生き物って悲しい / 見続ける目

Title : DOG・GOD

 

 

生き物って悲しいねぇ…。

夕暮れ時、自転車をチンタラ運転していた私。ふいに背後からオバ様運転の軽快な電動チャリに抜き去られる。

オバ様の前カゴにはテリヤ、後ろカゴには小太りベージュ色のフレンチブル(以下チブルと呼ぶ)。

私はいつもするように、チブルを指差し、満身に笑みをたたえて声なき爆笑を演じる。

チブルは激しく驚いた様子でドングリマナコを大きく見開いた。

オバ様左折。

私は右折ぎわ、なおもチブルを指差し続け、サイレントな爆笑をやめない。

チブルが遠ざかってゆく。一心にこちらを見ている。凝視している。

哀し気な目。

自分が嘲笑されたと思い込んでいる。ショックを受けている。犬でさえ一瞬で自身を喪失し委縮する。

誰かをイジメて、そのことをすぐに忘れられる人は気持ちの切り替えが上手な人だ。得てして、この世の中、そういう人が出世することが多い。人を踏み台にしたことをすぐに忘れることが出来るから。

私は不器用な人間なので、ワンちゃんを見かける度、飼い主に悟られないように毎回この行為を行う。ワンちゃんの目を常に忘れずにいるためだ。

最後まで、何度もこちらを振り返る悲し気な犬の目。

ワンちゃん、すまない。

苦しい弁解をさせてもらうと、

自分がした行為への激しい後悔は、相手への愛おしさを倍加させる。