園児の新築祝い / お家にも黒帯

 

真夏の白昼夢か。モズが狙っていた大きなキリギリスの横取りに成功したボクは覚えたてのスキップで有頂天凱旋するも、何故か母の機嫌はヒッジョーに悪く、そのキリギリスにウチの敷居を跨がせ(またがせ)るわけにはいかないのだと!。逃がしてこいと頭ごなしに叱責され、口答えを試みようとしたが母の凄まじき剣幕に成すすべ無し。玄関口で呆然と立ち尽くす可哀そうで幼気な(いたいけな)このボク。何故母は激憤していたのか。これより3時間ほど前、今ボクが立っているこの場所、つまり玄関であるやり取りがあった。ウチの並びで2~3軒先のオバサンが、自慢の家庭菜園にて手塩にかけ育て上げたイチゴのお裾分け分けに来たのだ。やり取りは以下の通り。

「今年はあんまり沢山は採れなかったんですけどもネ、よろしければ召し上がって下さいな」

「まあ美味しそうねえーッ!!。去年も頂いたのに又こんなァーッ!どうしましょう!」

優しくて人当たりの良いオバサンと特にそんなことはない母が玄関でやり取りしているところへボクがゆらああー、と登場。

「アラ、▽▽ちゃん!。イチゴ好きかしら!。これネー、甘くて美味しいよ!」

「知ってる。いつも畑で食べてるから」

「畑?。畑ってウチの畑のこと?」

「そう。いつもイッパイ食べてる」

母の面目は丸潰れとなり、オバサンのボクに対する信頼は地に落ち、頂き物のイチゴは一粒たりともボクの口に入ることはなく、捕獲された怒りにムウムウと羽根震わせるキリギリスもまた、我が家に入ることはなかった。昼日向、いつまでも未練たらしくカゴのキリギリスを見つめていたボクではあったが、遂に観念、仕方なく垣根をはさんだ隣家の庭花壇めがけ、キリギリスを泣きの涙で弱弱しく放出したのであった。ところが、それを家の窓からたまたま見ていた同い年くらいの男子幼児、鳴り物入りで家から登場、スタスタスタ真っすぐ花壇にまで歩み寄り、土上のキリギリスをサッと片手で捕まえてしまったのである。アアッ!!。

「採るんじゃないッ、それはボクのだ、返せッ!」

「うちの庭にいたからウチのだよーだ!」

そう捨て台詞を吐き捨てると、その者はプイッ!っと背を向けサッサと家の中に収納されてしまった。なななな、何ということが起きたのだ!!。こんなの全く許せない!!、とんでもないことである!!。怒髪天を突いたボクは金切り声を発しながら垣根にまたぎ乗り、その上で垣根に引っ掛かった日向干しザブトンの様にしばし静止、それから垣根を乗り越えるというよりはやや傾いただけ、変な間があって向こうへドスリと落ちた。クッション性を考え、意図的に他より丈の高い草むら上へ落下したのではあるが、ボクの背丈より長い深緑の葉縁はカミソリの状になっていて、アアラ大変!、起き上がったマヌケ小猿の顔は何か所も切れて血まみれであった。

巻き上げたキリギリスをカゴに収納していた隣家幼児は、突如パムパムパムとコブシで自宅窓ガラス叩く鈍い音にハッと顔をもたげる!。ベランダ窓サッシに血まみれ顔の幼児が両手を高く掲げ、コブシを打ち付けながら何やら喚き(わめき)散らしているではないか!。恐れをなした彼はたちまち奥の部屋へと姿をくらます。残された化け物は尚も泣き狂いながらガラス窓叩き続けはするのだが、いつまで経とうが応える者なし。どうやら中にいるのは留守番小僧だけだったようだ。

憤懣(ふんまん)やるかたないボクは他人の庭隅、ひとしきり仁王立ちのまま青空見上げ泣き叫んでいたのだが、そのうち家壁側面の日陰辺り、そっと置かれた見かけないタイプのバケツを発見、同時にピタリと泣き止んだ。しかし余韻のエッエッ、とのシャクリ上げは糸引きながら、精魂尽き果てふらふらと目指すはバケツ、そこに在る。覗き込んでみると真っ黒な液体がドップン入っている。それを塗りたくる為の刷毛も入っている。血まみれ、鼻水、ヨダレまみれのイカレ妖精が、ゆっくりと重たい刷毛を引き出してみる。それはドロォッとした物で、液体というより泥のよう。太陽光が当たるとギラギラッと鈍い光沢を放ち、ボトンボトンとバケツ底に落下する。何という面白い物体であろうか!。

隣家、すなわちこの家。実は新築も新築、出来立てのホヤホヤ。あとは家前私道にコールタールを塗るばかりの状態だった。モダンで洒落た造り。さぞかし家族の夢と憧れが込められている事だろう。

