「神戸多礼(こうべだれ。経理課2部OL。独身)さん、良かったら今度、激辛カレーの店行かない?」
「今うちの部署で話題になってる高速ラジャ(激辛カレー専門店)のこと?」
「そうだよ。何か信濃多良(しなのだら。営業1部OL。独身)さんに聞いたんだけど、結構辛いのイケるって話じゃない?。ボクもそうだからさ、どうかなって」
「彼女、ホントにイケる口なんて言い回し使ったんですか」
「あ、いや違う。ボクの受け止め方。彼女は、どっちかっていうと好きだと思うって言っただけ。ゴメン。気分害しちゃった?」
「私の顔にそう書いてあるって顔してますね、何だか。心見透かすヒトって恐いな。私のこと、辛口なヒトって吹聴しないで下さいね(笑)」
「あはは。しないしない、面白いヒトなんだなあ神戸多礼さんて。で、どうかな。食べに行ってみる?。5段階火炎放射カレー、チャレンジしちゃう?」
「それより明日のお昼、食堂でおウドン頼んで、それに七味の瓶丸ごと1本かけて食べてみません?。挑戦するんだったら私、持ってきますけど」
「ええっ。どういうこと(笑)。ちょっと意味分からないんだけど(笑)」
「意味分からないって…。火炎放射くらい辛いのが食べたいんだったら、わざわざ高いお店に行かなくても食堂でいいですよ。ウチにちょうど頂き物の本格七味があるんです。使い道ないんで、よろしかったら浜中旗振(はまなかはぶ。経理部係長。独身)さん試食して下さいな」
「うんっ?。…それってボク1人が食べるってこと?。神戸多礼さんは?」
「食べませんよおお…(少憤怒笑)。それが食べられる人って握り寿司のシャリの上に5センチくらいの厚さでワサビ乗っけて食べられるヒトってことじゃないですか。ワタシそんなの食べたら鼻血止まらないと思いますよ」
「よく分からない話になってるような気がする(笑)。ウドンじゃなくてカレーを食べに行く話だったよね(笑)」
「食堂、カレーうどんもやってますよ」
「でもカレーもやってるよね(少憤慨笑)。ウドンにかける訳は?、あははは」
「普通、七味っておウドンにかけません?。カレーの方ですか」
「なんか…。普通にカレーの店に行こうって話だったんだけど、ははっ」
「カレーだけに強い辛さを押し付けるの変ですよ。激辛カレーもいいですけど私達は世界に誇れる日本食があるんですから、おウドンや握りで激辛を試さないのは片手落ちなんじゃないかって。それが出来て初めて、フツーにカレーを食べに行けるんですよ、きっと。…思いません?。激辛日本食を無視がフツーなわけないって」
「ワサビもスパイスなんだっけ…」
「さあ。私に言えるのは、ワサビに甘口、中辛、激辛なんてないってこと。でも量でそれを調節できるような気がします。カレーはどうなんですか。量で調整しているのか、香辛料の種類が増えるのか…。七味は七種類ですけど」
半年後、浜中旗振は大きく舵を切り方向転換、甘えん坊の信濃多良と電撃結婚した。
◆写真タイトル / 私のこと、どの程度好き?