取扱い注意園児 / 裏面表記確認の重要性

家族初体験!。我が家の冷蔵庫にカルピスなるジュースがやって来た。その白い液体は瓶の中に入っていて、今この時も冷蔵庫のどこかでしめやかに息づいている。その所在をボクは知らない。何故か。ボクには冷蔵庫を開閉する権限が与えられていないからだ。どうしようもないキカンボウ ( 聞かん坊 ) が何故素直にルールに従うのか、と不思議に思う人がいるかもしれないが、ボクの異様なる行動の全ては生き物に対してのみ発揮されるのであって、それ以外の事柄に関しては常識の範囲内、ごく普通の素直な児童の行いであったのである。ともあれ、人生初経験のカルピスなる飲み物の美味しいこと!。甘酸っぱく形容しがたい爽やか(さわやか)さ。その都度ボクは母にお代わりをせがんだが、常に答えは「いけませんッ」。カルピスは、ワタナベのジュースの素(もと)をも凌ぐ(しのぐ)ボクの大好物飲料なったのだ!。ああ、いつかカルピスを浴びるように飲んでみたい!。

以外にも、その日は早く訪れた。昼下がり。その日は何故かボク1人でお留守番。そこへ近所の顔見知り(小1)がやって来た。ベランダ越しに軽口叩き合ううち、彼が「喉乾いたぁ~」。すかさずボクが「カルピスあるよ」。何の考えもなしに彼をキッチンへと誘い( いざない )、テーブルに座らせ禁断の冷蔵庫扉をいともたやすく開けてしまう。既に掟を破っている自覚はない。何故かというと、園児だからである。知り合いの前でイイカッコ出来る。ただそれだけで地獄の門を開く。

ドボンドボン、ドブォンッ。両手でドップン重たい瓶を何とか傾け、比較的背丈あるガラスコップ2つそれぞれに、並々とカルピスを満たしてゆく。むろん、カルピスは水で薄めて飲む、という知識などボクにはないから、コップに並々とつがれたカルピスは原液。何故コップ2杯で瓶がカラになってしまうのだろう、という素朴な疑問がプ~ンと蚊の様に脳ミソを横切ったが、そんな事にこだわりようがない園児。互いに満足げな面持ち、真剣白羽取りでコップを傾ける。コクコクコク。グビ、ゴクゴク。ひとしきり飲んだ後、幼児2名の間に変な間があった。しかしまた、ゴグゴグゴク。グフッ、コクコク。たまらずボクが「おいしい?」「ん?。……うん」。コクコク。クビー。

いつも母が手渡してくれるカルピスの味と全然違うのは何故か。コップ一杯飲み干したのに渇きが一層つのるのは何故か。知り合いは両コブシを額にブリグリ押し付けながら、弱しく「気持ち悪いぃ…」とつぶやき、そのままキッチンテーブルに突っ伏してしまった。ボクも突っ伏す。瓶の中身がちょっと減っただけなら両親にバレないとタカくくったのに…。どうしてこんなことになってしまったのだろう。分からない…。どうして…。

 

◆写真タイトル / 壁

 

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