淡いピンクに塗り上げられた家壁にキッパリとコールタールを塗り始める妖精。なにせ幼稚園児、身の丈は知れている。だから塗れるのは下の部分だけだ。ボクは丹念に一筆一筆、真心を込めて塗り進んでいった。そうするうち、何か自分がひどく大人になった気分に襲われ、自ら感極まり、途中、流れ落ちる涙で壁が見えなくなったほどだ!。

キリギリスの魅力など、この愉快さに比べればラムネ一粒の価値もない。途方もなく盛り上がるこの充実感!!。これが刷毛、これが絵具というものか!!。これこそが絵を描くということなのか!!。新品マッサラ一戸建ての壁面、その第2面を快進撃中の悪魔、運良く帰宅したヤツの母親によって捕獲される。その母親の眼前、気の遠くなる様な恐ろしい全貌が明らかになった時、バケツのコールタールはほとんど底をつきかけていた。ボクの園児制服の真っ白な前掛けは墨汁浴びて真っ黒。その実それは墨汁より全然重い。洗濯など到底不可能なその汚れ、そして鼻を衝く強烈なタール臭!。

夕刻、隣家のアルジとその仲間が数人、我が家へ怒鳴り込んで来た。凄まじい剣幕で両親を罵倒している。アルジは体育の先生で柔道黒帯だったとか。それらの声が2階で熟睡しているボクの所にまで聞こえてきていたはずだけど?。

そんなことでは起きないなあ~。今日はお仕事一杯したもん。

 

◆写真タイトル / いかに居ます父母 つつがなしや友がき

 

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ダイエットの天敵 / 問題解決のコツ

 

「ダイエットしてっとツクヅク実感しちゃいますよぅ。カロリー低い食べモンて味が無い。味気ないわよぅ。そういうのって毎日食べるのホボ不可能。吐き気しちゃう時さえあるよぅ。したらソレ、拷問と同じだよぅ。ソッコク拒絶反応」

「ひゃあ!言えてるッて!。ダイエットがしたいんだッてウチラ!。自分で自分に拷問じゃないんだッてば、マゾじゃないんだからッて話!」

「そうなんだよぅ。てか、思わない?。キノコがノンカロリーっていうからキノコづくしでいこーと思うジャン。んで、薄味で煮るんだよぅ。油厳禁だっつぅことで。したら、煮汁が浸み込んでくれるフレンズってシイタケだけなんだよぅ。エノキもシメジもマイタケも味染みてくんないんだよぅ。頑固に味つかないよぅッ」

「だからシイタケがキノコキングなんだッて!。キノコの味自体も飽きまくる味なんだッて!。アタシなんかジャンクフードで太ったクチだから真逆の味無しキノコじゃダイエットなんて1日も続かないッて」

「何で油使ったオカズばっかなんだろぅねぇ~、惣菜。フライと天ぷら、炒め物ばっかだよぅ。サッパシ系は寿司とか炊き込みで油なしだけど冷えてちゃイマイチ美味しくないんだよぅ。ギョーザ、ラーメン、アッタシの好きなもん脂っこいのばっか、昔の日本人は油あんまし摂らなかったから痩せてたってホント?」

「炭水化物は太るからってゴハン全然食べないでオカズだけにしても、全然痩せなかったんだよぅ!、何で?」

「アタシの知り合いは粉モンしか食べなくて二ヶ月で3キロ痩せたんだッて!」

「粉モンてタコ焼き、お好み焼き、モンジャ?。アレにも天かす入れんジャン」

「天カスいれちゃお終いなんだッて!。痩せた代わりに便秘だッて!。潤滑油なしだとヤッパ駄目らしーんジャン。野菜不足でもっと便秘。粉モン安上がりだけど病気になるんじゃ意味ないッて!。食べてすぐ吐くのも胃酸で歯がボロボロになるって脅されて止めたんだ、二重債務って話なんだッて!」

「結局イロイロやった結果、痩せないでいいジャンて結論だよぅ」

「心が沈静化すっと、そーなるわな!。しばらくすっと、またまたダイエットしたくなるんだッて!。アレってダイエット力の充電だったんだって話!」

「日本人の味覚って世界一って話なんだよぅ。海苔の味、分かんない外国人イッパイいるって聞いたよぅ。アレってマジなん?」

「外国によるんだッて!。けど、痩せりゃいいってモンでもないッて!。人それぞれの骨格で肉付き変わるらしーんだッて!。平均体重に惑わされちゃダメだって聞いたんだッて!。あくまで見た目、体重よか見た目で判断した方がいいらしいんだッて!」

「じゃ、アタシの今の見た目どう?」

「ウーン」

「どーなんだよぅ」

「太っては見えない、とは思う。したら、アタシは?」

「太っては見えない」

「じゃダイエット必要ないジャン、ウチラ」

「とりあえずは」

 

 

