上司への禁句 / カワズにムジナ / 禁句は金句

Title : いいね!の乱れ打ちだジョーッ!

 

 

★瀬戸詰子。せときっこ。このエピソードの主人公。

 

 

「セトちゃんね、そんな考え方じゃキャリア・アップどころか、

結局最後は “ 井の中のカワズ、大海を知らず ”

で終わっちゃうんだよ。悪いけどサ」

と過度に前かがみ、珈琲をひとくちすすり、過度に勢いつけて、喫茶店席背もたれに背中を叩きつける部長のミト。

 

「カワズって何ですか」

 

「え。……カワウソだっけ……よく分からないけど」

 

「それでは、カワズが大海を知らないのであれば、

カワズが何たるかを知らない部長は

一体何を知らないことになりますか。出来ればお答え下さい」

 

「………」

 

「部長は、この間の

ビジネス・ソリューション相互戦略会議

で発言されておられました。その中で

ワタクシ達は “ 同じ穴のムジナ ” である

とおっしゃってました。ムジナって一体何ですか」

 

「……そう言われ……ても…」

 

「部長の目から見て、ワタクシ達は皆、正体不明であり、

それらが同じ穴に潜んでいる、つまり大変危険な状態である

と言っておられる印象を禁じ得ませんが」

 

「セトちゃん……。キミさ」

と言って過度に前かがみ、コーヒーを一気に飲み干し、今度は背もたれに自身を叩きつけないミト。

 

「お答をまだ伺えておりませんが」

 

「ううううむ…。キミ、会議のあと意味調べてみなかった?、自分で」

 

「ワタクシは、部長の口からお伺いしたかったのです。

前回の慰労会で部長がご挨拶なさいましたが、

“ 一寸の虫にも五分の魂 ”

と言っておられました。一寸の長さは何センチ、或いは何ミリなのでしょうか」

 

「もうそろそろ戻らないと。キミも仕事あるだろう」

 

「ワタクシ、正直申し上げて、何故

このタイミングで異動なのか計りかねて悩んでいます。

企業戦略情報部に転属されて未だ2年も経っておりません。

仕事内容も、半分覚えたか覚えてないかといった状況です。

それなのにキャリア・アップで金融解析部へ配属って、

何だか不自然に思えてしまって」

 

「それが会社だよ。会社ってものなんだよ。キミも大人なんだから、

いつまでも子供みたいにダダこねてないで、黙って…

 

「ダダってどういう意味ですか」

 

「ハハハハッ、ダダの意味なら流石に分かるな」

 

「教えてください」

 

「ダダは、……」

 

部長はテーブルの伝票を引ったくるようにして

荒々しくレジへと向かった。

職場に戻る素振りも見せず、セトは涼し気に

 

「あのう。コーヒーお代わり頂けます?」

 

するとウェイトレスが彼女に歩み寄り

 

「頂けるに決まってます。それがお店の収益の全てですから。

なのにどうして、頂けるかどうか聞いたりするんですか?」

 

 

 

Title : 世の中を知らんヤツラばっかだギャ!