Title : 記号
「あの言い方ないでしょー?。あの子泣いてたわよー?。知らないわよー?、アタシ。アナタって情がないのよー。いつもー!」
「情けという字は小さく青いと書くんだね。つまり情が深い男はウツワが小さく青臭いということになる。キミは夫がそんなんでいいんですか」
「アナタ国語の先生じゃないんだからデタラメ言ってばかりいるのは良くないと思うわー!。あの子の口の利き方が悪いっていうんだったらアナタがちゃんと教えてあげればいいじゃないのー。」
「小僧という字は小さな僧侶と書くんだね。つまり自分で悩み、苦しみ、考え、やがて自分なりの真理に行き着くということなんだ。父とはいえ、それを阻害してはならないんだよ」
「アナタ学生の時の国語の成績、さぞかし凄かったんでしょーねー。ご立派だわよー」
「お前は過保護過ぎやしないかね。親という字は立つ木を見ると書くんだよ。分かるかい?。突き放してるように見せかけて、実は見守っているという姿勢が望まれるんじゃないかな?」
「へえー。ホントに望まれるのかしらー?。望という字は月が亡い王様って書くのよねー。つまり闇夜の王様よー。お先真っ暗ねー。だから逆に希望持つのよー。違うー?。違わないわねー?。こーゆーデタラメは言ったモン勝ちなんだからー!」
「お前も私の物言いをするまでになったのかね。いやあ、感慨深いものがあるね。これは1本取られましたね(笑)」
「アタシだってアナタに対抗するために毎日お昼1時間、漢字眺めて知恵しぼってんだからー!。負けてたまるもんですかよー!」
「初耳だね、それは……」
「アナタ、さっき見守る姿勢って言ったわねー。姿勢という字は、次は女が勢いづくって書くんだからー!。つまりカカ天下よ!。早くあの子に謝ってきなさいよー!、早くぅー!」。