ノアの方舟 / 遺伝子を守り抜いたノア

かつて “ 蠅 ” という怪奇小説があった。このジョルジ・ランジュラン原作の小説ストーリーの想像力は驚愕に値する。その内容の特異性は大いに魅力的、何度も映画化されていて、近年では20世紀フォックスの “ ザ・フライ ” が有名、観た人も多いのでは?。物質をAからにBに瞬間移動させる実験にのめりこみ、遂にはそのテレポートに成功。世の常として、よせばいいのに自身を実験モルモットとして人間瞬間移動を試みる博士。完全犯罪ないのと同じ、テレポッドなる電送機に1匹のハエが混入したことに気づかず転送開始。結果、人間テレポートは博士の思惑通り成功するが、テレポッドから出てきた博士は化け物。人間とハエとが遺伝子レベルで結合してしまったからだ。

ジキル博士とハイド氏(ロバート・ルイス・スティーブンソン原作)。この怪奇小説もまたリメイク映画繰り返す王道作品。人間に内在する善と悪の部分を完全に分離させたのち、悪の部分だけを取り除き争いなき未来を創世させることを夢見た博士。あるいは、夜な夜な交互に善のジキルと悪のハイドに変身した自身を楽しむだけの異常者だったか真相定かではないものの、案の定その結末もまた悲惨極まりなし。映画ファンならずとも周知の事実。

ハエが混入してしまう。善と悪とを分離させる薬が効かなくなってしまう。いずれの作品も人間のおごりに対する戒め(いましめ)が物語の根底に脈々と息づく。現在という時代を生きているうち、どちらの作品も単なる夢物語で実現不能、などとは胸を張って言い切れなくなってしまう。その方が小説より遥かに恐ろしい。のであるが、実際には誰も深刻には怯えていない。まさか。そこまでは。ねえ。だからだ。

ボクにとって、呪いで蘇るミイラ男はあまり恐ろしくない。何故ならミイラは体重があまりにも軽いからである。体格的に小さいからである。ボクにとって半魚人はあまり恐ろしくない。ライオンやホオジロザメ同様、大変に危険で脅威ではあるが、半魚人という猛獣の1種類だと考えることが出来るからだ。その点ではドラキュラもボクにとってはさほど恐い存在ではない。そういう猛獣の一種であると考えれば簡単に理解できるからだ。(実際に目の前で見たら恐いかも)。

フランケンシュタインはちょっと怖い。博士が死体をつなぎ合わせ、でっち上げた人間という名の肉塊に新たなる命を吹き込む。常軌逸した実験にとりつかれ、世にも醜悪な怪物を作り出してしまう罪。これは自然発生した生命体、すなわち既成猛獣ではなく全くありえない存在なのだから、恐い。こちらもまた、あるまじき神への冒涜、罪深き人間のおごりへの戒めが悲劇のラストで色濃く浮き彫りとなる。

旧約聖書に登場する “ バベルの塔” のエピソードもまた、おごり高ぶってしまった人間に対し神エホバが怒りの鉄槌を下すという戒め。神が住む天空にまで続く階段を建設しよう、我々にはその力が在る!、と騒ぎ出す人間達。驚くエホバ。人間が神に成り代わろうというのか。

レンガが足りない持ってきてくれ、と塔の上から声。あいよ、と下からカナヅチ。つまり言語不能に陥る人間。互いの言葉が全く通じなくなってしまった。そうなれば最早デタラメ、トンチンカン。何一つ事は進行しなくなり、バベルの塔建造は一気に中止へと追い込まれてしまう。エホバがそうさせたのだ。

核弾頭の完成、遺伝子組み換え成功、人類の快進撃は着々進む。より明るい未来、より快適な暮らしを目指してノアの方舟(はこぶね)、地球号は進む、と誰かが言った。

その舟、乗舟を断る権利はありますか。ノアって誰ぁれ?。

 

◆写真タイトル / パンドラの箱

 

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筋肉痛の小猿 (前編) / 湿布なき遠征

信じられぬほど有頂天な単独パレードで帰宅した小学3年生と思われる小猿が一匹、自室机にランドセル投げ出し、引き出しから何やらふにゃふにゃのパンフレットを大事そうに取り出す。畳にアグラ座り、猫背気味にして食い入るように見入っている後ろ姿。よくよく見るとそれはボク。へえ、こんな小っちゃかったのかあ。なるほどねぇ…。

何見てんの?。ああそうか。昆虫採集セット、夏休みセールのパンフね。鼻の下伸ばして半ば恍惚で見入ってるねぇ…。明日はご学友一同、誰の身にも降りかかる奇跡、その名も夏休み!。その初日!。

日頃のやりたい放題、その罰なのか。授業中、将来の夢を担任教師に尋ねられたこのサルは、僅かにもったいぶって「昆虫博士」と返答。驚いた教師は「博士の意味、分かる?」「白い服を着てる」「先生の母親も白い服よく着てるけど博士じゃないぞ」「嘘つき博士だよ」などと減らず口ばかりのモンキイ、それゆえの天罰だったのか…。夏休み初日、目覚めてみれば左首筋を寝違え激痛!。そぉッと動けば大丈夫…。ウ……。だけどほんの僅か、神経に刺激を与えられたが最後、

キーン !! !! !! !! !!

