小学6年生になったボクらは偉い!。学校の最年長生徒だから!。と、得意の絶頂でノシ歩く。校舎の廊下、運動場、学校裏の山ン中、竹林の中さえも!。
クラスのマブダチ3人と学校帰り山中散策。思い立つのも無理はない。眼の覚めるような五月晴れ。快適温度で風もなし。歩き始めて小1時間、いつもは素通りの竹林(たけばやし)に突如反応する御一行。「あれ見てみ。アレ」「アレ?。何だタケノコか?」。ザワザワと口々に驚きの声を掛け合い、タケノコの周りにしゃがみこむ。最も愚かな生徒であるところのボク、両手でタケノコ引っこ抜く仕草。案の定、既に保身能力に長けたキュ~ちゃんが「怒られやしないか?」「誰に」とボク。「自然に生えてんだから誰のでもないジャン」と皆を見回す。「そうかな」「勝手に生えてるのか」「この辺で人見かけたことある?」ない、と皆。
歓声を上げ次々にタケノコを抜き上げる子猿の小グループ。動物番組でよく見受けられる光景だ。「もっと根っこから抜かないと!。途中で折ったら勿体ない」などと得意満面で指導するボク。タケノコは小ぶりな物も有るにはあるが、大半は一番太い部分の直径が大人用茶碗大、地上丈30センチ弱といったところ。
やがてモンキーらはタケノコをミサイル弾に見立て、奇声発しながら互い目がけて連続発射の集中攻撃!。アドレナリン全開、日々の心労も一切忘れ右へ左へ旋回しながら大ハシャギ。10分も経った頃だろうか。ミサイル発射体制に入ったボクの視界に野良着を着たオジサンの姿。瞬時にひるむボクら。しかしオジサンは全く怒らず
「カマーン!、カマーン!」と前屈姿勢で身構え、両手をパンパン叩き催促顔。
は?。顔見合わせるモンキーら。「投げてッ、遠慮なくッ」と普通顔で催促する大人に向かってミサイル構えるボク。「いーんですか」「いい。早くッ」。手加減して5メートル先のオジサン目がけて発射!、ではなくトス。届かないッ。すかさず前に飛び出す小柄な大人。キャッチ!。それをすかさず別児童へ回しトス!。キャッチしたキョトン顔のメイトが滑稽きわまりない。
しかし我に返るや「おー!。ラグビーみたいッ」と感動、真似て隣へトス、それが次々回ってボク。思い立ち、脱兎の如く適当に走りタッチダウン!。してみる。どうでしょうか…。弱弱しい中途半端な拍手を受けおずおず立ち上がるボクの眼にオジサンの微笑がキラリ。
「奥にリヤカーあっから使っていーよ。あとで戻してー」と回れ右。姿消失。
あの人が竹林の持ち主だったんだナー、だから止めときゃよかったのにサー、とか口々にわめき散らしながら山を出る児童ら。「コレ分ける?」とボク。皆は異口同音に「いらない」「重いからいらない」「袋ないジャン」。
あの道、あの角、次々に別れ、後に残るは1人リヤカー引くボク。取っ手がイブシ銀に光るリヤカーには、数にして約20本のタケノコ。それを引くのは重労働。腰にくる。ボクンチの近所まで到達する頃、アタリに夕暮れ忍び寄りー。
「アラッ!。どしたのお~ソレ!」と顔見知りのオバサン。「もらったの」。
台所に立ち料理中の母に1本のタケノコをかざして見せる。
「これ、料理出来る?」「どうしたのソレ」。
一部始終を話す。「竹林に雑草たくさん生えてた?」「全然」「じゃあヤッパシその人がチャンと管理してる竹林だったんだワ」「でも、くれたの」。
父帰宅。弟と同じセリフ。「どっから持ってきたコレ!」。玄関脇に積み上げられたソレら。ウーン、と感無量のボクちゃん。
「稼ぎがあるって、こーゆーことなのかー!」。
◆写真タイトル / 自我
★当ブログのエッセイ文、写真、イラストの無断掲載、転用を固く禁じます。