思いもよらないだけ。

物をつきつめて考えることが出来なくなった人同士の間に見の在る会話は成立しない。思考がなければコミュニケーションの発展はない。

考えることが出来ない人同士の会話は入手した情報を代わる代わる述べ合う、或いは情報の実践しどうなったか結果報告をする。それでオシマイ。建設的な進行にならずブツンと途切れる。ゆえに長時間の会話が成立しない。すると非常につまらない。楽しくないと感じる。だったら独りで何かやった方が数千倍楽しい。

そう感じる人が巷に溢れ出し、結局今のご時世になった。

 

知らぬが仏。この言葉が脳あるタカ達のパブロフ言葉だと知る必要がある。彼らのパブロフ言葉は考え抜かれた思惑に裏打ちされており、単なる条件反射ではなく、獲物を仕留めるたびに使われる意味ある口癖だ。しかも、それらは口から発せられることはない。

腹の中でほくそえむサイレント・パブロフ。

マジ怖ぇぇ…。