眼の前真っ白、自分自身が銀河系を突き抜ける光速ロケット、文字通り本当に全身ピーン!! と直立鉛筆1本状態、その哀れなペンシルに冗談でも誇張でもなく電気ショック10万ボルト(想像) !!。それは幾度か経験済み。さわやかな朝に1人どしゃぶり雨ん中。あー雨ん中ったら雨ん中。行くのやめようかな、との自問に即答、行くと答える猿心。やっぱり行くのかタワケ。バスに乗って5停留所。そんな遠くまで遠征する?、首に爆弾抱えてサ。やだやだ行く行く、行っちゃうんだからーッ!!。

トーストをかじる時、人は結構な力をアゴに与えていることをご存知か。カリッとヒトクチごとにヒェーイのけぞり!!。このトーストかじり続ける猿をば見れば、よおーく分かる。しかし、このような状況下に於いて人は無理矢理トーストを食べ続けたりはしないものである。何故、何度も激痛に飛び上がりながら、決して食べることをやめようとしないのか。何故握った手の跡がトーストに刻印されても、ソレを手放そうとしないのか。そのとびきり滑稽なサル・パフォーマンスを目の前で目撃している母も母であろう。全く笑わず、何か奇異な物体と遭遇したかのような眼差しで我が子を観察しているなどと。

「バス揺れるわよ。大変よ。知らないわよ」「平気」

平気ではなかった。ボクは大人になった今でさえ、このような惨劇を目撃したことは1度もない。ラッシュアワーを完全に終えた時間帯、バスには乗客1人。オカッパ頭のチビ、その顔半分が座席最後尾の左端、ワインレッドの背もたれからチラチラと見え隠れしている…。ボクだ。アンポンタンな頭でここが一番刺激が少ないと考えたのだろうが完全に間違った選択だ。むしろ逆なのだよソコは。その席は。一番前の席に移るべ…バスが発車。駄目だもう間に合わない。何てこった。

無人に等しいせいか、運転手は非常に荒い運転。しかも激しく車体がバウンドする路を走行?、或いはワザと車体を揺らす運転?。このバスはマウンテンバイクなのかと疑うほどの激しい連続バウンド!!。1秒2回のバウンドの度、サルはバス天井を突き破って青空発射せんばかりの衝撃!!。何とか自身の身体を固定せんと両腕に全身全霊の圧力加える無駄な抵抗!!。徒労!!。ひと駅目を通過する段階で、既にチビサルの顔は手負いの茹でダコみたいに真っ赤っ赤!!、冷や汗ぐっしょり、目は血走って息も絶え絶え、せめてバス停で乗客停車でもしてくれれば息もつけようが、生憎次なる駅にも人影は無し!!。

運転手は見た。バックミラー越し、上下の歯を砕かんばかりに食いしばり、オノレの身体ロケット発射を阻止せんと、と崖っぷちで声なき絶叫繰り返す、顔シワクチャまみれの謎がナゾ呼ぶサルの姿!!。一体何だアレは…。バネ仕掛けのサルのオモチャは…。

 

◆写真タイトル / 歌うお子様

 

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筋肉痛の小猿 (後編) / 社会ぐるみで子供保護

わずか十数分がこれ程までに長く感じられようとは!。5階建て専門図書販売店入口、妙に人目を引くキテレツ極まりない動作の児童。その者が今、意を決したように入館するサマが監視カメラに映し出される。その者は奥の階段前で棒立ちとなり、しばし熟考の末、エレベーター前へと移動。極端なスローモーション動画で上へ参りますボタンを押す。

いや違う。そっと触れる。やがてエレベーターの扉が開き、乗り込もうとする真横の大人に怯えたのか僅かに身をかわす気配を見せた直後、ピイイイイーン!と弓なりになり、それは倒れ込むかの様にエレベーターの中へと失せた。

監視カメラを観ていた警備員は身を乗り出す。今のは一体何だったのかと。まるでスローモーション・パントマイムのようなあの動き!。何台あるかは知らないが、彼の眼は2、3、4、5階、各監視カメラのモニター映像を行きつ戻りつ泳ぎ回ったに違いない。

居た!。児童は書物売り場ではなく、化石標本だの昆虫標本だのが飾られた壁面前に棒立ち。後ろ姿だけでも如何に真剣に眺めているかが窺い(うかがい)知れる。児童は壁上面を決して見上げようとはせず、不自然なほどのナメクジ移動で標本販売ショーケースを目指しているようだ。何というジレったさであろう!。座している警備員はモニター前で激しく苛立ちの貧乏ユスリ。

そうだった。この時のショーケースの展示光景は未だにボクの心奥、ひときわダイヤモンドのカケラの様に、眩しき輝きを放つのだ。宝石のカーテンが頭上の風にたなびく真夏の正午、雑木林の木漏れ日を全身に施したボクが汗まみれの震える手で、今まさに梢のクワガタムシを捕獲しようとしているところ!。

