Title : 秋の日のキビキビとした右折
Title : パチンコ丸シロー
「マミー。さっきから黙りこくって何を読んどるのか、このいまいましいアンポンタンのキリタンポが」
昼食をポテチで済ませ、キッチンテーブルで昼下がりの読書にふける野武子に向かって、冷蔵庫左脇に置かれたヌカ漬けバケツ上に座した飼い猫パチンコ丸シローが眼を閉じたまま眠たげでありながらも鋭い口調で言葉を投げつけてきた。
「ええぇ?……恋愛小説よ」
「それは何なのか。…………………………読んでみんか、ちょっと」
「ええぇぇ~?。面倒臭いなァ~。ネコには関係ないでしょうが~」
「チッ(舌打ち)。飼い猫が読めと言ったらグダグダ言わずに読まんと!。そんな飼い主に育てた覚えはないのだから。早く早く早くッ」
◆以下、野武子が読み上げた小説内の会話
「一体、オレ達……いつからこんなに心が遠く離れちゃったんだろう…」
「アア!それは分かってるわよ、チョット待ってね日記出すから、アア、これこれ、ええとドコだっけな、ドコだっけー、アー!これこれ、ここに書いてあった!。ええとね、2018年9月3日!。この日からワタシ達の心が遠く離れ始めてんネ」
「………」
「何。何で黙ってんの」
「そんなこと、数字で分かるものだと本気で思ってんのか。心って簡単に割り切れるもんじゃないだろ」
「そーそー、2018+9+3で5だからキッチリ割り切れないネー、確かに確かに、アナタ計算早いのね、一瞬じゃん、スゴ!」
「とまぁ、こんな感じ。分かった?」とシローを振り返る野武子。
「日記というのはパピーがいつも読んでるオマエのノートのことなのか」
「えっ」
「タンスの裏側に隠してる赤い表紙のノートのこととは違うのか」
「えええええええ?!。何ソレ、何でアンタがそんなこと知ってんのよッ?!。パピーがそれ読んでるって、アンタ見たのッ?」
「何だとキサマ。そんなとこオレが偶然見るとか、本気で考えてんのか、この救いようのないヤラセ・ディレクター野郎がッ!。バアチャンに聞いたのだバアチャンに」
「じゃあ、オバアチャンも日記のこと知ってるってこと?!、やだ、どうしよう!」
「何を言うキサマッ。ピミー(野武子の息子)が最初、タンスの裏に転がったピーナツ取ろうとしてパピーがタンスずらして見つけただけのことだろうがタワケ!。ところで日記に目次付けてもらえんだろうかね、繰り返し読みの時、探しにくいけんね」