Title : シロー
「韓国って、急に近くて遠い国になっちゃったって、皆言ってるね」と、マミー。
「それを言うなら、オレにとって会社のアノヒトもそーだ。近くて遠い人だ」とパピー。
「だったらサー、アタシが年取ったんで、小さくて軽い人になっちゃったネーって思ってることは、ドー結び付けりゃいいって?。ん?。何か言った?」
「言ってませんよ、おばあちゃん。今、庭で鳴いてるコオロギね、アレ、近くで鳴いてるよーな気がすっでショ?。でも、実は案外遠いとこで鳴いてんですよ」
「分かるブ。オシッコもれそうな時、おトイレ、急に近くて遠いとこにあるよーな気がする」とパピーとマミーのひとり息子ピミー9才。
「あのさ、フルサトは遠きにありて思うものって人間言うじゃん。でも、アンタらの実家って隣の県じゃんかー。だからフルサトを思わんのか。遠近両用にせんでいいのか」と、飼い猫オスのパチンコ丸シロー。
「シロー。それは地下鉄で帰省するからだよ。お前はバスケットに入れられてるから見えないだろーが、地下鉄は乗る時間が短いけど、地上からプラットホームまでが遠いんだよ。だからねー、地下鉄は近くて遠いんだよ」とパピー。
「何ぬかしゃーがる!!、ネコだと思って甘い言葉かけやがって!!。チクショー!!、誰が騙されるかってんだ!!」とパチンコ丸シロー。
「ああら、お背中の毛が全部逆立ってるわよ、ほらピミー、見てごらん。面白いねぇ~、短い毛だと思ってたのに、案外長いのねぇ~(爆)」
「何だと?、今何て言ったキサマ!!。トリマーの免許持ってるからって、いい加減なこと言うと承知しねーぞ!!」と激怒しながらも、ラジオの囲碁放送時間になったのでイヤホンを耳穴に押し込むパチンコ丸シロー。
シローはハッとした。ラジオはマミーの背後、タンスの上にあった。激怒した手前、スイッチを入れてくれとは到底言えない雰囲気。
今、ラジオは本当に近くて遠かったのだ!。