アア!ボクが生まれてきた意味はこれなんだ!。感極まって一歩踏み出すその刹那、またも首筋襲う10万ボルト電流に小猿の夢想は粉みじんに打ち砕かれ、モニター画面には再びエビ反る児童の悲惨なひきつけが!。

だがその姿を彼は見逃した。警備員の目は確かに大きく見開かれてはいるのだが、その視線の延長線はヘンテコリンな虫児童の右5メートル、背広の男が書物を素早く手下げ袋に入れる瞬間を目撃したのだ。

度重なる責め苦にもめげず、ボクは標本キットを夢見るように眺め続けていた。これを用いて採集した昆虫の標本をジックリと製作している自身の姿を想像し、桃源郷に酔う!、酔う!、酔う!。

「万引きッ!、現行犯だッ!!」

突如背後で聞こえた緊迫音にたちまち10万ボルトのスイッチが入る!!。しかも不意をつかれての仰天だけに、激痛は本日最大の18~20万ボルトにも達している!! (本人推定)。あまりの耐えがたき激痛に満面シワクチャ、歯を食いしばり悶絶寸前の修羅姿に驚いた女子店員、

「ボクッ!!、どうかしたのッ!!」

ショーケースに突っ伏す様にすがりつき、はあはあはあ!!、と断末魔にも似た熱い吐息でガラス曇らせる小猿!。その様子に店員はただならぬ危険を察知したのであろう、万引き犯を事務所に連行する警備員に

「上の階のお医者さん、呼んできて下さいッ」

大丈夫ッ?、ボクどうしたのッ?!。そんな声を肩越しに何度も何度も聞きながらグッタリとショーケースにかじりつき、首筋への刺激を必死にディフェンスしているボクの脳裏に浮かんだセリフ。

誰かが万引き虫を……採集したぁぁぁぁ…………

 

◆写真タイトル / 曇り日下り坂

 

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時代のインデックス / 流行りはすぐに化石 / いつごろかバレバレ

Title : 時代の大河を行く!

 

 

 

「今は “ ビバヒル ( ビバリーヒルズ高校白書 ) ” がマイブームなんですヨゥ~」

「へぇ。我々オジサン世代のドラマじゃないの。オレも観てたな~、流行りで」

「デイビッド坊やが好きなんでスゥ~。シルバーピアスがチョー似合ってて~」

 

「あれね。ピアスするって言ったらプロデューサーに反対されたんだってね。

あとになって流行りがすたれた時カッコ悪いから止めた方がいいって。

あん時、男のピアスが大流行りだったんだよアメリカ。

忠告当たっちゃったね~見事に」

 

「でも、寅さん ( 映画 / 男はつらいよ ) なんて思いっきり時代遅れなシーンばっかじゃないですカァ~。

お茶の間とか黒電話とカァ~」

 

「それは違う話だね。寅さんイコール昭和なんだよ。

あのシリーズが丸ごと、ザ・昭和なの。古き良き時代のエッセンスだね~。

流行り廃り(すたり)の問題じゃないのよね~。時代を描いてるんだよ。

でねッ、ビバヒルはスタイリッシュな青春物でしょ?。てことは

クール志向のヤングなんかがリキ入れて観ちゃってるもんなんだからね~、

のちのち “ キャー、ピアスだってよー!、イケてなーい!(爆) ” ってのは

良くなかったんじゃないのお~?」

 

「なぁ~るほどネェ~」

 

「歌の文句(歌詞)にも流行り廃りの小道具って出てるじゃない。ホラ、

ポケベルとかテレフォンボックスとか。ダイヤルとかさ。まさか、

それ無くなっちゃうなんて誰ァれも思わなかったもんな~、あの頃」

 

「でもカラオケで歌ってますよアタシ達。

ダサイって感じた事はありませんけど~。ニブチンなんですかネェ~?(笑)」

 

「違うでしょソレ。ソレ違うでしょ。きっと

時代のインデックスって見なしてんじゃない?。

歌詞に純喫茶って歌詞があるってことは多分あの頃か~、

歌声喫茶なんて◇年頃が全盛だったっけ~とか当時のヤングは振り返れるし、

キミみたいに未だ生まれてないヒトも

検索して時代時代の雰囲気に触れる楽しみがあるってわけよ~」

 

「その点、今はもうインデックス無理っぽいですかネェ~。

ガラ系からスマホ、アッという間だったですよネェ~。

変化早過ぎ、ひと時代も何もあったもんじゃないですヨォ~(笑)」

 

「言えテル。ウィリアム・テル」

「誰ですソレ。あ、グレイのテル?」

「グレイ?。あ、ヘンゼルとグレイテルか」

「それワザとでショ。マ、とにかく早過ぎですかネェー!」

「今、コンピューターなんてあんまり言わないしな~」

 

「東京タワーなんて誰も言いませんしねぇ~。

スカイツリーって言いますもんねぇ~」

 

「言うよ。東京タワーって。言ってるよ、皆」

 

 

 

 

新築のお庭 (前編) / 日本庭園の美 / 錦鯉VSナマズ

Title : 一番浅い場所でも、園児には大河

 

