Title : いつか来た振り返らずの道
音梅は猿回し師。今春より
新しき猿の幼児買付け、早速の調教開始。
まずは慣れさせ、我をば親と思わせること。
その辺は心得十分、さりとて油断厳禁。
何せ生き物、ましてや知能は高い方。
半年経てども慣れぬ。慣れてこぬ。
いささか戸惑う。やがて苛立つ。
「選び間違えじゃねえか!」祭りで出会う仲間衆にからかわれた。
面白ぅない。全くもって面白ぅない。
この音梅様は冗談好かぬ。断じて笑えぬこの心根(こころね)。
笑うは商売、この顔、道具と見立ててひと昔。
子猿の乙松、恨めしや。
尚更、このツラ笑うどころか、しかめ面。