Title : 計り合いたい二人
「測定値の時代なんだねオジイちゃん!。何でもかんでも
数字で価値が分かる時代に生きてるんだネ、ボクら」
とツブラな瞳を輝かせながら
ポケット糖度計をしげしげと眺める株重 ( かぶしげ。小4)。
両手はミカンの絞り汁でベタベタ。
「そうだナ~。オジイちゃんも、まさかここまで
文明が進歩するなんて、カブシゲの年頃には
想像もつかなかったヨ~」
と、目の中に入れたら激痛なので実際はしたことがないものの、
入れたいぐらいに可愛がっている孫の手の果汁を
タオルで拭き取りながら重株。(しげかぶ)
「エッ。今でもみんなスポーツ大好きだよ。ボクがサッカーで
Jリーガーになりたいって、知ってるでしょオジイちゃん!」
「ウムウム知ってるヨ~(笑)。スポーツの勝敗は得点で決まるだろ~?。
観ていて分かり易いんだよ、勝ちそうだ負けそうだが。…
そんでもって、得点が追いつかれそうになったり逆転したりすると
興奮して大騒ぎになるからネ~(笑)」
「そーだね!。学校のテストも得点ついてくるけど
勝ち組と負け組で泣き笑いだもんね~。世の中、全部の物の価値が
数字で決まっちゃうんでしょッ?。お金で世界が動いてるんだから。
お金も得点と同んなじでしょ?。泣き笑いだから」
「でもなハ、数値で測定出来ないのは人の心だナ~。
これだけは無理だハ~」
「でも体温計とか体重計とかあるよ。脳波も測定出来るし
嘘発見器もあるから、そのうち心を計れる測定器も出てくるよ絶対!。
今のテクノロジーって全然凄いもんねッ!」
「そうだナ~。そんな時代が来てもおかしくはないナ~(笑)。
カブシゲは、好きな女の子が自分の事をどれくらい好きか
知りたいんだろホ~?。100点満点で、相手の子が
カブシゲを何点くらい好きだったら結婚すると思うか~い?」
「100点満点に決まってるよオジイちゃん!。ただ付き合うだけなら
100点じゃなくてもいいけど、結婚となるとヤッパり
満点じゃないと後々モメる原因になるよ!。そうでしょ?!」
「そうだナ~……。それじゃカブシゲも相手の子から
心を測定された場合は100点なんだネ~。
満点カップルってことだナ~、相思相愛だネ~(笑)」
「うん、その通りだよオジイちゃん!。
オジイちゃんはオバアちゃんのことを
100点好き度数だったから結婚したのッ?。
ポケット測定器あったら計ってたでしょ?、マジで!。
実際のところは何点くらいだったの?」
「そホだナ~。結婚したての頃は
50点くらいだったんじゃないかナ~」
「エエーッ!!、そんなの絶対あり得ないよォーッ!!。
50点くらい好きな人なら世の中にゴロゴロいると思うよーッ!。
それくらいなら結婚しないで友達でいいんじゃないのォーッ!!。
ボクそんなの絶対(結婚)しない!。あり得ないーッ!」
「ホホホホ(笑)、そ~かそ~か。じゃあカブシゲは
100点満点同士で結婚した後にだネ~、
も1回お互いに好き度数を測定して、
どっちかが50点くらいになってたらどホするのかナ~?」
「エーッ!、そんなの見えてる、離婚でしょ!
それしかあり得ないでしょー!。あ?。
オジイちゃん最初から50点なのに、どうして離婚しなかったのサ?!」
「オバアちゃんがオジイちゃんの好きをナ~、
100点にしてくれたからだよホ」
「エ!。いつくらいの時?!」
「昨日…」
「エ。だって、昨日…オバアちゃんのお葬式だったんだよ」