 

 

とんでもないご迷惑園児が熊本入りした。母がオバアチャン(母の母)の家に夏休み里帰りしたからだ。

不思議なことにオバアチャンは、自分の周りで猿の如く無意味な回転動作を繰り広げる孫を嬉しそうに見つめ、たしなめるどころか畳に転がるボクを抱きかかえては口を押えてオホホホとさも楽し気に笑うのである。

何故このようなデタラメモンキーの自由行動を許すのか、ボクを憎からず思うのか不思議でならない。オバアチャンだけはジャッジ用の支給スプーンを決して投げようとはしない。どんなに獰猛(どうもう)で危険なケモノも調教師に慣れ従うことは周知の事実。

それは調教師の愛情を認識したがゆえの結果だ。よって、バカチン大暴れ子猿であるところのワタクシも、このオバアチャンのいう事だけは良く聞いた。

と書くと、うちの両親はボクに愛情を注がなかったかの様な印象を持たれるかもしれないが、そうではない。幼児には親の愛情を正確に判断する能力だけが抜け落ちる傾向があるように思えてならぬ。

あまりに近すぎると見えなくなってしまうのだ。こればかりはメガネをかけて調節しようにも無理というもの。もちろん、ボクに限っての結論だが。

 

帰省2日目の昼、父方のオバアチャン(父の母)がボクを自宅に宿泊させたいと迎えにやって来た。どうやら突然の訪問だったらしく、ボクも母も、母の母も気乗りがしない様子だったのだが、遂にお二人さんは折れてしまい、ボクは見渡す限り田んぼのド真ん中に燦然とそびえ立つ新築の家へと連れて行かれてしまった次第。

見知らぬ親戚達の中、ひどく不快感露わだったボクは壮大な田んぼを目にした途端、たちまち心を奪われてしまい、いとこの(同年代)の女の子に

「川はどっかにある?」「あるよ」「連れてって!」と舞い上がる。

彼女宅からアゼ道歩くこと約10分。幅2メートルほどの小川が視界に入るや、たちまち転がるように駆け出すボク。

川底は浅い。ボクが入水してもせいぜい胸元あたりであろう。アメ色の水は適度な透明度を保ち、僅かにゆうっくり流れている。

「あそこに橋があるよ」のイトコの声に「アッ、ホントウだ!」

と、はやる気持ちを抑え、足音消しつつ静かに接近してゆくボク。園児だからと侮って(あなどって)はならない。橋の下は太陽光がさえぎられていて暗い。となればソコには必ず魚が集まっている。

数々の猟をしてきたベテランには分かる。経験とカンだ。影が水面に映らない場所に立ち、ゆっくりと気配を消してしゃがむ。

それから細心の注意を払ってうつぶせになる。それから少しずつホフク前進。ゆっくりと橋の下を覗き込む。どぅれ。

居た!!。

ボクの全身にかつてない程の武者震いが走った!!。暗い水面が大勢のナマズ達ワイワイでピチャピチャ音を立てて波立っている。

それが真昼の間接光でキラリキラリと照り返している。ボクはガラス玉のように大きく目を見開いたまま顔をスックと上げる。

“ 落ち着け!。落ち着くんだ!! ”

1度だけだがナマズを見せてもらったことがある。雷魚もだ。見知らぬオッサンが釣ったソレらを傍らのバケツに入れていた。何という羨ましさ、口惜しさ!。

こここ、こんなのが一体どうすれば手に入るのであろうか!。その時見たナマズはバカでかかったが、今見たヤツらは小さい。20センチくらいの子供だ。

しかし、ウジャウジャいる。少なくとも50匹くらいは居る!!。つま先で、抜き足差し足、忍び足。離れて棒立ちのイトコに向かって声潜め

「家にアミかなんかある?」

「えーッ?。何て言ったァーッ?!、小さくて聞こえないよーッ!」

すっとんきょうな大声にドギモ抜かれるボク。

「アミだアミ。魚すくうアミある?」「セミ獲りのがある」

「取りに行こう!」

園児にも分かる道順。今度は1人で向かう。帽子をかぶっていないので頭髪に触るとムチャクチャに熱い。全速で走って風を巻き起こしたというのに冷めない。

そんなことより、ハアハア!、ハアアア!!。ゆっくりとズックを橋上で脱ぐ。ボクが水に入った瞬間、ナマズ達は水中にマッハで散る。どうしたらいいか?。

橋の下にアミを突っ込み、水面あたりをすくい上げながら、同時に水にドボンと入水、というのはどうか?。それしかない。なにせ、あれだけの数。1匹くらいはアミに入るのではないか!。

