「コレクション受難の時代だよトホホ…。何もかもお終いだってんだ。…これまでのオレの苦労と出費は一体何だったって言うんだよ…。泣きたい。心の底からオイオイ泣きたいよ」と中古レコードショップ “ 楽音 ” オーナーのA (アー)。
「まさかレコードがCDに取って代わられるなんて予測のしようもなかったもんなァ、アナログなオレ達。先月買いに来たお客何人?」
「3人。1人の学生さんはネットでやっとナガオカ針が手に入ることが分かったからまた買いに来たって言ってた。次に来て閉店してるウチ見てビックリすんじゃないの(笑)。アア、遂に来るべき時が来たかってなもんだよ、あはは」
「まあ世の中、大体が時代時代で栄枯盛衰、強者(つわもの)共が夢の跡なんだけどさ、かつて一世風靡(いっせいふうび)したハリウッドスターだってさ、今のアンタと同じ様にガッカリしてる人、多いんじゃないのかな~」
「うん?。てぇと…。これ熱いから気を付けて」
「ありがと」
出されたコーヒーに添えられた角砂糖を1個おっぽり入れながらB(べー)、
「今の映画、特殊効果技術っての凄いだろ?。オレ、マーベルの大ファンでさ、アベンジャーズだのエージェント・オブ・シールドなんてWOWOWでガンガン観てんだけどもさ、イヤー、その映像たるや本物以上に本物で舌巻いちゃうよ、ヒャヒャヒャ(笑)。でね、チャールトン・ヘストン主演の “ 十戒 ” (1956年、パラマウント映画)ってあっただろ?。“ ベン・ハー ” (1959年、MGM)とか “ 猿の惑星 ” (1968、20世紀フォックス)。今のSFXに比べちゃうとさ、申し訳ないけど大人と子供だよ、特殊効果」
「確かに。残念ながらそれは否定出来ない。俳優の演技力だとか脚本だとか、監督の力量とは全然関係ないとこでのビジュアル部門の話だもんね」
「そうなんだよ。映画作品って役者や監督にしてみればさ、かけがえのないコレクションなわけだろ?。つうか、自分そのものかもだな。それが技術的な視覚効果の部分が今のに比べて劣って見えるのは耐えられないんじゃなかろうか」
「まだ現役で俳優やってる人は、そういう意味で優れたSFXの映画に好んで出演したがるもんじゃないか?、想像するに。シュワ(シュワルツネッガー)ちゃんなんて近未来系のSFに一杯出てただけにさ、今の本物超えてるSFX映画にも一杯出てるから、コレクション的には良かったんじゃないかな」
「時代の最先端技術は素晴らしいんだけど、残酷でもあるわけか~(深い溜息)。だけどオレなんかはね、最近のディズニー・アニメ、視覚技術凄いけど、変な話だよ、昔のトムとジェリー(MGM、ターナー、ワーナー・ブラザーズ)なんて今観ても全然負けてないと思わないか?。古くないんだよ。本物の凄さって点で完全に脱帽しちゃうよ。第一、セリフなしのトムもジェリーの声をだ、楽団演奏で代弁させてるだろ。あんな離れ業、流石はミュージカル大国の底力、アナログの底力、時代の底力って惚れ惚れするよ。ア、オレ、レコードだけじゃなくってトムとジェリーのDVDも全部コレクションしてんだよな」
「やったじゃないか!。DVD?」
「いや。全部VHS」
◆写真タイトル / 仕切り直し
★ネコならエッセイ / 当ブログのエッセイ文、写真、イラストの無断掲載、転用を固く禁じます。