Title : バットマン竹内
ボクらにいやされる人間。ボクらは誰にいやされるのかな?
バットマン竹内
Title : パチンコ丸シロー
「アンタ、こないだの猫ドックで血圧高いって出てたからな、金目 (鯛) の煮込み汁、辛さはいつもの半分の味付けにしといたよ。薄味になっとるけど、そん代わりな、汁はいつもの二倍にしといたから、それでガマンしてなぁ」
「ありがとう勝美ちゃん(バットマン竹内の飼い主、飛虫原勝美。とびむしばらかつみ、52才。コンビニ、セブンカナブン勤務)。やさし~」
そう言うと、竹内は完全に飲み干した魚煮汁の皿を未練がましく8回舐めた。
縁側における二人の会話を背中で聞いていたパチンコ丸シローの背中が猫背になったかと思うと、次の瞬間、シローの濡れた右肉球には4cmほどの赤い金魚が握り締められていた。
勝美に歩み寄り、彼女の膝頭前、金魚を縁側の白っぽい縁側板にボーリングポーズで転がしてみせるシロー。
「ちょちょ、ちょとぉー!何すんのよアンタァー!ヒトんちの庭の池の金魚捕まえて見せるってのーッ!それで誉めてもらおーなんて何考えてんのよー!!」
「オバハン…。その金魚よおく見てみるがいい」
「あん?」
猫背になり金魚を覗き込む勝美。
「うっすらと金魚の周りがゼリーっぽいのに包まれとるだろうが。ア?。とっくに死んで水カビがついとるゆうことが分からんのか、このいまいましいアホンダラがッ。水カビの繁殖を未然に防いだネコに濡れぎぬをきせるのか、この、この…(怒りのあまり言葉が空回り)……」
「勝美ちゃんだよ、ボクの飼い主のお名前。勝美ちゃんなんだよシローちゃん。忘れちゃった?」とあどけなく微笑むバットマン竹内(シロネコ2才、オス)。
「かッ、勝美野郎がッ!」竹内につられ話をしめくくったが、シローは自身のマヌケさが今、とても際立っている様に思えてならなかった。