などと想像しただけで心臓バクバク、今にも卒倒しそうな呼吸困難に陥る。そんなこと言ってる場合か!。それッ!!。

出来る限り橋の真横に垂直落下。落下途中にアミを橋下に突っ込む。のつもり。実際は両足が川底に着地してからの行為なのだね。

着地した途端、川底のヌメリをもった藻に滑り、バランス崩し、ド派手な波しぶきを上げてうつ伏せに水没ッ!!。プッハーッ!!。

大慌てで顔を上げるや橋下に滑り込みながら水中でデタラメにアミを振り回す。浅かろうが何だろうが、そこには水圧というものがある。マッハで網を振りまくるといってもドダイ無理。もどかしいホウキ履きですかなコレは?。

どうだ!これなら捕まえたか!!、と川の真ん中で仁王立ち!。目をサラのようにして網を覗けばカラ。目の前がマックラリンコ!。

クソウ、どこ行った?!、あんなに沢山どこ行った?!。狂ったようにアミで探り回るボク。これがホントの猿回し、土手の豊満な草が半分水没した箇所に、ここはどうだとアミを入れた途端にぃッ!!。バシャバシャバシャーッ!!。

激しくのたうつ網、アミが勝手に暴れているッ!!、何だこれ、クソッ!!。長い竹の棒がしなり、両手でそれを持つボクの腕が今にもバラバラになりそうだよぉッ!!。

恐怖で全神経に戦慄が走る!!。一体何が入ったというのであろうか!!。

 

 

 

新築のお庭 (中編) / 日本庭園の美 / 錦鯉VSナマズ

Title : 橋はナマズんちの屋根だった!

 

 

網の中のソレは存分に暴れ狂い、自分で自分の体にアミをねじり絡めてしまった。「ウゥククッ!」歯を食いしばりキャシャな腕(かいな)で網輪の中の荷物を岸辺に引きずり上げるサル。

オデコやホッペタに夏草の先端がハリの様にチクチク刺さる。網の中に黒い塊が見える。黄金色の腹らしきものも見える。ボクは指先が期待で震え始めるより早く、網尻ワシ掴んで中の物体逆さ落とし!。

荷物は多少引っ掛かりはしたものの、ソレはズッシリとした重さをボクの手首に残しながらズゥリィ~、ヌルゥリン、どさっ、と雑草上へ落ちた。えッ?!。

ナマズ!。ボクの腕より長くて太い、ナマズ!!。

何て素晴らしいことが起こったのか!。飼育、飼育だ!!。ボクの人生最良の日だ!!。一刻も早く水に入れて持ち帰らないと途中で死んでしまう!!。

入れ物ッ、入れ物はないかッ?!、とアタリを見回すのだが何もなしッ!!、と自分の半ズボンからむき出ている真ッ白きオダイコンと見まごう両腿を見下ろした途端ギョッとする。

「何だろ、これ…」

前屈姿勢で太ももにへばりついている何かにオドオド接近。

全長約6センチ、幅約3センチ。体高約1センチ。深緑色にショッキング・イエローの縦筋線が数本。上から見ると体型は人の唇型。

「ちちちちちちち血吸いヒルだああああああああああーッ!!」

恐怖の戦慄に全身総毛立つ!!。反射的に片手ではたき落とす!!。落ちないッ!!。しかも痛みが走った!!。すぐさま草ちぎり、束にして丸め、ヒルの体の下に差し入れてソ~ッと持ち上げてみる。ドヒャアアー!!。

ヒルの口がボクのお肉に喰い込んでるぅーッ!!。ソイツが両腿に1、2、3、4…ウェェ、ふくらはぎとくるぶしにも1、2、3、4、5…目がくらみ急速に吐き気がこみあげてくる!!。全身に鳥肌が立っているのが分かる!!。

コレが吸血ヒルだと即座に分かる園児はボクくらいなものだろう!!。水面に浮かんだフナの死骸に貼りついているのを何度も見たことがある!!。どっかのお兄ちゃんが

「あれはヒルっていうんだ。血を吸ってんだよ」と教えてくれた。

以来、その世にも恐ろしい存在がいつも頭から離れず常に警戒を強めていたのに、まさかこんなところでこのような悪魔どもに襲われようとは!!。

完全に乱心し度を失ったボクは無理矢理ヒルを引っ掴み、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ!!。吸血鬼の体は半分にちぎれはするが尚も噛みついたまま!!、その頭を激しく引っ掻いて噛みつく口をこそぎ落す!!。

たちまちボクの両足は血まみれ!!、白い肌に真紅の血!!、まるで大物ナマズ捕獲を祝うかのような、さてもめでたき紅白!!。ハッ!!とナマズの存在を思い出す!!。

ヒルも地獄に違いないが、ナマズが死んだらもっと地獄!!。ボクは即刻Tシャツを脱ぐとバシャバシャ水に浸して雑草上に敷き、ナマズを押してTシャツに乗せる。

サッとくるんで抱え上げ、シャツの水を出来るだけ絞らないよう細心の注意を払いながら、ヨタヨタとヘッピリ腰でスタタン、スタタンと家路を急ぐ。

スローモ-な小走りを続けながら頭に浮かぶは唯ひとつ!。お庭の池にナマズを入れる。それしかない!。そしてオバアチャン(母方の)ちへ帰る直前にアミですくってビニール袋に入れればいいのだ!。

あたふたと庭の裏木戸を背中で押し開け、チョコマカとせわしなく庭へと駆け込む。たちまち視界一面に広がる見事な日本庭園。

なのだが、猿にそんなことは分からない。“ 心 ” という字の一番長い部分の縁に膝まづき、丸めたTシャツ水面に浮かべ、そぉ~っと衣を横に引く。

たちまち目にも止まらぬ速さ、大振りの見事なナマズが水底滑り、得も言われぬ美しき錦鯉の群れの下に身を隠した。アア!、これで、全く一安心ッ!!。

 

 

 

 

新築のお庭 (後編) / 日本庭園の美 / 錦鯉VSナマズ

Title : 見栄え悪くても美味しけりゃいージャン

 

 

 

もう1人のオバアチャン(父の母)宅は、エリート長男息子(父の兄)が建てたもの。ボクを招いたのは新築お披露目の意味もあったのかなと後年になって思うけど…。この長男息子、すなわちボクのオジサンは造幣局のお偉いさん。

ゆえに、以後ゾーヘイ(敬称むりやり略)と呼ぶことにする。ゾーヘイの昔ッからの夢は実に実に立派な本格的日本庭園を有する家を建てることだった。

むろん、住居もそれに見合った大層立派な日本家屋でなければならない。定年退職待たずして夢を叶えたゾーヘイは偉い!、アッパレ!、と親戚中が恐れ入ったという話。

 

庭園の広さは平均的なコンビニ店舗6つ分位。大きく見事なミカゲ石あり、本格的な灯篭あり、春は桜、梅雨には紫陽花、秋には紅葉を楽しむという趣向。

しかしながら、ゾーヘイが庭園の眼玉として据えたのは “ 心 ”という字を象った(かたどった)池。続き文字なので水はすべからく循環する造りになっていて、中心の “ 逆ノの字池 ” には非常に高価な厳選錦鯉が25匹も雅(みやび)を連ねる。

 

 

 

 

実はゾーヘイは熱狂的な錦鯉フリークなのであって、その掛け合わせの話になると三日酔いになるほど杯を重ねる生きがいぶり。

鯉の全ては彼の鋭い審美眼によって選び抜かれた精鋭ばかり、まさに1匹1匹が泳ぐ宝石、ゾーヘイの存在全てと言っても過言ではなかったのである。

 

 

 

 

この日も彼は夕刻6時にキッチリ、伝書バト帰宅。シャワーを浴び真っ白な木綿のシャツにステテコ姿で庭園に降り立つ。ホースで石や樹木に水をかけながら、時折チラチラと “ 心の錦鯉 ” 盗み見しては目を細める至福趣味。

池に葉っぱの1枚でも浮かんでいようものならサァ大変。キッと睨みつけサッと排除。何事もキッチリ正確、理路整然としていなければならぬ彼のモットーは、家族の者達の背中に重くのしかかっていた様子が見てとれる。

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イカ野郎が大人気アイテムに / 吸盤水産

Title : ウィルス完全除菌マスク イカ野郎

 

 

イカの甘辛で有名な吸盤水産が限定販売

( 昨夜未明 ) した本格的医療器具除外品のウィルス完全除菌マスク、

イカ野郎がNSSなどで話題になっている。

 

発売後数時間で在庫残りわずか2,000,000枚となった

この超人気商品は、長年の間、吸盤水産研究部が

試行錯誤して完成させた自信作だけに、全国の海鮮丼営業店から

早くもお持ち帰り海鮮丼専用の手下げ袋として

注文が殺到していると聞く。開発には

全く携わらなかった営業部長の南泰 ( なんたい ) 氏はこう説明する。

 

「イカ野郎は両耳にヒモ掛けする従来のマスクスタイルとは違い、

マスク中央の赤色出っ張り部を

軽く噛んだ状態で

鼻や口部をガードします。これによって装着時は

人から話しかけられても返答出来ないわけで、

無駄なおしゃべりをしたくない人には

是非付けて欲しいものです。さらに特典として、

出っ張り部はイカの旨味エキスをしみこませてありますから、

装着するとお酒が飲みたくなる効果もありますね」

 

「説明図を見ますと酸素吸引管がないように…思えますが?」

 

「酸素吸引管は基本、ありません。

あくまで呼吸の為のマスクではなく、除菌専用ということですから」

 

「しかし、酸素を取り込まないというのは事実上、不可能ですよね?」

 

「もちろん、そうなります。酸素を吸いこむ時はマスクを外し、

素早く酸素を吸いこんでから、再び着用して頂く形になります」

 

「なるほど、理にかなってはいますね。…問題ないでしょうか」

 

「全く問題ありません」

 

 

 

★ イカ野郎 縦25センチ横28センチ 塩化ビニール製 ¥4860円

瞬間テレポーテーションPODにて全国配送承り

入金確認後3分以内にお手元までお届け致します。

振込手順は当社HPで閲覧ご確認ください。